表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コントラクト 3 ―宿命の契約―  作者: 時任雪緒
第4章 新天地で四苦八苦
64/96

おとっつあんはエライ!



 やっとのことで懲罰解禁。久しぶりに給料がもらえた、創絡2年、初夏のある日曜日。

「お、流石に家じゃ白衣じゃないな」

「お嬢腹減った!」

「若は?」

 給料が下りたのは他のメンバーも同じだ。今日は珍しく、クリスティアーノ・クラウディオ・レオナルドのシュヴァリエ年長組が市庁舎に遊びに来た。

 普段は遊びに行くのはもっぱらアンジェロの方で、離宮やそれぞれのオフィスに仕事中に遊びに行く。そうでもしないと仕事の時間以外、彼らは全部睡眠なので、遊んでいる暇はないのだ。睡眠時間の長さが違うだけで、睡眠時以外は全部仕事に当てているのは、彼らも同じだ。

 が、無休の罰を食らったのはアンジェロと山姫だけで、基本的には他のメンバーは毎週日曜が休み。なので、給料も出たことだし、遊びに行こうと言う事になったようだ。



 酒だのなんだの手土産を持ってきてくれたのは有難いが、気になるのは手土産のほとんどが食材だと言う事だ。ミナに料理を作れ、という事らしい。

「お嬢の私服久々見たな。なんか新鮮」

 とクラウディオはソファに座る。

「お嬢の料理久しぶりだな! 俺ラザニア!」

 と手土産をキッチンに運んでくれたレオナルドのリクエスト。

「つか、若は?」

 クラウディオと一緒に座ったクリスティアーノは、さっきからそれしか言わない。

 3人とも家に入れると早速好き放題始める。既に会話がバラバラだ。

「えっと、アンジェロは今日も仕事だから昼まで帰ってこないよ。家でまで白衣着てたらヘンタイだと思うんだけど。ラザニアと、後は適当でいい?」

「えー、マジか。若は今日も仕事か・・・・・」

「アハハ、確かにな。俺はなんでもいいよ。4人で飲もうぜ」

「あとフライドチキン!」

 やっぱり回答はバラバラだ。なんとなく一番まともに会話が出来そうなのはクラウディオ位だ。



 気持ちを切り替えて宴会用オードブルとリクエスト通りラザニアとフライドチキン、つまみになりそうなものをハイスピードで作り始めると、騒ぎを聞きつけたのか、上から双子が下りてきた。

