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コントラクト 3 ―宿命の契約―  作者: 時任雪緒
第5章 この手で掴む、五風十雨
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かがくの ちからって すげー!




 ミラーカの祈りが天に届いたのか、南の空は暗雲が立ち込めた。

 ―――――やった! 雨だ! これで火災が収まるかもしれない!

 火災の後に雨が降るのは自然の摂理だが、やはり天の恵みは喜ばしいものだ。

 市民の救出とリザードマンの討伐を優先していた為に、消火には手を付けられていない。ほとんどが土づくりの家だが、それでも基礎や構造に使った木材に炎が燃え移り、火災は徐々に広がりつつあったが、それも時間の問題だ。

 ミナの戦闘はより活発になった。

 ―――――水があれば一騎当千!

 出会ったリザードマンの小隊を、氷漬けにしてやった。能力と血の消耗は大きいが、効率はいい。

 逃げ惑う市民を兵に誘導させながら、トカゲの氷漬けをあちこちに作っていった。そうして走り回っていると、悲鳴が聞こえた。

 声のした方に駆けだすと、老人と少年がゆっくりと後ずさりしているのが見える。

「ヨナ・・・逃げるんじゃ」

「じいちゃんを置いてけないよ」

「わしはええ! 早く逃げるんじゃ!」

「じいちゃん! ―――――ゴメン!」

 老人が庇うようにリザードマンの前に立ち、少年は泣きながらその場から逃げ出した。すぐにミナが老人の前に回り込み、リザードマンを両断した。

「怪我はありませんか?」

「あ、あぁ・・・・・ヨナ、ヨナ」

 狼狽えたものの、老人は少年の逃げた方にヨタヨタと駆けだす。すぐにミナも少年の元に向かおうと地面を蹴った時、少年の悲鳴が響いた。

「ヨナ! うっ」

 老人を置いてはいけない。少年の元に必死に歩んでいた老人を担いで、少年が逃げた方へ全力で走った。


 角を曲がったところは広場の様になっていて、中央には泉がある様だったが、今は見えない。大勢のリザードマンの為に。ミナは老人を連れてきてしまったことを激しく後悔した。

「うっ、あ、ぎひっ」

 少年の口からは、真っ赤な血がごばっと吐き出された。肩甲骨のあたりに噛みつかれて、そのままリザードマンが噛み千切ると、少年の体はその場に落下して、首元から肩にかけて抉られた部分からは大量の血が流れて、降り出した雨に混ざり水たまりに溜っていく。

「降ろせ! ヨナ! ヨナ!」

「おじいさん、ダメ、もう、助からない」

「離せ小娘! この! この! ヨナァァ!」

 老人は必死に暴れて、抱えるミナを蹴ったり殴ったりして、何とか少年の元に行きたがる。

 この世界の医学では、のど元を噛み千切られた人間を延命させることなど到底不可能。せめて老人の見守る中で、老人の腕の中で少年を死なせてあげたい。その為には少年に群がるリザードマンを倒さなければならない。

「わかった、おじいさん。絶対ここから動かないで! 動いたら殺す!」

 老人に厳しく言いつけて、再び少年に食らいつこうと、少年の体を持ち上げたリザードマンを切り裂いた。何とか少年を奪還することは出来て、すぐに老人の元に戻って、老人と少年を抱えて飛び立ち、城壁へ上った。

