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コントラクト 3 ―宿命の契約―  作者: 時任雪緒
第3章 歴史が語る三位一体
51/96

命長ければ辱多し

 吸血鬼インジャパン。帰ってきた日本。

 2か月かけての世界一周は、最後にデカイお土産付きで有意義なものだった。

「こちら、アミンちゃんです。ベトナムから連れて来たんです」

「あはは、また増えたのね。私は山姫よ。あっちは私のファミリー。よろしくね」

「どうもよろしく! すごーい。吸血鬼がいっぱいだ!」

 これまで一人で淋しく暮らしていたアミンは、大勢の吸血鬼がいることに大層喜んだ。


 ミナ達が旅行に行っている間に、山姫たちの出国準備も済んだようだ。シュヴァリエ達の棺も作ってくれていて、アミンは土や棺を必要としない(休眠期どころか睡眠がない!)らしいので、このままでもいいらしい。

「あぁ、本当に、今日は佳き日ね。宴の準備をしていて正解だったわ」

 ミナ達が集まった広間には宴会の準備がしてあった。宴会のお題目は

昴くんすばる翼くんたすく14歳の誕生日、第3次元お別れ会、龍の614回忌、ついでにクリスマス」

 となっていた。更にアミンの歓迎会を付け足される横断幕と、山姫一族の格好を見て、アルカードは複雑そうだ。

「614回忌・・・・・これは、お祝いなんでしょうか」

「・・・・・わからん。道理で全員黒服のはずだ」

 山姫たちの一族は、全員男は黒のスーツに、女は黒のワンピースで身を固めている。喪服のつもりか、と複雑な心持はしたが、そんなこと気にも留めず、宴会はスタートした。



 少しすると、ミナとアルカードの所にアミンが寄ってきた。

「ねぇミナさん、この方が噂の伯爵?」

「あれ? アミンちゃん初対面? アルカードさんが起きた時会わなかったの?」

「会ったことないよ」

「私が起きてトリンとツァンに会った時は、既に娘が死んだと聞いた」

「あー、入れ違いになったんですね。この人が伯爵、アルカードさんだよ。みんなは伯爵って呼んでるけど、まぁなんでもいんじゃない」

「お前・・・後で覚えておくがいい」

「ヒッ、ごめんなさい! 冗談です! 敬意を表して呼んで!」

 怯えたミナはそう言ったものの、よく聞いていたら本当に呼び方はバラバラだ。敬意も何も統一感が欲しい。とりあえずアルカードには敬語を使った方がよさそうだとは考えたようだが、命名には悩んでいる御様子だ。