「「あれー? 久しぶり」」

 双子と年長組が会うのもかなり久しぶりだ。ショタ双子から少年双子に成長したのを見るのは初めてだったので、3人は結構驚いた。

「うお、お前らまた急にデカくなったな」

 素直に感心するクラウディオ。

「お嬢より年上に見える・・・・・なんか、大丈夫なの?」

 世界観的な何かを心配に思ったらしいレオナルド。

「ハッハッハ、ミケランジェロは一層若に似てきたなぁ。翼はお嬢と双子みたいだな」

 とりあえずクリスティアーノは元気を取り戻した。

 一緒にソファに腰かけた双子も、休眠期や第3次元の話なんかを始めて、魔術や仕事の話なんかで男5人で盛り上がり始めた。

 ―――――主人のいない家で男ばっかで盛り上がってるって、どうなんだろう。

 なんとなく微妙な気分になったが、またしても切り替えて料理にとりかかった。



 30分後。とりあえず簡単なおつまみオードブルが出来たので、冷やしておいた酒と一緒に運んだ。

「おぉ、早えぇな。さすがお嬢」

「ミケランジェロ、俺の酒注いでー」

「自分で注げば?」

「何!? 反抗期!?」

「お母さん、僕達の分は?」

「アンタ達は血。アンタ達の方が役職も年齢も下なんだから、下っ端は言われたとおりに酒を注いでなさい」

「そーだぞお前ら。お嬢の言う通り」

「お嬢とオッサンの言う事は聞いといた方が身の為だぞ」

「オッサンを中心に世界が回ってんだぞ。それが世界の真理だ」

「えー。何その嫌な真理」

「なんで体育会系なんだよ」

「私もシュヴァリエも体育会系育ちなの。3人ともビシバシ教育してやって」

「任せとけぇい!」

「うわっ、レオ兄ちゃん、もう酔ってんの?」

「まだ飲んでねぇけど!」

「レオがテンション高ぇのは今に始まったことじゃねぇだろ」

「面倒くさいよ、酔っ払いのオッサンの相手なんか」

「生意気なガキになったな。やっぱ若の子だ」

「世界の中核、オッサンを舐めんなよ」

「かといって、アンジェロに対する恨みを双子で晴らそうとしないでね」

「・・・・・ハッハッハ、まさか。なぁ?」

「まっさかぁ! なぁ?」

「なぁ?」

 多少はそのつもりもあったようだ。が、男同士の付き合いに、女が口を挟みすぎるのも無粋と言うものだ。さっさと料理を置いて、再びキッチンに籠って追加の料理を作り始めた。



 すぐに「カンパーイ」と聞こえてきて、宴会が本格的に始まったようである。なんのかのと、仕事なんかの愚痴だのを話しながら序盤から盛り上がる男達。

 いつの間にやら話は宮廷スキャンダルの話題に。思わず聞き耳を立てた。

「ディオ、聞いた?」

「なにを?」

「ルカ」

「は? 何?」

「ルカ? 俺も知らねぇ」

「ルカさ、通信省の事務の子と付き合ってるらしいよ」

「マジか! いつの間に!?」

「え、その子人間?」

「いや、ハーフエルフだって」

「マジ!? いいなぁ」

「ハーフエルフって美女揃いだよな・・・・・羨ましい」

「え、つかお前ら彼女いねーの?」

「は!? レオ彼女いんの!?」

「いるけど?」

「マジか! なんかスゲェムカつく!」

「つか、ちゃんと仕事してんのかお前! そんな暇ねぇだろ!」

「してるよ! 仕事もナンパもちゃんとしてる!」

「ナンパをちゃんとっておかしいよな」

「おかしい」

 ―――――うん、おかしい。

 ミナも心の中でツッコんだ。ディアリの彼女が出来たレオナルドは、彼女なしの二人の前で得意げだ。

「可愛いよ、俺のリヤ。写真見る? 見る?」

「“俺のリヤ”とかイタイし見ねぇ。それで得意になるお前を見たくねぇ」

「見てもいいけど、可愛かったらヤラせろ」

「ダメだよ! 何言ってんの!」

「友達の彼女が可愛かったらとりあえず手ぇ出しとく。コレ常識」

「非常識だし最低だ!」

「クリスって意外と最低だよな」

 最低なクリスティアーノの発言の為に、レオナルドは出そうとした写真を引っ込めた。

 ―――――確かに。意外と最低だな、クリス。まさかと思うけど、昔私を口説いたのもそんな理由? だったら最悪だな。何気にクリスってシュヴァリエで一番性格悪いんだよね・・・・・ジュリオさん、本当にどんな躾したんだろう。

 クリスティアーノ本人は忘れてしまった過去の事を思い出して、若干鬱になるミナ。


 最低なクリスティアーノは

「友達の彼女と寝なかったら誰とヤればいいのかわかんねぇ」

 とまで言い出す始末だ。実際今までのアンジェロの歴代彼女にも手を出してきたらしく、それでアンジェロに怒られたこともないので、特に罪悪はないらしい。

 ここで勇者レオナルドが立ち上がる。

「へ、へぇー。じゃぁさ、お嬢を寝取ろうとか思ったことあるわけ?」

 ―――――うわぁ! レオ、それ聞いちゃう!?

 既に記憶はないものの、事実関係があるだけに、ハラハラしながら回答を待つ。

「お嬢? ハッハッハ、まさか! お嬢は例外に決まってんだろ」

(ウソつけ!!)

 双子とクリスティアーノ以外は、心の中で全力でツッコんだ。納得いかないレオナルドは、なおも質問を重ねる。

「え? 本当に? 今はまぁないと思うけど、昔も? 一瞬も思ったことない?」

「微塵もねーよ。あるわけねーだろ」

(ウソつけ!!)