「! 君!」

「おじいさんをお願いします。できれば、この子の弔いを」

 傍にいた兵に二人を預けて、すぐに元の場所に戻った。



 広場に集まっているリザードマンの人数はかなり多い。軽く見ても1000人を超えている。

 ―――――攻略の中継点、てことかな。何にしても、広い場所に集まってくれた方がやりやすい。

 すぐにミナは雨の水を酸素と水素に分解し始める。屋外だが砦の内側の為か風は弱い。問題は雨の降る中、着火できるか。

 指先を炭化させ、何度も指をこする。パシッパシッと火花は散るものの、中々炎がついてくれない。何度か繰り返して、やっとのことで火がついた。

 ―――――今の間に薄くなっちゃったかな。もっともっと、濃くしなきゃ。

 再び広場内の酸素濃度と水素濃度を上げて、傍に転がっていた誰かの靴を燃やし、広場の中央に向かって投げつけた。

 靴が降下し始めた瞬間、上空から空気中に炎が伝播し、一気に爆発を起こした。その衝撃で幾人もリザードマンが吹き飛ばされ、四肢や血液が飛び散り、燃え上がる炎に焼かれたリザードマンが至る所で転げまわる。

 ―――――ダメだ。泉があるし、雨の中だと爆発が弱い。

 リザードマンは泉に飛び込んだり、水たまりのお陰で難なく消火してしまう。恐らく生き残った者は半数以上はいる。それを見て、地面に手をついた。

 ―――――こんなに大掛かりなのは初めてだけど、やるしかない。

 少し自信はなかったし不安にもなったが、水たまりに突っ込んだ手に渾身の魔力を込めた。

 ミナの手から水を伝い、パキパキと水たまりが氷結していく。足元から徐々に氷結を広げて、まずは逃げられないようにして、雨や消火の為に体が濡れたリザードマンは瞬く間に凍りつく。

 広い広場にいるリザードマンは数多く、広場自体もかなり広く、極端に魔力を消耗してしまった。しかし、それが功を奏して泉に浸かっていた者も、辛うじて爆破を逃れた者も、全員が凍りついた。




 クミルから話を聞いたアンジェロは、書庫に籠って調べ物をしていた。クミルは子供の頃に聞いた話だから確証はない、と言っていたが、アンジェロは確証を見つけた。

 すぐに書物を携え、山姫とアルカードの元に報告へ行った。

「太政大臣、軍の用意はできましたか?」

「・・・・・それが、まだなのよ」

「まだ?」

 既に、王宮に報告をして4時間以上は経過している。現在の時間は、朝の9時。

 軍人のほとんどは人間や鬼族や獣人族で、吸血鬼の様に睡眠時間に制限のある夜族は、緊急時には足を引っ張るばかりなので、あまりいない。

 時間的にも既に起きて訓練を始めている時間のはずだし、一人一人の準備はどんなに遅くても30分もかからない。

 軍備を整えるにしても、武器はせいぜい剣や槍や弓。それ以外に用意すべきは馬と予備の武器と矢と兵糧くらいで、市街戦なので戦車は必要ない。

「何か足りない物でも?」

「いいえ、そう言う事ではないの。兵が、戦闘を拒否しているようなの。これは一体、どういうことなのかしら?」

 難しい顔をして腕組みをする山姫だったが、アルカードがアンジェロに視線をやった。

「その答えを持ってきたんだな、小僧」

「はい」


 

 昔々、あるところにトカゲの王様がいました。トカゲの王様は乱暴で恐ろしい王様だったので、人々は恐れてトカゲの王様には誰も近寄ろうとはしませんでした。

 だけど王様は毎日淋しくて、ある時悪魔を呼び出しました。

「なんでも言う事を聞く友達が欲しいんだ」

 それを聞いて悪魔は言いました。

「そんなのは友達とは言わないよ」

 だけど王様はそう言う友達が欲しかったので、何度もお願いすると、悪魔は笑いました。

「いいよ。君の願いを叶えてあげる」

 王様に友達が出来ました。家来たちが何でも王様の言う事を聞くようになりました。子供たちや国民も何でも言う事を聞くようになりました。周りの者達が王様を怖がらなくなりました。王様は嬉しくなって、毎日毎日家来や国民に色々と言いつけました。

