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コントラクト 3 ―宿命の契約―  作者: 時任雪緒
第5章 この手で掴む、五風十雨
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芸術とは、芸術的才能による純粋な魂の表現である





満面笑顔のミナ。


「右手にございますのは、アンジェロ達が神父時代に愛用していた、信仰心のタップリ詰まった銀の十字架でございマース」

「左手にございますのは?」

「これまた神父時代に愛用していた、聖水に浸して秘跡を行った銀の鎖でございマース」

「ほうほう」

「そんで?」

「そんで、この二つを持って、レッツ拘束!」

「拘束!」

 おふざけも大概に、とアルカードは若干呆れたが、ミナとボニーとクライドは大はしゃぎでアスタロトを拘束中だ。

「かーごめーかごめー」

「かーごのなーかのとーりーはー」

「いーつーいーつーでーやーうー」

 こんなふざけた3人に、動けないのをいいことに拘束され、アスタロトは心底口惜しそうにしている。ソレを見て爆笑するリュイとやっぱり呆れているアルカード。



 ミナ達がアホの子の様に歌っている頃、シュヴァリエとアンジェロは、武僧兵団が攻撃を仕掛けている砦まで転移して、残りの悪魔たちを殲滅しに出かけている。

 既に関所の前まで南下していた2万の兵が、アルカードの命令で速攻関所を破りナボックへ向かい、極端に戦力の少なくなった砦で悪魔が籠城している。その人数も大したことはない。

 武僧・修験者・騎士・エクソシストの寄せ集めである武僧兵団。宗教や信仰、不思議パワーを以て肉体を鍛え上げた者達。対悪魔用の精鋭部隊だ。

 籠城されたのを逆手に取り、既に砦には結界が張ってあって逃げないようにされている。逆にこのまま放置して永遠に封印してやってもいいくらいだが、そう言うわけにもいかないようだ。

 武僧兵団が攻め込んできたとき、すぐにアスタロトは砦に人質を分割した。人質にされていたのは、王と、兵たちの家族。今砦で人質になっているのは。

「うーん、さすが悪魔。王族をあんなぞんざいに扱うとは。参ったな」

「けどよぉ、捕まってんの王女だろ? 王さえ生きてりゃ、後継ぎなんて今後いくらでも作れるだろ。ディアリは長命なんだから」

「や、だからこそだよ。ディアリは生殖能力が極端に低いんだと。前にクミルが言ってた」

「あー、だからクミルは再婚もしないで、マニ大事にしてんだなー」

「ずっと一人っ子なわけだしな。母の愛だなー」

「いや、クミルの話はいいだろ。さて、王女様を救出するか」


 立ち上がったアンジェロが、砦に近づいて手を伸ばすと、掌にバリっと電気が走ったように閃光が光る。どうも結界パワーで吸血鬼も入れないようだ。

 それを見て武僧兵団も頭を悩ます。

「官房長官が行かれるんですか?」

「ていうか、本当に官房長官ですか?」

「官房長官じゃありません。今は執政官です」

「あ、執政官。本当に?」

「当然です。VMRでこの軍服を着ているのは、私を含め3人しかいません」

「そう、ですよね」

 権威の象徴パルダンメントウムを纏い、立襟燕尾服を着ているのはアルカードと山姫とアンジェロしかいない。勝色の立襟燕尾服を着ているのは、山姫とアンジェロだけ。軍人なら周知の事だ。

 一方の武僧兵団は朱色のジャージだ。武僧兵団の兵科色朱色は、硫化水銀を原料にしたもので、神社の鳥居なんかに使われる色だ。東洋の朱への信仰と、西洋の銀への信仰を和洋折衷するなら朱色しかない、という理由らしい。真っ赤なジャージ軍団は国王直属カラーギャングとか言われている。