「まぁ、少なくとも若とお嬢が付き合い始めてからはねぇな。その前はあるけど」

「あ、な、なんだ。そう言う事か・・・・・」

 なぜか安心した。



 そうこうしているうちにチキンも揚げ上がって、ラザニアも焼けた。

「ハイ、お待たせ」

「うわぁ、美味そう! お嬢ありがとう!」

「お嬢も座れよ」

「えー、私はいいよぉ」

「いいから座れって」

 クラウディオが腕を引くものだから、仕方なしに隣にストンと腰を下ろした。見ると、既に酒の入ったデキャンタが4本も空いている。

 グラスを持たされて、表面張力ギリッギリまでクラウディオに酒を注がれる。

 ―――――早いし、多いよ。酔っ払いのオッサン、すごいな。

 溢さないようにチビチビとぶどう酒に口をつけて飲むものの、酔っ払いたちに一気飲みを強要される。

 その様子を見て、双子は

「これだからオッサンは・・・・・」

 と呆れかえっているが、これこそがオッサンである。

 仕方なしに一気に飲み干すと囃し立てられ、更に酒を注がれる。

「飲め飲め!」

「ほらお嬢もさ、日頃から若の傍若無人さに鬱憤が溜ってんだろ。飲んで発散しろ」

 特に溜ってもいないストレスを発散しろと強要するオッサン。

「別に私アンジェロに文句なんかないよ」

「何? 惚気? 惚気?」

「惚気てるわけじゃないけどォ」

「何? そんなに好きなわけ?」

 クラウディオに尋ねられて、「好きだよ」と返答すると、なぜか引かれる。

「若が居ながら、なんで俺を誘うんだよ」

「うわ、お嬢浮気発覚」

「違! 誘ってないしディオに言ったんじゃないよ!」

「言い訳に必死だな」

「若、自殺するかもな」

「させないよ! ていうか言わせたのディオじゃん! もー! バカ!」

「あはははは!」

 オッサンに酒の一気飲みを強要された挙句、からかわれる母親を眺めて、やっぱり双子は呆れかえる。

【なんか、お母さん可哀想】

【可哀想な逆ハーレム】

 オッサンの世界の逆ハーレムは、酒の強要、セクハラ、愚痴と自慢を聞かされくだを巻かれる、と大体こんな感じの可哀想なことになるものだ。逆ハーレムに幻想を持っている人は考え直したほうがよろしい。逆ハーレム状態においては女は完全にアウェーになるのが現実だ。双子にはちょっと勉強になった。



 そんな逆ハーを眺めていた双子だったが、ふと思い出して、聞きたいけど中々聞きづらかったことを聞いてみることにした。

「あのさぁ、あのアニメって、本当なの?」

 双子は世界同時中継のアニメを見て、その時に初めて知ったのだ。両親と、自分の周りの吸血鬼達の過去を。只者ではないと思っていたが、まさか家族全員殺し屋だとは思っていなかったし、元々敵同士だとは思いもよらなかったのだ。

 恐る恐る聞いた双子に対して、ミナはサラリと「そうだよ」と言ってのけた。

「本当はね、アンタ達には一生話す気はなかったんだけど、アルカードさんとアンジェロであの放送をするって決めた段階で、どうしても身の上を明かす必要が出てきたみたいで。黙ってたこと、怒ってる?」

