一杯の茶のためには、世界など滅んでもいい
告知から3か月後。新たに制定された年号、創絡元年の爽やかな5月1日。この日は戴冠記念日と制定された。
この日までに、アルカードとミラーカを除く全員で、寝る間も惜しんで政務に当たった。厳密には吸血鬼は強制寝落ちなので、起きていたくても起きていられないのだが、気分的にはそんな感じだ。
ちなみに昼間でも起きていられるメンバーは基本執務殿に泊まり込みで、睡眠は週に一回という過酷な労働を強いられた。
「ねぇ、アンジェロ。私クマできてない?」
「できてねぇ。いつも通りアホ面」
「むきー! なんでそんな事言うの!」
「うるせぇ。つか、立場的には俺のが上なんだから、家以外で馴れ馴れしくすんな」
「ムカつく・・・・・」
アンジェロはとても厳しい。そう言ってミナにも子供たちにも、上下関係、特にアルカードや山姫に対して礼を尽くすよう厳しく言いつけられた。
仲間内だけでお喋りしているだけなら何も言われないが、衛兵なり議員なり、他人のいるところで油断してタメ口をきこうものなら、人が見ていないところに連れ込まれて殴られる。
そんな厳しくされてミナもシュヴァリエ達も腹が立つのだが、アンジェロが日頃の恨みを掻き捨てて頑張っているので、文句ひとつ言えない。議員たちが王宮にやって来てアルカードに謁見した時も、
「陛下、恐れながら私が選定した議員たちでございます。議員の選定に当たり私の提示した条件は誠実・公正・良識・堅実・優秀な市民。この者達はその条件を十二分に満たしております。左院への参入の許可を戴けますでしょうか」
「あぁ、そうか。ならば良い。認めよう」
「有難く存じます」
とまぁこう言った感じで、ご立派に国王陛下の右腕を務めている。アンジェロがそうしているのにミナ達がそうしないわけにもいかない。
アンジェロはアルカードだけでなく、議員や兵たち、ミナ達や内閣にも仕事中は態度を改めた。正直な話、相手によって態度を変えるのが面倒臭くなっただけらしいのだが、いくら仕事中とはいえ、対応が丁寧かつ営業スマイルが付録でついて来るので、無愛想で口の悪いアンジェロに慣れたメンバーは違和感が尋常ではない。
「クミル、書庫へ行って地図を持ってきなさい」
「・・・はい」
「マキァヴェッリ内務大臣、戴冠式当日は軍と警吏総出での警備になります。準備は進んでいますか?」
「・・・まぁ、はい」
「柏木厚生大臣、首都の住民基本台帳の制作の進捗状況は?」
「まだ4割ほどですね」
「そうですか。それが済み次第、虎杖産経大臣と提携して厚生と税金に関わる政策を練りましょう」
「わかりました。急がせます」
「よろしくお願いします。調査には内務省と通信省からも人員を割いて下さいませんか」
「わ、かりました」
とまぁこんな感じで、なんだか神父時代のアンジェロに戻ったようだとクリスティアーノが言って笑っていた。
そんなこんなで迎えた今日は大忙しだ。ここ最近ずっとだが、女性陣は厨房に籠って大量のご飯作り。男性陣の大半は武装して王宮警備。ミラーカの指示で手の空いた者が大掃除と準備。山姫とアンジェロとアルカードはずっと打ち合わせ&準備の指揮だ。
いよいよ戴冠式当日を迎えて、新政府の会議に加え今日の準備もやってきて、ミナ達は既にヘトヘトだ。
「官房長官」
「はい、なんでしょう」
アンジェロの営業スマイルに激しく違和感を感じるが、視線が
「忙しいんだからさっさと用件言え」
と言っているので、話を続けた。
「あのですね、藩属国の王や、他市の市長達も首都に入られたようです」
「そうですか。ではお迎えする準備をしましょう。控室の用意は済んでいますか?」
「はい。大丈夫です」
「そうですか。お迎えには私と太政大臣が参りますので、城に到着されたらすぐに連絡してください」
「はい、わかりました」
数日前から続々と藩属国の王や、支配下の市長や代官、関所の提督なんかが入城している。