 しかし、少しすると気が付きます。

「わしと誰も話してくれない。みんな“はい”としか言わない」

 王様はまた悪魔を呼び出しました。

「わしは友達が欲しいんだ。お話が出来ないのは友達じゃないだろう?」

 それを聞いて悪魔は笑いました。

「なんでも言う事を聞く友達と言ったのは君だよ? お喋りをしたら意見が合わないことがあって当たり前。君が言う事を聞かせたいと言ったから、家来も子供も国民も、君の言う事には“はい”としか答えない。僕は忠告したのに、それでもそう言う友達が欲しいと言ったのは、君じゃぁないか。僕はちゃんと、君のお願いを叶えてあげたよ」

 悪魔はそれだけ言うといなくなり、何度呼んでも、二度と王様の前に現れてはくれませんでした。


 そんなある日、敵が攻めてきました。王様は敵をやっつけようと、兵隊を差し向けました。ですが、敵はとても強くて、味方の兵隊はどんどんやられていきます。

 このまま戦い続けようか、それとも逃げようか。悩んで家来に相談しました。

「このまま戦って勝てそうか?」

 家来はわからないと答えました。

「じゃぁ逃げた方がいいのか?」

 家来はまた、わからないと答えました。

「じゃぁお前はどう考えているんだ?」

 家来は言いました。

「王様の考えに従うだけです」

 家来に聞いても、子供たちに聞いても、同じ答えが返ってきます。誰も、王様と一緒になって考えてくれません。

 王様は腹が立って、家来に聞きました。

「どうして一緒に考えてくれないんだ」

 すると、家来は笑いました。

「君が願ったんだよ。何でも言う事を聞く友達。君の命令を聞くだけなら、考える必要なんてないよね」

 家来に化けていた悪魔が笑いました。

「願いを叶えてあげたから、君の魂を頂戴」

 王様は驚いて剣を振りましたが、悪魔には剣はききませんでした。

「やめろ!」

 王様は叫んで逃げようとしましたが、悪魔に捕まりました。

「僕は君の友達じゃないから、君の命令は聞けないよ」

 悪魔に捕まったトカゲの王様は、願いを叶えて魂を抜かれて、一人で寂しく死んでしまいました。



「“一人で寂しく”ということは、城が落とされたと言う事でしょう。史実に在ります。今から800年以上前、この国の南にリザードマンの王国があり、アスタロトが侵略しています」

 史実によると、リザードマンはかつてこの国に王国を築いていて、敗戦と共に国を追われた国民たちが、当時無人島だったナエビラクに渡り、分裂した部族で国家を形成したのだとあった。

「成程、兵たちが戦闘を拒否しているのは、リザードマンも悪魔の侵略の被害に遭った同族だから、ということか。目的は領地の奪還か?」

「恐らく、そうではありません。今になって奪還しに来る理由もないでしょうし、先ほどオキクサムの市長に聞いたのですが、リザードマンの海洋国家は、リザードマン同士での交流以外、一切していないらしいのです。オキクサムは幾度か貿易の交渉をしたようですが、全て門前払いだったそうで、他国に渡ることも、他国を受け入れる事もなかったので、リザードマンが侵攻してくるとは夢にも思わなかった、と」

「成程、鎖国しているのだな。ならば、やはり・・・・・」

「悪魔が扇動したとしか、思えません」

 どこかが侵攻してくることは想定していた。その為に軍の編成を急務としてきたのだ。侵略するなら、国家が築かれ政権が樹立したばかりの頃を狙うのが妥当だ。その頃なら国内が安定しておらず、そのタイミングで戦火が上がれば国内は混乱し、平安時よりも容易く陥落できるからだ。

 侵略して来るには少しタイミングが遅いとは思った。リザードマンが鎖国をしていたのなら、恐らく軍船などもまともになかった。急ごしらえの軍隊を用意して、軍船や軍備の準備に時間がかかっていたのだと考えると、辻褄は合う。

 問題は目的が何か、という事だが、鎖国をしている以上侵略ではないだろう。鎖国を解いて侵略を考えたとしても、VMRが大国で叶う筈がないことはリザードマン達の方が分かっているはずなのに、悪魔に扇動された可能性があるとはいえ、何故侵攻してきたのか。