「怒ってるわけじゃないけど、ちょっとビックリはしたよ」

「正直納得はいったけどね、色々と」

「あぁ、そうだね。アンタ達はあのアニメを見て、私達を軽蔑した?」

 尋ねると、双子は顔を見合わせて、首を横に振った。

「最初はね、ちょっと軽蔑したよ」

「人殺しを仕事にしてるなんて、とんでもないって思ったよ」

「だけど、僕達も吸血鬼だし、僕達が人を殺さずに血を飲めるのは、病院があるからだ」

「今はそれも難しくて、僕達が血を飲めているのはお父さんのお陰だ」

「僕達が僕達だけだったら、きっと僕達も人を殺さなきゃ生きていけないんだ」

「理由は違っても、結果は同じ。本来僕たち吸血鬼は、殺人を肯定しなきゃいけない存在だって思った」

「最初は軽蔑したけど、僕達にそれをさせないでいてくれることは、有難く思う」

「そうさせないでいてくれるのは、やっぱりそう言う過去があったからかなって思った」

「それにやっぱり、お父さんとお母さんを殺そうとしてる悪魔は、別に殺してもいい気もするし。ね」

「ね。悪魔は別に、ね」

 二人の中では、やっぱり殺しは良くないけども悪魔は敵だから別にいい、という事になったようだ。

「あはは、そっかぁ。二人とも優しいね。ありがとう」

「双子もそんな事を考える年になったかぁ」

「ハッハッハ、懐かしいな、殺人神父時代」

「人殺ししなくなって、何年経ったっけなぁ。若と違って銃使ってないから、腕鈍ってそうだよ」

 冗談めかしてそう言いながら、3人は昔話を始めた。



「若はなぁ、俺らの中で一番最初に戦線に投入されたんだよ。確かあん時は14歳になったばっかだったと思う」

「その時は吸血鬼だったの?」

「いや、そん時はまだただの人間のガキだ。あの頃は若もただのガキで、人殺しをするために自分が育てられたなんて知らなかった。勿論、俺達もな」

「その為に育てられたの?」

「そうだよ。俺達はその為に誘拐されて、育てられて、そう言う教育をされた」

「それで、戦線に投入されたことを、若は誰にも言わなかった。ジュリオ様が言うなと言っていたようだし、若自身も言いたくなかったのかもしれない」

「どうして、黙ってたの?」

「もしお前達が聞いたらどう思う? 何も知らないで生きてきて、スポーツ感覚で銃を習って、ある日突然、お前達はこれから人殺しをさせられるんだぞって聞かされたら」

「・・・・・逃げたくなるかも」

「そうだろ? だからジュリオ様が口止めしたんだよ。それに若自身も言いたくなかったはずだ。最近までただの友達だった奴が、今日は人殺しになってる。普通なら、嫌われたり怖がられたりする」

「俺はそれを知らなくて、若が俺の目の前で人を殺したのを見た時に、それは犯罪だって言って、若を傷付けたことがあった。その事で若が苦悩してたなんて俺は全然気付かなくって、まぁ若も隠してたけど、後になって俺も戦線に投入されて若と同じように悩んで、若の傷口に塩を摺るような事を言ったって気づいた時は、結構反省したりしたね」

「クリス兄ちゃんは、嫌だった?」

「クリスどころか、若も、レオも、俺も、みんな嫌だったぞ。好き好んで人殺しする奴なんか一人もいなかった。少なくとも、最初のうちはな」

「後になって、嫌じゃなくなった?」

「嫌じゃなくなったって言うか、四の五の言ってられなくなったってのが正解かなぁ」

「何かあったの?」

「あのなぁ、若が昔からよく言ってたんだ。俺達は宗教を守るためにジュリオ様と神に誓いを立てた。その誓いを破ることは許さない。戦場で死ぬ事は、裏切りだって」

「なのに、一人死んだ。それでもう、全部が変わっちまったんだよ」

「これ以上死者が出たらまずい、そう言う理由で俺達は吸血鬼化された」

「だけど、クリフが死ぬとき、若は必死に救援を要請して、何とか助けてもらおうとしてた。なのに、ジュリオ様はクリフを見捨てた」

「今思えば、口実だったんだな。どの道クリフは助からなかったとしても、ジュリオ様は最初から俺達を吸血鬼化するつもりだったのは間違いない。その口実に、クリフの死が利用された」

「俺達がそう考えたのはずっと後になってからだったけど、多分若はかなり早くから気付いていたはずだ」

「若が昔から言ってた。俺達の誰かが死ぬくらいなら、俺達を殺そうとする誰かを、自分が殺してやるんだって。そう言いながらも若も悩み続けていて、なのにクリフが死んで、若は多分、自分を責めただろうな。自分がクリフを守れなかったせいでクリフが死んで、自分もみんなも吸血鬼になってしまったんだって」

「クリフが死んだのも、俺らが吸血鬼化したのも若のせいじゃねぇんだけど、隊長は若だったし、責任感の強い奴だし、自分を責め続けて―――――だから、諦めた」

「諦めたって、なにを?」

「もう、希望を持つのはやめようって。吸血鬼になって、銃じゃ死ななくなった。だけど、自分が迷っていたら周りにも迷いが伝わってしまうから、人殺しとしての運命を受け入れて、ただただ守るべきものを守る為だけに、ひらすら人殺しとして生きる運命を受け入れた」

「そっからはもう、若が十字を切るのを、一切見かけなくなった。祈りを捧げるのも見なくなった。アイツは確かに神を信仰してはいたけど、神の恩恵とか救いを求めるのは、一切しなくなった」