 そんなカラーギャングも立襟燕尾服とフロックコートの高級将校が出てきたらさすがにビビる。すぐに結界の一部に亀裂を入れてくれた。

 そこからアンジェロが入って、すぐに結界を閉じるように命令し、結界の中から銃を突きだしてみせる。

「おぉ、銃は通るんだな」

「まぁ、物は基本神聖も悪もないので・・・・・」

「なるほど。じゃぁレオ、ウェーヴァー持ってきたか?」

「持ってきたよー」

「出来るよな?」

「もっちろん。ルカ、ちょっと肩貸して」

「はいよ」


 アンジェロ達が立っている、約2キロ程先の砦の城門の上では、ナボックの王女が悪魔に捕まっている。

 王女は手足を縛られて木の棒に括りつけられ、傾けた木の棒を悪魔が踏みつける。その度に宙ぶらりんの状態になった王女は城壁の上から突き出されてぐらぐらと揺れ、恐怖で悲鳴を上げて泣いている。

 その周囲を飛べる悪魔が3人、笑いながら周回している。王族に対して極めて無礼な扱いだ。

 ルカの肩に銃身を添えて、愛用の狙撃銃“ウェーヴァー”の照準器を覗くレオナルドにアンジェロが合図をすると、3発銃声が響き、2キロ先―――――まずは飛んでいた悪魔がぐらりと体勢を崩し、地面に落下する。

「ヒュー!」

「レオの狙撃はスゲェな」

「黙れ」

「・・・・・なんで狙撃中キャラ変わるんだよ」

 心なしか眼光鋭く、眉が太くなったレオナルドは、続いて、王女の括りつけられていた棒を踏んでいた悪魔に狙いを定める。銃声とともに悪魔が崩れ落ち、その瞬間王女は棒ごと城壁から落下を始める。

 すかさずアンジェロが転移して、落下中の王女をキャッチ。すぐに王女を抱えて戻ってきた。

 王女は魔物じゃないので難なく結界をパス。括りつけられたまま外のカラーギャングに王女を託す。


 王女はまだ子供で、恐怖から泣きじゃくっている。王女を拘束していたロープを外してやると、その兵にしがみついてわんわん泣きはじめた。

「王女様、お怪我はありませんか?」

「うわーっ! 怖かったー!」

「もう大丈夫ですよ」

「国王陛下と王妃陛下が待ってますよ」

 こんなに早く王女が救出されるとは思っていなかったのか、兵が慌てて国王と王妃を連れてくると、今度は王女は両親に飛びついて泣きはじめた。

「お父様! お母様!」

「おぉ、姫、無事でよかった」

「あぁ本当に良かった。ありがとうございます」

 号泣する王女を抱えた王妃と国王は、格下の兵とシュヴァリエ達の前に跪き、深く礼を取った。

「どうか面を上げてくださいませ、ダヴ国王陛下。城の悪魔は既に一掃してあります。後はこの砦に残っている悪魔だけ。戦後は復興にご尽力なさってください」

「ありがとうございます。このご恩は必ず報います」

 涙ながらに礼を言う国王に営業スマイルを向けたアンジェロは、今度はギャングに向いた。


「砦に籠城している悪魔は何人ですか?」

「今まで見た限りでは大体、50人くらいですね」

 ふぅん、と呟きながらアンジェロが砦の中に視線を移すと、市街にちらほら悪魔の姿を見かけるし、恐らく城内にも悪魔はいる。

 ―――――面倒くさっ。

 素直にそう思って、一人で入って来た事をまんまと後悔したが、入って来たものは仕方がない。すぐに振り向いてヨハンに合図をした。

「おい、ソレ寄越せ」

「はいよ」

 ヨハンから渡された対戦車ロケット擲弾発射器。旧ソ連が開発したクルップ式無反動砲RPG-7を肩に担ぎ、アンジェロはズカズカと歩を進め、中央広場の真ん中で仁王立ちだ。