以前は当然他の地域でも、アスタロトの息のかかった者や悪魔がそれぞれ領主として置かれていたが、アスタロトがいなくなった時に、VMR全土から悪魔が消えてしまった。
当然大混乱に陥って、その地域は無政府状態になってしまったわけだが、告知と共にその件にも言及してあった。
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悪魔はこの国から消えた。市民たちで推薦する人物を長として立てるように。尚、国や地域での独立は認めない。VMRに臣従の意志を示すのなら戴冠式に来られたし。
独立し、国を名乗っても構わないが、不服従であるのなら、否が応でも侵略し服従させるのみ。
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厳しいようだが、これも国を守るためだ。小国はあるにはあるが、藩属としている。実際小国にしても藩属の方が都合がいい事はある。いざ戦争など起きた時に、大きな後ろ盾があることは強みになるからだ。経済が逼迫した際にも支援してもらえる。
独立を考えたところは少なからず存在するだろうが、これほど広大な国を支配していた悪魔を追い出すほどなのだから、大人しく従った方がよさそうだ、と考えるのが常套だ。
とりあえず戴冠式に列席して、新国王がどんな奴か品定めをして、大したことがなさそうならあわよくば、と言ったところだ。
やっとの事で全員が来場して、アンジェロと山姫のエスコートで賓客が謁見の間に通されるのだが、その前に客達はまずこの出迎え二人に驚く。
―――――なんと美しい女だ!
―――――ま、いい男。
―――――珍しい服を着ている。なんと雅な繕いだ。
―――――あの靴はツヤツヤして、何でできているのかしら。
そんな感じでまずは服装や容姿に驚く。続いて、謁見の間に続く回廊に驚く。
―――――あ、灯りが勝手に点いた!
―――――魔法かしら。便利ね。
―――――火、ではないな。なんだこの明かりは。
とりあえずセンサーライト(LED)に驚く。
謁見の間に辿り着くと、今度は衛兵に驚く。
―――――そういえば、王宮内の衛兵達は誰も武装していない。なぜだ?
―――――兵を武装させないなんて、無用心ではないかしら。
そんな不安を抱きながら謁見の間に通される。
「陛下、アディルフ国王オアク1世陛下とロテ王妃がおみえになりました」
アンジェロに促され、跪こうとする賓客は息を飲む。
―――――なんと強大な魔力! これは、確かに兵の武装など不要だ。
―――――まぁ、素敵な殿方。悪魔もこの美貌には息を飲んだに違いないわ。
―――――あちらはただ座っているだけなのに、自然こちらが下だと認めざるを得ない威圧感がある。
そうして自然と賓客達は膝を着かされるのだ。
「遠路はるばるようこそお越しくださった。私が新国王のドラクレスティだ」
「あ、アディルフ国オアク1世、妃のロテと申します。この度はお招きいただき、至極喜悦に存じます。この度はドラクレスティ陛下ご即位のこと、お喜び申し上げます」
「まぁ、そう畏まらずとも良い。式典まではまだ時間がある。ゆっくりと旅の疲れをとるがよい」
「はは、ありがたき幸せに存じます」
「ヴァルブラン副大臣、ご両名を貴賓室に案内しろ」
「畏まりました。では、どうぞ」
―――――まぁ、可愛らしい! こんな息子が欲しいわ!
とりあえず謁見の間では、最後にレミに驚く。
続いて、レミの案内について行って通された貴賓室。とりあえず蛍光灯に驚く。少しするとアミンと共に女性陣が料理や飲み物を持って来るのだが、それにもいちいち驚く。
―――――こんなに綺麗な料理、初めて見たわ。
―――――この食器は何でできているのだろう。
―――――美味しい! 肉? よね? しつこくなくてさっぱりしていて、いくらでも食べられそうだわ!
―――――なんとも深い味わいだ。このような調味料があったか?