「アルカードさんっていうのは?」

「通称かな?」

「ヴラドっていうのは?」

「本名だけど、それはアルカードさんは嫌がってる」

「じゃぁベストは伯爵?」

「うーん、かなぁ?」

「ていうか、旦那様って、誰の旦那様?」

「・・・独身貴族だよ」

 余計に頭を捻るアミン。そこへリュイがやって来た。

「アミンちゃん、私の事覚えてる?」

「うん。ミナさんとアンジェロさんの結婚式で会ったよね! 名前は忘れた!」

「しょ、正直者だね。私リュイだよ」

「よろしく! ていうか、リュイは吸血鬼?」

「そうだよ。双子に噛まれちゃって」

「あっはっは。ドンマイ!」

「この件でそんな軽く流されたのは初めてだよ・・・・・あぁ、じゃなくて。旦那様って言うのは、お嬢様のボスだから旦那様って呼んでるだけで、深い意味はないんだけど」

「お嬢様って、ミナさん?」

「なんか私、最初お嬢様があの屋敷のお嬢様って思い込んでてさ、なんかもう癖になったからずっとそれで行こうかと」

「お嬢様、なんかウケる。じゃぁ私もお嬢様、旦那様で行くわ・・・・・となると、アンジェロさんは、なに?」

「普通にアンジェロさんて呼んでるけど、おかしいかな?」

「お嬢様の旦那様はアンジェロさんなわけじゃん? なんかおかしくない?」

「えー? じゃぁアンジェロさんが旦那様? じゃぁ旦那様はどうなるの?」

「お館様とか?」

「重々しいよー」

「うーん、じゃぁ旦那様は旦那様でいいじゃん。アンジェロさん変えれば」

「なにに?」

「アンジェロさんも旦那様の下につく眷属なんでしょ。ならコレしかない! 若様!」

「Oh! 若様! その手があったね!」

「じゃぁ旦那様、若様、お嬢様で決まりね」

「それで行こう!」


 決まったようだ。女子二人の会話に呆気にとられるアンジェロを見上げた。

「また新しいあだ名が増えたね、若様」

「若くもねぇのに若様って、おかしくね?」

「アルカードさんから見れば随分若いんだから、いいんじゃない?」

「いや、俺的に微妙って言ってんだけど」

「坊ちゃんよりはマシでしょ」

「・・・若様を思いついてくれて良かった・・・!」

 坊ちゃんと比較したら遥かにマシだ。不幸中の幸いに、アンジェロは不本意ながら安心を覚えた。

 話を聞いていたシュヴァリエ達は早速アンジェロをあだ名で呼び始めた。

「若様」

「若」

「若」

「バカ」

「誰だ! 今バカつった奴!」

「誰もそんな事言ってないよ、バカ様」

「レミ! テメェ、ブッ殺すぞ!」

 新たに妙なアダ名に進化した。


 ついでに古いタイプの日本人が多い山姫一族も、早速ミナ達を肩書きで呼び始める。

「お嬢、御無沙汰してます」

虎杖いたどりさん、久しぶり・・・ていうか、お嬢て」

「若、御無沙汰してます」

「なんで苧環おだまきまで・・・」

「お嬢」

「若」

「お嬢」

 周りは調子に乗って、なんだかもうそれで決定してしまったようだ。

「なんかヤクザみたいなんだけど!」

「ヤクザ・・・・ジャパニーズマフィアか。ある意味マフィアっちゃぁマフィアだけどよ」

 ミナとアンジェロはヤクザ一家の気分を味わった。



 が、肩書としてはヤクザよりも貴族よりも、提督の方がはるかに上だ。本人も何故そう呼ばれるようになったのか定かではないらしいが、提督・山姫がパチンと指を鳴らすと、パソコンやらカメラやら、重々しい機械が大量に運び込まれてくる。

 その様子を不思議に思って見つめていると、待ってましたと言わんばかりにアンジェロとアルカードは山姫の所に行って打ち合わせを始めて、ミゲルとレオナルドとエドワードも呼ばれて何やら相談を始めた。

「え、お嬢様、何が始まるんでしょうか?」

 リュイが尋ねてきたが、ミナは何も聞いていない。

「わっかんない。またあの二人は、なんかわけわかんない事企んでるね」

「旦那様と若様、好きですねー、そういうの」

「本当だよ」

 半ば呆れつつ様子を見守っていると、ミゲルと山姫の部下数人は数十台のパソコンに向かい、数台同時にものすごいスピードでカタカタ打ち始めて、照明や音声、カメラの調整の準備が始まり、レオナルドとエドワードは台本らしきものを暗記し始めた。

「マジ、何が始まるの」

「めくるめく大イベントの予感はしますね」

「宴会じゃなかったっけ」

「宴会って言う肩書だったんでしょう」

「・・・あぁ」


 眺めていると、ミナ達にも声がかかって、男女別に分かれて別の部屋に通された。

「「さ、これに着替えてくださいまし!」」

 山姫の付き人の双子の姉妹が指差した先には、山姫一族同様、黒のワンピースがかけられている。急遽用意したのか、ちゃんとアミンの分まである。それぞれ名前が書いた紙が貼ってあって、ちゃんとサイズも揃っているようだ。

 昼顔と夕顔も黒いワンピースを着て、今日のリボンは赤と白で色分けされていて、わからない。

「えーっと・・・白の方がひーちゃん?」

「そうだよ!」

「おっ! 当たった!」

「カンだったの?」

「だって、わかんないよ。や、ていうか、なんで着替えるの?」

「「わかんない!!」」

 結局双子にもわからないらしい。が、ミナ達が大人しく従っておかなければ、後から昼顔と夕顔が怒られてしまいそうだ。

 理解も納得も出来ないまま着替えて、全員で着替え終わって戻ると、シュヴァリエ達も黒いスーツに着替えて戻ってきた。

「なんだろうね?」

「なんだろうなぁ。葬式?」

「葬式にしては、このワンピースはおかしくない?」

「・・・確かにな。ミニ丈っておかしいな」

 クリスティアーノの指摘通り、ミナのワンピースはふりふりのサテン地のミニワンピだ。どう考えても葬式ではなくパーティ仕様だ。

「伯爵も若も、何考えてんだろうなぁ。お嬢は何も聞いてねぇのか?」

「聞いてない・・・ていうか、クリスもそっちで呼んじゃうんだ」

「飽きるまではな」

 早く飽きればいいのだが、慣れたら定着してしまいそうだ。何と言ってもシュヴァリエ達は妙に順応性が高い。そして楽しいことが大好きなので、妙なアダ名を付けられて複雑そうにするミナとアンジェロの様子を見るのが楽しみなようだ。