 考えて、目を瞑っていたアルカードは山姫に向いた。

「枸橘に伝えろ。軍備は軽装で構わない。目的はあくまで制圧であり、沈静化と捕縛が目的であって、兵たちが殺す必要はない」

「はい、かしこまりました」

 すぐに山姫は礼を取って退室していった。

 これが悪魔の策略の一つだとしたら、恐らく、悪魔の目的は国力の疲弊。内乱により衰弱させて、南に目が向いている隙に別方面から攻撃を仕掛けてくる可能性もある。

 わざわざ他国を使ってきたのなら、やはり悪魔の方も大軍団を形成できていないから、という事であろうが、今後もこう言った小競り合いが展開される可能性もある。

 大々的に大国が侵略して来て大戦争、とならなくても、小さな紛争が頻繁に起きるようであれば、国としてはこれほど頭の痛いことはない。

 かといって、悪魔に願いたくはない。ひょっとするとアルカードが悪魔にそう願う様に仕向ける策略の一つかもしれないと考えると、いよいよ屈してしまう気にはなれなかった。

「小僧、砦へ飛べ。一人、捕虜にして来い」

「かしこまりました」

 アンジェロはオキクサムの砦へと転移した。




「ッハァ・・・・・ハァ・・・・・さすがに、疲れるな」

 ずっと能力を使い続けて、大規模に行使している。しかも以前とは違い、血液ばかりを摂取していたわけでもない。

 ―――――やっぱり、私も栄養失調だったってことかな。前の戦争の時と同じくらい、疲労を感じる。能力を使いすぎたかな。あぁ、だからアルカードさんは使い魔を作ったんだ。こう言う時は、使い魔の方が効率がいい。

 それなら、と、ミナはスケートリンクの様に氷漬けになった広場に足を踏み入れ、氷の中のリザードマンを見上げた。

 ―――――こいつら、食べられるのかな。

 正直食欲はない。腹は減っているけども、青い血液には食欲はわかない。しかし、贅沢も言っていられないし、急を要する。

 仕方なしに、一番手前にいたリザードマンの首を刎ねた。上空にまで登った血液を少しだけ掬って、恐る恐る舐めてみる。

 ―――――あ、飲める。

 というわけで、その場で氷漬けになっている全員の首を刎ね始める。氷の上には、雨に混じった青い血が池の様に溜っていく。

 ミナの靴が浸かるほどに青い血液が溜り、それで剣を振るのをやめた。さすがに地面に口をつけて飲む気にはなれなかったので、デュランダルで掌を切り裂いた。

「痛ッ! 痛いし・・・・・さすが聖剣」

 デュランダルに切り裂かれた掌の切り口は傷が修復しない。まぁいいや、と地面に手をついた。


 体内の血液を逆流させ、一気に青い血を吸い上げる。掌から冷たい血が上ってくる。青い、自分の物ではない血液が、体中を駆け巡って自分の血と融合する。

 ミナの血に触れた青い血は、すぐにミナの血液と同化した。広場に溜った血液が水たまり程度にしか残らなくなったところで地面から手を離し、立ち上がった。

 デュランダルに切り裂かれた傷口は、血こそ止まったものの、3センチほどぱっくりと開いている。

 ―――――まぁいっか。ここが出入り口って事で。

 アルカードが昔言った。使い魔を作る為には、最低でも1000人は吸血しなければならない、と。充分に、それを超える人数は吸血した。

 ―――――何がいいかな。やっぱり前の使い魔がいいかな。でも雨だと火は不利だし、あんまり派手に炎を使うと火事になる。じゃあやっぱり・・・・・

 リザードマンの血液を元に作り出すイメージをして、掌を宙に差し出した。


 すると、掌から飛び出してきた。甕覗き色をした体毛に覆われ、クリクリとした黒い丸い目がミナを捉えている。

「ヤダコレ、小っさ!」

 イメージでは最低でも体高80cm位のレトリーバーサイズを想定していたのに、実際に出てきたのは体長20cm程度で尻尾まで入れても35cm程度だった。まだまだ血は足りていないようだ。