この国には塩や砂糖、胡椒くらいしかない。それらをブレンドしたり、発酵させたりだのと言う発想はまだないらしい。
ちなみに客たちが肉だと思っているのは豆だ。この辺は、大勢の客の為に高価な肉など大量に買う必要はない、というアルカードの指示によるものだ。
アルカードの方針の一つとして、
「贅沢は敵だ」
と言うのがある。自分達は勿論、国賓に対してでも徹底してケチでいく。ケチっぽく見えない工夫さえすれば何とかなるものだ。
なぜケチで行くのかと言うと、これらの式典やもてなしにかかる交際費も、結局は税金だからだ。
客に対して大枚をはたいて、いわば接待をするのはアルカードは嫌いらしく、交渉にやる餌は何も金でなくても良いと考えている。
例えば国防の条約であったり、支援であったり、場合によっては独立を許したりなど。
権力者が金遣いが荒い事は絶対的な悪だというのは世界の常識だ。無駄遣いしたぶん、補填の為にさらに税金を徴収しなければならないし、急な増税は負担だけでなく不満も募る。
為政者はケチであるべし。伊達に普段からミナに
「アルカードさんのケチ!」
と言われてはいない。
後になってアンジェロからそう解説されて、「なるほどぉ」と感心する吸血鬼達。
「てことは、私達の腕の見せ所だね」
「安い食材でいかに美味い料理を作れるか!」
「安い食材をいかに豪華に盛り付けられるか!」
「マニくんたち! 味見よろしくね!」
「・・・・・もう、入りません」
マニと、マニの友達が味見役として王宮に呼ばれた。タダでご馳走がたくさん食べられると意気揚々とやって来たのだが、あまりの量に既にギブアップのようだ。
ミナ達は生活習慣強化をしているのだが、山姫の一族は強化をしていない為、食事を食べることができない。この間の山姫一族たちの食料は、第3次元から持ってきた血を飲んでいたのだが、それはとうに底をついている。
では、どうやって食料を調達しているのか、と言う事になるが、ここはもう、アンジェロとアルカード様様である。
「私達にもお手伝いさせてくださいまし」
「勿論、銀子などいりませぬゆえ」
そう言って、告知を見た市民たちが城門前に押しかけて来たのだ。それを聞いたアルカードは、手伝い自体は断った。王宮の中に無闇に部外者を入れるのを良しとしなかったからだ。
その代わり、執務殿入口まで通された市民たちに、厚生大臣柏木が言った。
「実は、我々は全員吸血鬼なのです。我々は血液がないと生きてはいけません。今後、この国があなた方に課す税は、以前よりはるかに減っていくこととなりましょう。その代り、私どもに定期的に継続して血液を提供して戴きたい。当然、殺したりなどは致しません。少量の血液をたくさんの方々から戴きたいのです。ご了承いただけました方には、優先的に減税させていただきます」
驚いた市民たちだったが、少量程度で減税してくれるのならば、とすぐに手続きに入り、医者たちにより注射針で血を抜かれて行った。
おかげで血液を調達できることになったし、手続きの際に住所と氏名、家族構成なども聞き出せたので、市民の調査も進んで一石二鳥だ。
ちなみに人間以外の種族の血液を受け付けるかどうか、と言うのは議員や兵たちに協力してもらって確認済みだ。
「ディアリのは、なんかジューシー」
「ゴブリンのはなんや炭酸入っとるな」
「エルフのは苦いなぁ」
「ウチはコレ好きやで」
「じゃ、エルフは榧専用な」
「なんでやねん! コレばっかりはキッツイわぁ」
「ハーフエルフ(人間との混血)のは普通にうめぇ」
「ドワーフのは?」
「濃厚でウマイで!」
「どうでもいいけど、升麻と榧の訛りが気になる」
「やかましいわ!」
それぞれ味の違うジュース的感覚のようだ。忍者集団“朧月”の隊長の升麻と副隊長の榧は甲賀出身(現在の滋賀県)なので関西弁だ。
ここに来る前に山姫一族たちにもこちらの言語は勉強させていたのだが、この二人はまんまと自分たちの好きなように変更してしまったようだ。
というわけで、突然だが戴冠式だ。