 しばらくすると、ミゲルが顔を上げて振り返り、山姫に言った。

「こっちは準備できました。後はエンターキー押すだけです」

「そう。さすがね。じゃぁみんな、カメラの前に集まって」

 何の準備ができたのか、ミナ達は首を傾げながら集まる。が、山姫一族たちはわかっているのか、ポジショニングまで確認している。

「ハイ、提督と伯爵は真ん中で、お嬢と若はこちらに」

「シュヴァリエの皆さんはこちらに。おい、お前達、はみ出てる。もっと寄れ」

 虎杖と苧環に並ばされて、いよいよ意味不明なミナ。更にカメラに映るように、全員に光学迷彩を施すように言われて、ますます意味不明なまま、言われたとおりにする。

「カメラOK」

「照明、音響、音声OK」

 確認を取ると、虎杖がミゲルに合図をして、ミゲルと山姫の部下数人が次々にエンターキーを押していく。

「衛星、アジア圏完了」

「北アメリカ、南アメリカ完了」

「オーストラリア完了」

「ロシア完了」

「中国完了」

「東欧完了」

「オリエント完了」

「インド完了」

「北欧完了」

「西欧完了」

「南欧完了」

「アフリカ完了」

「フィンランド完了」

「イギリス、アイルランド完了」

「各国国営放送完了」

「有線放送完了」

「地上波完了」

「ネットセキュリティ突破」

「完了まで5・4・3・2・・・」

「全世界ネットハッキング完了」

 次々にハッキングされる衛星や電波。驚くミナ達はほったらかしで、首謀者たちは満足げだ。

「さぁ、皆様背筋を伸ばして。世界同時中継ですよ」

「はぁぁぁぁ!?」

「ではカウントいきます。5・4・3・・・・!」


 指で合図をする苧環のカウントが「GO」になった瞬間、何故か「渡る世間は鬼ばかり」のイントロが流れ出し、傍に置いてあったテレビに、ミナ達の姿が映し出された。

(この選曲はおかしい!) 