「もう神になんか頼らない。祈りも願いも捧げない。自分の力だけで殺して生きていく。そう言ってるみたいで、そう言う若を見ていたら、いつまでも甘えてるわけにはいかないだろ」

「俺達はもう既に逃げられないことは明らかだ。ガキの頃からヴァチカンで育てられて、逃げた先ではきっと社会不適合者。嫌だと言っても、人殺しだって事実に変わりはない。俺達にはもう、それしかない。その時俺達はもう25歳だったんだ。10年以上人殺しをし続けて、もう大人になってしまってた」

「今更人生をやり直そうなんて、とてもじゃないけど思えなかったよ。それにきっとできなかったよ。嫌だと言っても、もう体には染み付いてるんだ。血の匂い、焼ける匂い、硝煙の匂い。きっと、どこかで衝動的に人を殺したくなる。そんな気はしてた」

「だから、俺達も諦めた。悩んでも考えても望んでも祈っても、現実は変わらない。逃げたって逃げ切れない。俺達はもう既に、一端の殺し屋だったから」

「俺達はまだよかったよ。そうして諦めもついた。だけど、神様ってのは本当に残酷でな。アイツにまた、新しい希望を抱かせてしまった」

「新しい希望?」

「そう。俺達はもうダメだ。だけど、まだダメじゃない奴が現れた」

「ジュリオ様がクリフの代わりにって言って、赤ん坊を連れてきた。その赤ん坊の面倒を見るようにって、若に託した」

「じゃぁ、お父さんがその赤ちゃんを育てたの?」

「そうだよ。アイツ本当に可愛がっててさ。俺らもよく遊んだりしたけど」

「ハハ、作戦中にさ、無線に赤ん坊の声が入ってきて結構気が抜けてヤバかったよな」

「そうだよ、若、育児と仕事同時進行するんだもん。殺せって言った直後に、なんだ腹減ったのかー? って。何度も笑ったね、アレ」

「その子も随分特殊な環境で育ったね・・・・・」

「ハッハッハ、そうだな。けど、アイツはその子だけは人殺しにしたくないって思ってた。だけど、ジュリオ様の命令には逆らえない。結局その子も人殺しになって、俺達は死神って組織だったけど、ディオの隊に入ったんだよ」

「まぁ、若が教育しただけあって、銃の腕は一流だったけどな。繊細でなぁ。自分の運命を悲観して、よく泣いてたぜ」

「ディオや若はしょっちゅう相談を聞いてたから、余計だったろうな。せめて自分達と同じ化け物にだけはしたくねぇって、そう思ってたろ」

「思ってたなぁ。だけど、やっぱコレも運命って奴か。な」

 クラウディオがそう言って笑いかけてきたので、力なく笑顔を返した。

「そう言う運命、なのかな。そう言ったら簡単に片付くけど、今でもたまに後悔するよ。あの時私が作戦を強行しなければ、撃たれて瀕死の重傷を負う事も、吸血鬼化することもなかったんじゃないかって」

 双子が少し驚いたように顔を向けた。

「もしかして、お母さんが吸血鬼にしたの?」

「そうだよ。私のせいで大怪我して、今にも死んでしまいそうだった。どうしても死んで欲しくなくて、だけど、助けるにはもうそれしかなかった。だから、私が吸血鬼にしたの」

「吸血鬼になったことは、正直言って残念だったな。けど、死なずに済んだって事実に比べたら、全然軽いもんだ。死んじまうよりは、全然マシだ」

「だけど、若はそれを許さなかった」

「お父さん、怒ったの?」

 翼の問いに、かぶりを振って頷いた。

「もう、すっごい怒ってたよね」

「マジギレしてたな」

「つか、本気でお嬢を殺そうとしたな。アレは本気だった」

「えぇっ!? お父さんが、お母さんを!?」

「そうだよ。あの時ディオ達が止めに入ってくれなかったら、私絶対あの場で殺されたと思うもん」

「そんくらい、若にはショックだったんだよ。折角育て上げた希望をお嬢に潰されたと思ったんだろ。まぁ、どの道いずれは吸血鬼化するってのは間違いなかったんだけどよ、まだその時は18歳だったし、ほんのガキだったからな」