アンジェロの時同様、アルカードは献上された真っ赤なパンダルメントウムを羽織り、金メッキの施された杖を持った。
ミナ達もドレスコードに着替え、アンジェロは黒のパンダルメントウム、山姫は白のパンダルメントウムを羽織り、城壁のテラスに立った。
テラスには、既に賓客たちが並んで座っている。アルカードが出てくると、一斉に席を立った。その瞬間、城壁の外で待ち構えていた市民たちから歓声が上がった。
城壁の外の広場から溢れ出るほどの市民たち。見渡せば街道や家々の屋根の上にまで登って城壁に向かって手を振っている。
「新国王だ!」
「ドラクレスティ陛下!」
「ドラクレスティ陛下万歳!」
「国王陛下万歳!」
民衆の声は地鳴りを響かせ、建物を揺らす。その圧倒的な声量と圧巻の光景に、ミナは息を飲んだ。
全身が総毛だって、鳥肌が立つ。歓声に思わず竦んでしまう。指先が震える。
「王位の交代は一体何百年ぶりだったのか知らないが、どうやら歓迎されているようだ」
アルカードがテラスの縁まで進み出ると、一層歓声が上がる。アルカードは笑顔で城外の市民に手を振って、声援にこたえる。その様を見て、思った。
―――――あぁ、アルカードさんは本当に、この姿が本来あるべき姿なんだ。
聞いていたのか、振り返ったアルカードがクスッと笑った。
「私が国王になっても、お前達が何になっても、私がお前達のマスターで、お前達が私の血族であることに変わりはない」
その言葉に、ひどく安心した。見抜かれていた。アルカードの姿を見て、アルカードを遠くに感じたこと。
アルカードは国王になってしまったから、もう人前で以前の様にお喋りすることはできない。アルカードに纏わりついて喧嘩をしたり、アルカードとアンジェロがケンカするのを止める事もない。
今まで当たり前だった光景が、これからは見れなくなってしまう。そう思って、淋しく思った。
だが、アルカードは変わりはないと言った。アルカードの言葉には、立場上の変化はあれど、血族と言う関係はその事実だけでなく、家族としての心の繋がりには何も変わりがないのだと言ってもらえたような気がして、嬉しくて、涙がこぼれた。
その様子を見て、アルカードは呆れたように笑っている。
「何も泣くことはないだろう」
「だって・・・」
「いつまで経っても、お前の泣き虫は変わらないな」
「いつも、陛下が泣かせるんじゃないですかぁ」
いつもミナは泣いてばかりで、そんなミナにアルカードは呆れて笑って茶々を入れる。それは出会った頃から変わらない。勿論、これからも。
アルカードが国王になってしまって、今までとは何もかもが変わってしまった。
だが、変わらない関係と変わらない思いが、山姫の手から王冠を授けられ、戴冠し王に立ったアルカードへ、割れんばかりの拍手を送らせた。
アルカードとミナの様子を見て、アンジェロは密かに胸が痛んだ。
―――――あぁ、俺はいつもミナを泣かせてしまうのに。やっぱり、傍にいて本当にミナの為になるのは、俺じゃぁないんだ。
つい、そう考えた。昔から思っていたこと。ミナが傷ついているとき、それ以上泣かせたくはない。元気を取り戻してあげたい。だけど、アンジェロにはなかなかそれが上手くできなくて、いつも思った。
自分ではアルカードの代わりにはなれない。アルカードに当たり前にできることが、自分には出来ない。自分は、ミナにとって役立たずだ、と。
当然それも聞こえていたアルカードは、戴冠式を終えて議会を招集する前に自室に戻り、アンジェロを呼んだ。
「なんだよ?」
人払いをして、二人で話すのは久しぶりだった。脳内会議は別として。
「自分が死ぬときの事を考えて、その下準備をしておくのは年寄りだから殊勝なのであって、若造がそれをしてしまえばただの自殺志願者だ」
お説教が始まったと思って、アンジェロは溜息を吐いて、勝手に椅子に腰かけた。
「なんだよ、俺の死後はアンタにミナくれてやるってんだから、いいだろ」
「後で寄越すなら今寄越せ」
「ヤダ」