 と、狼狽えるミナ達の前に、急にエドワードとレオナルドが飛び出した。

「ハーイ、世界の皆さーん、コーンバーンワー」

「あるいはコーンニーチワー」

「全世界同時中継、ヴァンパイアナイトフィーバーの時間だよー!」

「チャンネル変えたってムダムダ!」

「電波はぜーんぶ俺らでジャックしちゃったぜ!」

「司会は俺、レオナルドと!」

「俺、エドワードでお送りしまーす!」


 どこにも放送しないラジオパーソナリティの真似事を最大限に生かした司会だ。呆気にとられるミナだったが、その頃のインド。

「レオ、エド・・・?」

「何、してるのかしら・・・あの人達」

 テレビの中では見知った吸血鬼達が呆然として、レオナルドとエドワードが画面上で大ハシャギしている。

 呆気にとられるクリシュナとエリザベス。その頃北イタリアの別荘では。

「ブバッ! なにやってんだぁぁぁ!」

「うおぉぉ! あの人達!」

「ウソっ! どの局も同じ放送してるし!」

「マジ、マジ、何なのこの人達!」

 泥棒たちは驚きのあまり、飲んでいたコーヒーを吹き出した。チャンネルを変えてみても、全く同じ映像が流れている。

 傾いたカップからダバダバと零れるコーヒーも気にならない。驚いてテレビにかじりつく泥棒たちの一方、南イタリアではボトルが割れた。

「ジョヴァンニ! 痛!」

「なんで、テレビ出てるの? あら、あなた、ごめんなさい」

 マキァヴェッリオリーブ特製、最高金賞の高級品、エクストラヴァージンオリーブオイル“フォレスタ”を取り落し、嫁が割ってしまった。

 驚いて椅子から立ち上ったジョヴァンニは、オイルを踏んで転んだ。その頃イギリスでは。

「ぎゃぁぁぁ!」

「キース!? なんで!?」

 ヘルシング一族は大騒ぎだ。テレビに映るはずのない吸血鬼がテレビに映り、しかも電波と言う電波、全てジャックしている。

 あまりにも大胆不敵すぎて、興奮してしまったバーソロミュには内容が聞こえない。仮に宣戦布告だとしても、関与したくない程だ。


 全世界とミナ達の驚きをものともせず、順調に司会を進める二人。

「世界中のいい子たち、録画の準備はOK?」

「これが最初で最後だ! 重大発表満載だから、見逃したら後悔するぜ!」

 やっとのことで渡鬼の曲が終わって、今度は何故かT.O.Kのアンノウンランゲッジ。

「・・・選曲が・・・現代の人知らないよ」

「なんで渡鬼からのレゲエ?」

 呆れるミナ達はほっといて、画面ではVTRが流され、相変わらずハイテンションの司会が解説をしている。

「みんなも見たことあるんじゃないかい?」

「これはエンジェルウイルスだ!」

「あらゆる経路から感染して、致死率100%を誇る悪魔のようなウイルス、エンジェル!」

「みんなも不思議に思っただろ?」

「なんで急に世界にこんな病気が広まったか!」

「それを広めたのは・・・・」

「「コイツらだッ!!」」

 で、画面が切り替わり、映し出されるミナとアンジェロ。呆然とするミナと対照的に、アンジェロはニヤニヤしている。

「諸悪の根源はこの夫婦!」

「ミナとアンジェロ! みんなー! 覚えてねー!」

「え、ちょ」

 狼狽えるミナを尻目に、相変わらず二人はハイテンションだ。その頃ベトナムでは、ミナ達にいろいろ教えて案内してくれた研究者たちが、パレットを割っていた。

「・・・・どゆこと?」

「まさか、保菌者!?」

「って、おま、あー! 折角培養したのに!」

「あぁっ!」

 2週間分の資料をパァにして嘆く研究者たちの気も知らず、順調に放送は進む。



「説明しよう! なんでこの夫婦がウイルスを広めたのか!」

「VTRスタート!!」

 レゲエの曲が終わって、何故かピコピコした曲が流れ始める。

「・・・なんでパフューム?」

「だから知らないって・・・」

「ていうか、アニメて」

 流しも流したり。アニメは45分に渡る長編だ。ミナ達とアンジェロ達が出会った頃から、バッチリ正体も明かして、戦争からインドへ渡った後、アンジェロが悪魔と契約して現在に至るまでをピックアップしてアニメ化している。