「うわぁ、アンジェロ、やる気だ」

「やる気だなぁ」

 ジョヴァンニたちが呆れて見つめる先では、くわえ煙草の口元をニヤニヤさせて、ロケット弾を装填し、砲口を城壁でウロウロしている悪魔に向ける。


「さぁ、戦争パーティの始まりだ」

 そう言って、相変わらずニヤニヤしながら、城めがけてブッ放す。爆音とともに放たれた弾頭は一直線に城壁に着弾。ウロウロしていた悪魔は木端微塵に爆破される。ついでに城壁も爆破される。

「ハッハァ! ストラーイク!」

「・・・・・やりやがった」

「やっちゃったなーオイ」

 浮かれたアンジェロは次々に弾頭を装填し、容赦なく城にブチ込みまくる。そうしていると、さすがに悪魔たちが「この爆破狂を野放しにしては置けない」と危険を感じたらしく、アンジェロ討伐に続々と広場に集まってくる。

 取り囲む悪魔にニヤニヤ笑ったアンジェロは、RPG-7をその場にガチャンと放り投げ、根元まで燃えてしまった煙草をピッと放り投げ、新たに煙草を取り出して火をつける。

「ぃよぉ、お客さま。ヴァルプルギスの夜へ、ようこそ」

 素早くホルスターから銃を取り出し、二挺拳銃で次々と悪魔を沈めていく。

「アンジェロはやっぱさすがだなー」

「実戦派じゃねーのになー」

「相変わらず一撃必殺」

「うーん、最早芸術だな」

 殺人神父時代は隊長だったので、指揮がメインで現場で銃を使う事はあまりなかった(そもそも現場に出ることがあまりなかった)くせに、いざ現場に出ると誰よりも銃の扱いが巧い。

 だからこそ隊長だったわけだが、二刀流でも余すことなく悪魔の眉間をブチ抜く腕前に、思わずシュヴァリエは感嘆の声を漏らす。



 襲い掛かっても即射殺。炎を噴いても躱されて即射殺。逃げても即射殺。悪魔たちはアンジェロにビビり始めたのか、じりじりと距離を取っている。それを見てまたニヤニヤするアンジェロ。

 一人の悪魔に向かって言った。

『悪魔を全員ここに連れてこい』

 言われた悪魔はすぐに走って広場から出て行き、仲間を呼んでくる。その仲間たちも射殺し、動揺する残党の悪魔。残っているのは30人位だ。更にアンジェロは言った。

『殺し合え』

 その命令が下りた瞬間、悪魔同士で殺し合いを始めた。それを見届けて、やっぱりニヤニヤしながら煙草をポイ捨てして、広場から戻ってきた。

「楽! 勝!」

「さっすが・・・・・」

「もうお前、怖えぇよ」

 悪魔たちが夢中で殺し合いを始めてしまったので、結界は解除された。すぐにシュヴァリエ達が中に入って行って、殺し合いをしている悪魔たちを漏れなく射殺。

 アンジェロの指示で城内や市街も改めさせて、ナボック砦は完全に制圧された。

「ハァイ、終了ー」

「ハイハイ、お疲れ」

「疲れてねーよ」

「ほとんどアンジェロが殺しちゃったじゃん」

「ハハハ。そーだった。あー楽しかった」

「・・・・・このイカレ野郎」

 見守っていた武僧兵団たちも同様に「このイカレ執政官」と思ったが、それを言ったら殺されそうなので口をつぐんで、敬礼をしてシュヴァリエ達を見送った。



 武僧兵団はナボックの治安回復と復興の為に、しばらく逗留することになっているので置き去りだ。 即城に転移したアンジェロ達は、拘束されたアスタロトにひとしきり野次を飛ばして嘲笑し、アスタロトを連れてアリストの王宮へ戻った。





★芸術とは、芸術的才能による純粋な魂の表現である

――――――――――ラスキン「クイーン・オブ・ザ・ウェアー」より

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