問題編
俺はとある大学に入学が決まったのだが、その大学では入試の点数が一位の者には四年間授業料が免除されるという制度がある。
しかし、今年はなんと四人も全くの同点で一位を取ったらしく、特例として今年はその四人の中で特殊なテストをして合格したひとりにだけその権利が与えられるのだという。そして俺はその四人の中に入り、テストへの参加資格を得ることができた。
その特殊なテストをするという通知にはこんな事が書かれていた。「おでこが見える髪型で来てください」
そしてテストの日が来た。俺を含め男二人、女二人だ。全員髪を短くするかピンで止めるか横に流すかした髪形をしていた。
そこで試験官の男が現れ、「付いて来てください」と告げて俺たちを小さな部屋に連れてきた。
そこは殺風景で、鏡も窓もなく、部屋の中心に四つの椅子が向かい合うように(四つを線で結べば正方形になるように)置かれていただけだった。
「お好きな席に座ってください」
試験官がそう告げたので俺たちは適当に座った。全員の顔をしっかり視野に入れることができる。皆緊張した表情をしている。
すると、試験官は俺たちにアイマスクを渡し、付けさせた。その状態で俺はおでこに何かを当てられ、丸を書くように擦られた。サインペンだろうか。おそらく何かを書かれているのだろう。
「今、あなたたちのおでこに緑か赤どちらかの色ペンで丸を書きました。テストは簡単です。自分のおでこに書かれた色を当ててください」
――おっ、この問題聞いたことあるぞ。
「私が合図したら一斉にアイマスクを外してください。そうして他の三人のおでこの丸印の色を見てください。見える三人の内、二人以上が緑ならば手を挙げてください」
これは間違いない、と思った。何かのクイズ番組で見たことがある。これがそれと同じ物なら全員緑のはずだ。
「自分の色が分かったら答えてください。その後理由を聞きます。その理由も正しいなら正解です。何かで見たことがあるとかやったことがある、と言う回答はなしです。ちゃんとした理由を答えてください」
なるほど。じゃあすぐに「緑!」と言うわけにはいかないな。しっかり時間をかけてから答えなければならない。
「では、今から始めます。3、2、1、でアイマスクを取り、見える三人の内、二人以上が緑ならば手を挙げてください」
空間が静かになる。何も音がしない。
「では行きます。3、2、1、アイマスクを取ってください」
俺たちは四人同時にアイマスクを外し、それぞれの色を見た。
三人とも緑だ。二人以上だから手を上げる。
すると、他の三人も俺と同時に手を上げた。よし、間違いない。俺は緑だ。あとは少し待つだけ……。
「緑!」
俺の正面の男が叫んだ。
――何? そんなバカな! 俺が赤だったらともかく、緑でこんなに早く答えられるはずがない!
いや、こいつはきっと俺と同じでこれを知っていたんだ。そうに違いない。早まりすぎたバカな野郎だ。
「どうしてですか?」
試験官が訊くと、彼は笑顔で答えた。
――何!
その男は俺の考えていた解法と全く違う回答を口にした。もちろんその理由は正しく、彼は見事に授業料免除を受けた。
さあ、彼はどんな解法でこの問題を解いたのでしょうか。また、主人公はどんな解法を考えていたのでしょうか。