 参考資料はレミの書いた報告書のようだ。微妙に忘れていたことまで映像化されている。そしてアニメを見てリュイだけが興奮している。

「可愛い! 男性キャラカッコいいですね! これ、キャラデザ誰がしたんですか? 旦那様役の声優さん素敵!」

「それ、どうでもいいじゃん」

「マジで。なにコレ、何なのコレ」

「つか、俺らが旅行してる間、アニメ作ってたわけ?」

 どうもそのようだ。ちなみに声優は山姫の部下から声の似た者や特徴的なメンバーと、立候補者から選出された。


 アニメが放送されている間もミゲルはパソコンに向かっていたのだが、大笑いしながら呼んだ。

「見て見て、ツィッター大炎上」

「うわ、この放送の事ばっかり!」

「“伯爵とジュリオ萌え”、“二人のBL展開に期待”・・・世界にはヘンタイしかいないのか」

「“ミラーカの女教師コス希望”・・・バカばっかりだわ!」

「ドS愛好者の間で伯爵派と若派に分かれだしたぞ」

 ツィッターではガンガン新たに放送に関する(どうでもいい)投稿がされて、ついには負担が重くなりすぎて、画面が表示されなくなった。


 アニメが終了して、映像がスタジオ(という名の宴会場)に帰ってきた。

「とまぁ、こういうことがあったわけだ!」

「色々あったよなぁ。大変だったんだよなぁ」

「マジマジ! さぁ、ここで視聴者の皆さんから寄せられたメールをご紹介!」

「アメリカにお住いの“ドーナツは劇薬”さん! 素晴らしいネーミングセンスだね!」

「ダラスの空港の警備員じゃない?」

「かもね」

「なになに? アニメ自体は普通に面白かったけど、信じられるわけねーだろ! それもそうだよねー!」

「他のメールも、まぁそんなんだ! アニメ自体は悪くないけど、信憑性に欠けるってのが大半だ!」

「・・・とりあえず、アニメ自体は高評価なんだな」

「なんかもう嫌になって来たよ。まだ終わらないの?」


 ゲンナリしてきたミナはフルシカトで、突然曲が山田耕筰の「荒城の月」に変わり、司会はアレクサンドルを引き立てた。

「イッツ・ショータイム!」

「俺達化け物どもの超能力、とくとご覧あれ!」

「このノリで荒城の月っておかしいよね」

「プロデューサー、誰?」

「いや、ディレクター?」

「もう、わからん。わけわからん」

「トップバッターは、アレクサンドル・ミッテラン! 彼の能力は」

「「トランスフォーム!!」」

 合図に載って、アレクサンドルは現在のアメリカ大統領に変身した。

「Yes,We Can!」

「あっはっはっは!」

「アレクそれ違ぇーし!」

「スゲェ古いの持ってきたな!」

 なぜか盛り上がり始めるシュヴァリエ。


「続いて、ヨハン・シュトレーゼマン! 彼の能力は」

「「アナリシス(解析)!!」」

 言われてヨハンは用意された精巧な時計の部品を集めて、あっという間に組み上げた。

「ブラボー! メカニック!」

「ヨハン、ブラボー!」

 続いて司会は振り向いた。

「アミン! アミン来て!」

「分離、やって!」

「えー、でもグロイよ」

「グロく無くやって!」

 言われてアミンは、胴体から首を切り離した。

「怖えぇ!」

「血出てるし! グロいよ! 子供泣くぞ!」

「ていうか、痛くないの?」

 首をスポンと戻したアミンは「痛くないよ」と首を横に振った。今度はミナが腕を掴まれて、前に引き立てられた。

「彼女が噂のミナ・ジェズアルド!」

「伝説の吸血鬼の眷属なだけに、たくさんの能力を持ってるぞ!」

「その一つを見せてもらおう!」

「え、えぇー・・・」

 今すぐ逃げ出したい。そんな衝動に駆られるも、雰囲気がそれを許してくれそうにない。火を出すとアミンが怒りそうなので、羽根を出すことにした。

「揚羽蝶の羽根! 綺麗だろ!」

「お嬢は飛べるんだぜ!」

「つか、場所取るな、この羽根」

「被ってるし、ウザい」

「ウザい、この虫」

「虫」

「虫言うな!」

 渋々出してやったのに、何故か文句を言われて渋々羽根をしまった。


 その後も紹介される能力。

 クライドのグラヴィテーション(重力変化)