「でも可愛い。ドーマウス」

 ドーマウスはミナの掌から肩に駆けのぼり、耳元でききっと鳴きながらミナに頬ずりをする。褒められたことを喜んでいるようだ。

 マッドティーパーティの話をした際に、アルカードに

「ならばミナはドーマウスだ」

 と言われたことを思い出してドーマウスを作った。

 ドーマウスとはヤマネの事だ。別名眠り鼠とも呼ばれる。本来は茶色の体毛に覆われているが、リザードマンの血液を使った為に甕覗き色になったようだ。本物はこのドーマウスの半分くらいの大きさだ。

 眠り鼠と呼ばれるのは、その習性の為だ。冬眠をして冬を過ごす。小さく弱い鼠の為に、特殊な能力も持っている。


 早速ドーマウスの能力を確かめようと、広場を出てトカゲの声が聞こえる方に走った。ドーマウスはミナの肩にしっかと捕まり、ミナが敵を発見したと同時に、その甕覗き色の毛を逆立てた。

 リザードマンの血液は既にミナの血液と同化している。ミナの意志は血液を媒介してドーマウスを操れるようになっているようで、すぐにドーマウスは攻撃用意を始めた。

 逆立った毛が、ヤマアラシの毛の様に堅いニードル状に硬化し、一気にリザードマンに降り注ぐ。

 が、リザードマンは痛がるものの、殺すような威力はなかった。

 ―――――小さいからかなぁ。もっと大きくならなきゃ、これはあんまり功を奏しないかも。

 そう思いながらドーマウスに目をやると、毛が抜けて真っ白の肌が丸見えになったドーマウスが、再び毛をバサッと生やしていた。

 ―――――やっぱコレ、あんまり使わないようにしよう。

 丸裸のドーマウスが可哀想に見えた。まだまだリザードマンはたくさんいる。というより、まだこの小隊は一匹も倒していない。先程の攻撃でミナに気付いたリザードマンが走ってきた。では、ともう一つ思いついた技をやらせてみることにした。