「ならばそのようなことを考えるべきではない。大体、お前にはやってもらわなければならないことが、まだまだ山ほどある。今死なれては私が迷惑だ。私から戦力外通告を出すまでは、死ぬ事は許さん」
「結局はアンタの都合かよ・・・・・」
はぁ、と溜息を吐いて頬杖をついたアンジェロだったが、会話を思い出して、ハッとした。
アルカードは、ミナを寄越せと言った。それは、暗黙の内にミナがアンジェロのものであると、アルカードが認めてしまっているということ。
「ミナは、アンタの眷属で、所有権があるとしたら、アンタだろ」
「そうだ。だが、わかっていないようだが、それはお前にも言えることだ」
それを聞いて、考え込むアンジェロ。
アルカード
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ミ ナ―――――アンジェロ この構図は間違い。
アルカード
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__________
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ミ ナ アンジェロ これが正解。
「あ、そっか。そう来たか」
結局はミナとアンジェロが夫婦だとしても、どちらもアルカードに所有権があるという事だ。
「お前達は二人とも私の下僕だ。それを忘れてもらっては困るな。お前達には、お前たち自身に生死を決定する権限はない。生殺与奪の権は私にある」
「あーハイハイ、アンタの為に生きて、アンタの為に死にますよ」
「当然だ。そう言う契約だからな。それ以外の理由で死ぬ事は許さん。それは・・・」
「許されざる裏切りだな」
アルカードの言葉を断って言を繋げたアンジェロに、アルカードは機嫌を悪くしたようだが、アンジェロはニヤニヤと笑った。
そこに、ミナが茶(血)を持ってきた。話があるから、とミナも同席を許された。
「一仕事終えた後の血ってうめぇ。煙草吸っていい?」
「ダメだ」
「んだよ、嫌煙者。腹立つ、死ね」
「お前が死ね」
「さっきと言ってること違うんだけど」
「茶を濁すような奴は死んでいい」
「茶の為に死ねってか」
「安息の時間は貴重な財産だ。それを邪魔する者は全員死ねばよい」
「いつも何もしねぇ癖に・・・・・」
椅子に座って二人が血を啜る様を見ていたのだが、ふと思った。
―――――あ、すごい。初めて見た。これ、マッドティーパーティだ。
それを聞いてアルカードは吹き出しかけた。不思議の国のアリスで、アリスが招かれたお茶会、マッドティーパーティ。
お茶会のメンバーは三月ウサギとイカレ帽子屋とドーマウス。
三月ウサギとイカレ帽子屋は不思議の国の住民のため、訳の分からないことしか話さない。アリスには全く意味が分からないし、意地悪くされる。
―――――あ、すごいや! 三月ウサギに変な帽子を被った帽子屋! あ、スゴイ、ぴったりだ!
ミナは一人で興奮したが、アルカードは溜息だ。
「これは変な帽子ではなく王冠だ」
「だって、マッドティーパーティならイカレ帽子屋じゃないですか」
「誰がイカレ帽子屋だ」
「アンジェロ、ウサギさんって白兎じゃないんだよ。三月ウサギのがしっくりくるよ。アンジェロは三月生まれだからイカレてんだね」
「何言ってんだお前」
「それにほら、アリスが言うじゃん。「三月ウサギの方がずっと面白そうだし、それに今は五月だから、むちゃくちゃに気が狂ってる、ってことはないよね――少なくとも、三月のときほどじゃあない」って! アンジェロも3月ごろは仕事始めたばっかりでキリキリ舞いなってたもんね!」
「・・・・・だから?」
「アルカードさんはマッドハッターで、アンジェロはマーチヘアなの!」
「ならばミナはドーマウスだ」
「やですよ! アリスがいいです!」
「ほら、ミナ、こっち来い。ティーポットに詰め込んでやっから」
「ヤだよ!」
結局キチガイにやり込められるのも、変わらなそうだ。