「それで、どうなったの?」

「何とか殺すのはやめてくれたんだけどよ、俺ら全員追い出されてさ。あん時は参ったなぁ。若は一旦キレるとご機嫌取りが大変でよぉ。多分これから若はお嬢を目の仇にするんだろうって思って途方に暮れたんだけど、お嬢は説得するっつって若の部屋に戻ったんだよ」

「説得できたの?」

「出来たから今夫婦やってんだよ。つか、まぁ若もわかってたはずだしな。最初の内はお嬢を恨んでたみてぇだけど、結局は許したよ」

「そんなに怒ってたのに、よく説得だけで許せたね?」

「説得だけじゃなかったからだよ。俺らも実は盗み聞きしてたんだけどさ、お嬢が若に約束してくれた。吸血鬼化した責任はちゃんととるって、悩んだり傷ついたりしないように、ちゃんと守るからって」

「吸血鬼化したことはやっぱり残念だったと思う。だけど、吸血鬼化したのがお嬢で良かったって、アイツは思った筈だぞ。お嬢は約束通り、ジョヴァンニを大事にしてくれたから」

「えっ! ジョヴァンニ兄ちゃん!?」

 驚いた双子に、男3人はケタケタと笑った。

「そ。ジョヴァンニの育ての親は、若なんだよ」

「本当お嬢は大事にしてくれてなぁ。俺らも安心したよ」

「マジで母ちゃんみてぇにさ、何かあったらすぐ連絡しろとか心配してさぁ」

「ジョヴァンニはお嬢を頼ってて、お嬢もジョヴァンニの事を大事にしてて。いっつもジョヴァンニの傍について彼是教えたり、励ましたり慰めたり。おかげでジョヴァンニが慣れるのは早かったな」

「そうだなぁ。お嬢が吸血鬼も悪いことばっかりじゃないよって笑ってたから、それで吹っ切れたってのもあるだろうし」

「もし吸血鬼化したのがお嬢じゃなかったら、ジョヴァンニはきっと今でも苦しんでたんだろ」

「ジョヴァンニが吸血鬼になったことに苦しまずに済んだのは、お嬢のお陰だ。だから、若はその事で、スゲェ救われたはずだ」

「そう言う事があったから余計に、若はお嬢にメロメロなわけだ」

「その纏め方は違う気がするんだけど」

「違わねぇよ。なぁ?」

「なぁ?」

「なぁ」

 妙な纏め方で終わった。話を聞いた双子は、驚きとも感心ともつかない顔をしている。



「なんか、色々あったんだね」

「そうだよ。色々あったんだよねぇ」

「本当、俺らの青春は散々だ」

「なんかみんなただのチャランポランだと思ってたけど、違ったんだ」

「お前らそんなこと思ってたの?」

「うん」

「思ってたのか・・・・・心外だな」

「だって、お母さんもお父さんもそうだけど、普段のみんなからは想像つかないもん」

「そりゃそうよ。ヤな事があったからって、いつまでも暗い顔してたってしょうがないでしょ」

「そうそう。ヤな事はさっさと忘れる! いつまでも悩み続けるってのも、結構エネルギー使うしなぁ」

「健康と健忘が健全な幸福の秘訣だぞ」

「“オッサンを中心に世界が回ってる”よりも、そっちのがよっぽど真理に近いよ」

「ハッハッハ、そうだなぁ。でもオッサンが世界を回してんのは本当なんだから、お前らオッサンを敬えよ」

「うん、まぁ、そうかもね」

「お父さん、いっつも仕事してるしね」

「よく考えたらすごいよね」

 結局は目の前のオッサン達が行政の仕事を頑張っているおかげで、双子も給料を貰えて、殺さずに血を貰えているわけだから、それも真理と言えば真理だ。

 ―――――クリスたちが言いたかったのって、おとっつぁんはエライってこと?


 最終的に「オッサンの偉大さを知らない奴はまだまだガキだ」という事になって、結局双子は体育会系宴会の作法を仕込まれた。

 ちなみに、昼にアンジェロが帰ってきた時、リビングで死屍累々で泥酔して眠るヨメと同僚を見て、一層疲労困憊になった。




★おとっつあんはエライ!

―――――――――ひむかのくろうまCM

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