 ドーマウスはその小さな口を開く。大きく長く体が膨らむほどに息を吸って、襲い掛かって来たリザードマン達に向かって一気に吐き出したのは、液体窒素を混ぜた吹雪。

 さすがにこれにはひとたまりもなかったようで、液体窒素の強烈な冷気と吹雪の為に、リザードマンは一気に氷結した。

「あ、すごい。使える」

「キキッ」

 ドーマウスも嬉しそうに、ミナの肩をウロチョロしている。喜んでばかりもいられないので、そうしてドーマウスで出会った小隊を壊滅させた。



 終わりに差し掛かった頃、破壊音や悲鳴などに混じって、かすかに破裂音が聞こえた。

「銃声? いや、違うかな? この世界には銃はないはずだし・・・・・」

 そうは思ったが、気になって破裂音のした方に駆けだした。

 破裂音は何度も聞こえてくる。それでやはり銃声だと確信した。何よりも、ミナにはよく聞き覚えのある銃声だった。

 やっと騒動の場所に辿り着くと、金髪スーツの男が、銃からマガジンを落として、再装填していた。

「アンジェロ!」

 声をかけて振り向いたのはやっぱりアンジェロで、ミナに気付くとすぐに駆け寄った。ミナも駆けだして、アンジェロに飛びついた。

 飛びついたミナをアンジェロはぎゅっと抱きしめて、ドーマウスは慌ててミナの頭の上に避難した。

「アンジェロ」

「良かった、ミナ、無事で」

「当たり前でしょ。でも、雨と血で濡れて気持ち悪い」

「その程度で済んだなら良かった」

 そう言ってアンジェロが離れたのでミナも離れると、アンジェロはすぐにミナの頭の上で髪に捕まっているドーマウスに気付いた。

「なんだその水色のネズミ」

「ドーマウスだよ」

「水色のドーマウス・・・・・お前戦闘中にペット拾ってんな」

「違うよ! 使い魔だよ! 作ったの!」

 そう言うと、アンジェロは少しだけ表情を曇らせた。

「今、作ったのか」

「そうだよ。リザードマンで」

「どのくらい倒した?」

「わかんないけど、多分3000くらいかな」

「そうか・・・・・」

 なぜか考え込む風な顔をした事は気になったが、それ以上にアンジェロがいることが気になった。

「ねぇ、もう軍隊用意できたの? もう連れて来たの?」

「いや、まだだ」

「え? まだ?」

 アンジェロの手を取って時計を見ると、既にミナが戦闘を始めて5時間以上経過している。まだ出来ていないとはどういう事か気にはなったが、確かに国軍の姿は見かけない。

「じゃぁ、アンジェロはどうしてここに来たの?」

「捕虜を捕まえてくるように言われたんだけど、リザードマンは言葉が喋れねぇんだな」

「うん、そうみたい。彼ら同志は意思の疎通は出来るみたいだけど」

 ―――――あぁ、なるほど。長い事鎖国していた為に、種族語以外の言語は捨てたわけだな。となると、ちょっと厄介だな。

 考え込んでいたアンジェロだったが、すぐにサイコメトラーであるクリスティアーノがいたことを思い出して、この際誰でもいい事に気が付いたようだ。

「ミナ、捕まえんの手伝え」

「いいよ。私は何すればいい?」

「とりあえず指揮官クラスの奴は捕まえときたいから、お前探せねぇか?」

「うん。わかった。じゃぁ探してくるね」

「あぁ」

 すぐに飛び立って、街の上をパタパタと周回しながら、それらしいリザードマンを探した。

 すると、町はずれの砦の門の前、恐らく侵入してきたと思われる門の前に兵が集まり、旗を掲げた兵が後ろに控えたトカゲが、何やら指示を出しているのを見つけた。

 ―――――アイツだ!

 すぐにアンジェロの元に戻って、アンジェロと共に門の近くまで行き、屋根の上に隠れた。

「アイツっぽくない?」

「間違いないな。アイツが指揮官だ。ちょっと捕まえてくる」

 そう言うとアンジェロはパッと消えた。かと思うと、その将兵の後ろに回り込んでいた。将兵の前に立っていた部下の兵がアンジェロに気付いた時にはとうに遅く、アンジェロは将兵の両腕を後ろ手に拘束し、首元を押さえつけ、再び消えた。

 そして、ミナの待つ屋根の上に再び戻ってきた。

「ガッ、ハナセ・・・・・」

「お、なんだコイツ。喋れんじゃん。ラッキー」

 リザードマンはジタバタと暴れていたが、アンジェロはそれにイラついたようだ。

「ミナ、コイツ黙らせろ」

「わかった。ドーマウス」

 ドーマウスは小さく息を吸って、吐いた冷気をまんべんなくリザードマンに吹きかけていく。すると、その冷気で低体温にでもなったのか、リザードマンは眠ってしまった。

「スゲェな、そのネズミ」

「ネズミじゃないよ! ドーマウス!」

「キィ!」

 ドーマウスも一緒になって抗議すると、アンジェロは可笑しそうにして笑った。


 しかし、ドーマウスはまだまだ小さいせいか、出してすぐ連続して使ったせいか、欠伸をし始めた。

「あれ、もう眠くなっちゃった?」

「キィ」

「じゃぁ、おやすみ」

 そう言って左手の掌に載せると、傷口の中にしゅるんと戻って行った。それを見てアンジェロは唸る。

「なんだっけ、なんか昔そう言うの見たことある気がすんだけど」

「あー・・・・・あ、アレだ。昔私がやってたゲームの」

「あぁー・・・・・アレか。ポケモン」


 ドーマウス、ゲットだぜ!


★かがくの ちからって すげー!

――――――――――ポケモンのかがくマニア

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