 ミゲルのハッキング

 双子のサイコキネシス

 レオナルドの魔弾の射手

 などなど、目で見て確認できるものを紹介された。

「山姫さんもなんかやってくださいよ!」

「えぇ、いいけど・・・」

 言うが早いか、山姫は巨大化する。

「スゲェ!」

「デケェ!」

「提督、画面から切れています」

「あら」

 虎杖に言われて、山姫はすぐにスルスルと元のサイズに戻る。

「伯爵、犬出してくださいよ、犬!」

「えー、ヤダよ! あの犬怖いもん!」

「お嬢のビビり!」

「うるさいな!」

「ハァ、仕方がない」

 アルカードも3匹の黒犬を出した。それを見るのは初めてだったリュイ達は感嘆の声を上げた。

「すごーい! カッコイイ!」

「ていうか、怖い! 超獰猛!」

「バスカヴィルだ。可愛いだろう?」

「可愛くないですよ。マジキモイ」

「・・・アミン、お前正直すぎるぞ」

 バカ正直なアミンに気分を害したアルカードはすぐに犬を引っ込めた。その間ミナはアンジェロの陰に隠れて、犬に怯えていた。



「ねっ、俺らが化物だってよーくわかっただろ?」

「俺ら化物だから、撃たれても死なないし、すぐ治るんだぜ! 痛い!」

 すぐにアンジェロがレオナルドを撃った。

「・・・ね? でも痛いんだけど!」

「つか、普通撃つか?」

「撃つ」

 撃つらしい。撃たれたレオナルドは肩を押さえて痛そうにして笑っている。さすがに銃撃されるのはいい加減慣れたようだ。

「俺らみたいな化け物がいるんだから、悪魔がいるってのもわかってくれたかなー?」

「世界平和を願ったのに、悪魔のせいで絶滅寸前! さすが、悪魔は考えることが違うぜ!」

「というわけで、俺ら元々神父だし?」

「人間のみんなには迷惑かけたし?」

「これから悪魔退治してくるぜ!」

 そしてまた、急にミナとアンジェロは引き立てられる。

「ハイ、最後に諸悪の根源の二人にコメントしてもらおう!」

「え、えぇ」

 急に言われてもどうしたらいいかわからずモジモジしていたが、カメラはバッチリミナとアンジェロに向けられて、しかもアップで映し出されている。仕方なく口を開いた。


「えっと、あの、人間の皆さん。私のせいで病気にしちゃって、本当にゴメンなさい。謝ったって亡くなった人が帰ってくるわけじゃないってわかってます。だから、せめてもの罪滅ぼしに、悪魔を必ず倒します。そして、エンジェルウイルスの絶滅を願う全ての人が、これからも平和な世界を維持してくれることを願って、私はこの世界に、エンジェルウイルスの研究の全てを残していきます。私の研究の中には、世界にはまだ未発表のものがたくさんあります。ウイルスの進行を抑制し、時間はかかりますが、ウイルスを破壊するプログラムを組み込んだDNAを開発しました。まだまだ発展途上で、実用性は低いし、数も少ないです。ですが、それらをウイルスの根絶と、平和を願う全ての人が正しく使ってくれると信じて、正しい人の手に渡したいと思います。この研究をさらに昇華させ、将来この世界からウイルスが消えてくれることを願って、人間の優しい愛に、研究の全てを託したいと思います。人間の皆さん、本当に申し訳ありません」

 そう言って、アンジェロと二人、深く頭を下げた。



 そんなしんみりした雰囲気をぶち破る、ディズニーのエレクトリカルパレード。

「・・・だから、なんで?」

「ハーイ、というわけでお楽しみいただきました120分!」

「ヴァンパイアナイトフィーバーはこれでお別れです!」

「最後に、視聴者の皆さんにプレゼントのお知らせだよ!」

「まずは1番、ドバイの一等地にある500坪の別荘!」

「2番、アメリカは5大湖のほとりにある1000坪の別荘!」

「3番、プーケットの海沿いにある300坪の別荘!」

「4番、パリ、ロンドン、トルコ、オーストラリアへのペア旅行券をそれぞれ100名様に!」

「5番、現金1000万ドルを100名様に!」

「6番、90年型ロールスロイスを100名様に!」

「住所、氏名、年齢と希望の番号を書いて!」

「こちらにメールいただいた方の中から抽選です!」

「放送終了後30分以内の受付だよ!」 

「みんな、急げー!」

「当選は発送に変えさせていただきまーす!」

「みんなー、応募まってるからねー!」

 両手の人差し指を下に向けて笑う司会がそう言うと、エレクトリカルパレードは一層音量を増して、手を振る吸血鬼達から少しずつカメラが遠ざかり、少ししてカメラのランプが消えた。



「ハーイ、みんなお疲れぇい」

「スゲェ、俺ら全国ネットどころか、世界同時中継でデビューだぜ」

「俺ら超有名人なるんだろーなー」

 司会の二人は満足げだ。ミナとしては、気分は割と最悪だ。こんな放送をされてしまっては、異次元に行く前に買い物に行こうと思っていたのに、わざわざ変身しないと外にも出れない。

「世界中の人に謝罪できたのはいいんだけどさ・・・・もっと他になかったの?」

 アンジェロに問うと、小さく溜息を吐かれた。

「人間に真実を信じ込ませたいなら、こんくらいのことしなきゃ信じねぇだろ」

「既に終わったことだ。諦めろ」

 アルカードとアンジェロ二人がかりで諭されて、ミナも溜息を吐いて渋々引き下がった。

 ―――――まさに日陰者だ。もうこの世界で、スッピンで外歩けない。


 未だ盛り上がる吸血鬼がいる一方で、ミナと少数派の小心者はひどく落胆した。





★命長ければ辱多し

――――――――――兼好法師「徒然草」より

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