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コントラクト 3 ―宿命の契約―  作者: 時任雪緒
第3章 歴史が語る三位一体
31/96

行く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず

 結局悩んだ末に、山姫一族もミナ達に着いて来ることにしたようだ。当然ミナをはじめとしてボニーやクライドも大喜びだ。なによりオリバーが大喜びだ。

 オリバーは目を輝かせて山姫の手を取る。

「これから、ずっと一緒にいられるんですね」

「え、あ、えぇ」

「俺、やっぱり山姫さんのこと・・・」

「離しなさい」

 無理やり引き離し、オリバーと山姫の間に虎杖いたどり苧環おだまきが割り込む。当然オリバーはムッとする。

「いっつもいっつも、なんなんですか」

 腕組みをして睨むオリバーを、更に睨む虎杖。

「あなたでは提督に不釣り合いです」

「どういう意味ですか」

 イラつくオリバーに、今度は苧環が回答する。

「当然です。キャリアもなく、血統も薄い。伯爵の眷属ならともかく、一吸血鬼が出しゃばらないでいただきたい」

 さすがに見かねたのか、山姫が二人を制した。

「二人とも、言いすぎよ」

「申し訳ありません」

 山姫が秘書二人を窘めると大人しく退いたものの、言われたオリバーはさすがに怒ったようだ。

「フン、自分だってミナに不毛な片思いしてるくせに」

 苧環を睨みつけて言うと、即座に否定し、虎杖もフォローに回る。すると、今度は攻撃対象を虎杖に変えた。

「本当は虎杖さんが山姫さんに惚れてんじゃないですか。だから俺の邪魔するんでしょ」

「言いがかりはやめてください」

「本当に言いがかりなんですかねー」

 さらにケチをつけたオリバーに、お返しとばかりに今度は苧環がフォローに入る。

「誤解です。虎杖は義に篤い男なのです。あなたと違って」

 バチバチと火花を散らす秘書二人とオリバー。それに呆れる山姫。あまりの雰囲気の悪さに、当然ミナは双子と遊んでいる。


 さすがに見かねたのか、アルカードとミラーカが割って入って来た。

「その辺にしておけ」

「そうよ。あなた達がケンカして一番迷惑なのは山姫さんなのよ」

 諭されてさすがに反省したのか、それともしていないのか、3人は舌打ちして睨みつけつつその場から離れる。その様子を見ていた(ミナと双子以外の)全員で呆れて溜息だ。

「全く、困ったものだな」

「そうね・・・」


 アルカードとミラーカの溜息交じりの呟きを聞いていたアンジェロが、苧環の腕を掴んで耳元に口を寄せる。

「なぁ、本当のところ、虎杖、どうなんだ?」

 苧環が女だと思い込んでいるアンジェロは、オリバーのつけたケチはスルーしたようだ。

 アンジェロの質問に苧環も考え込むように宙を仰ぐ。

「さぁ、どうなんでしょう?」

「お前虎杖と付き合い長ぇんだろ? わかんねーの?」

「わかりませんね。提督には我々は滅私奉公が基本スタンスですから。それこそ長い間」

「あぁ、なるほど。ずーっとそうしてきたから、その態度が恩からのものか、愛かは測りかねるわけか」

「そういうことです。付き合いが長すぎて、かえってよくわかりません」

「そういうもんか? そう言えば苧環っていくつ?」

「536歳です」

「マジか! なんかゴメンな」

「いえ、年齢などさしたる問題ではありません」

 確かに苧環の言う事も一理ある。長い長い時を生きる吸血鬼は、姿形も変わらなければ、時間も気にしない。相手が自分より立場が上か下か、問題はそのくらいだ。

 ちなみにアンジェロの対応の基準は、気に入ったか気に入らないかで決める。なので格段に格上のアルカードに対してあの態度だ。

 苧環や虎杖の場合は秘書と言う立場上、ほとんどの相手に丁寧に(かつ冷徹に)接しているだけである。


 二人の話を盗み聞きしていたミナも割って入って来た。

「苧環さんってそんなに年上だったんですね。そんなに前って事は、戦国時代?」

「ええ」

「うわぉ、すごーい。織田信長とか知り合いですか!?」

「知り合い・・・というか、まぁ私も虎杖も織田家の傘下でしたね」

「マジ!? スゴッ!」

「あぁ、懐かしいですね。信長公が本能寺の変で死んだせいで私の方も陥落させられ、渋々豊臣に落ち延びたんです」

「豊臣秀吉! スゴッ! え、でもどうして死んじゃったんですか? まだ若いのに」

 年齢的には全然若くはないが、見た目は若い。

「豊臣に言われて九州征伐に行った際に、島津に討ち取られました」

「・・・・・・」

 それを聞いて黙り込むミナ。何故か気まずそうに目をそらす。

「どうしました?」

「・・・・ごめんなさい」

 なぜか謝罪している。意味不明な苧環に、ミナの思考を読んだアルカードが口を挟んできた。

「ミナの祖母は島津の末裔だそうだ」

「・・・・そうですか」

「あの、なんか、すいません。先祖がご迷惑を・・・」

「・・・いいえ」

 苧環と虎杖、生前は戦国武将だったようだ。ミナの祖先と言っても500年以上前だ。祖母の旧姓ですら既に島津ではなかったし、本家の家系でもないのでほぼ無関係と言っていいだろう。


「それより、ミナさんは日本人ですか?」

「あれ? 言ってませんでしたっけ?」

「初めて知りました」

 アンジェロと結婚していたこともあって、日系外国人だと思っていたようだ。ミナが純粋な日本人と知ると虎杖も会話に入って来て、日本トークでキャッキャと盛り上がる。

 その様子を見て、当然ジェラシーを燃やすアンジェロ。更にそれを見てほくそ笑むアルカード。少しの口論を経て、現れるレフェリー。以下略。

「またあの二人は・・・」

「もう、ホンットしょうがないなぁ」

「ていうか、ある意味元気だよね」

「マジで。よくあんだけのエネルギーがあるよ」

「普通疲れるよね」

「だよな。なんでいちいち絡むんだろうな」

「気が済まないのでは?」

「互いが気になって仕方がないのでしょう」

「まるで恋ですねぇ」

 ミナの呟きにアンジェロもアルカードもギッとミナを睨みつけ、その視線に思わず硬直した。

「だーかーらー、お前冗談は顔だけにしろって」

「全くだ。ミナ、お前は本当に口が過ぎるな。再教育の必要がありそうだ」

「マジで。そんなに泣かされてぇなら、望みどおり泣かせてやる」

「ヒ、ヒィィィ!」

 どうやら逆鱗に触れたようである。怖い旦那と恐いマスターにロックオンされ怯え縮こまっていると、秘書二人が間に入ってくれた。

「ケンカはこの辺で」

「折角の祝いの席をぶち壊すおつもりですか」

 ただいま祝宴の真っ最中である。ついさっき自分達もオリバーとケンカしていたくせに、棚に上げての発言ではあるが、至って正論である。宴の席ですらドSコンビにかかれば戦場になりかねない。

「提督の顔も立てて頂かないと」

「それに、主役のお二人が無視されて拗ねてらっしゃいます」

 秘書二人に諭されて、さすがにKYなドSコンビも空気を読むことにしてくれたようだ。

「もー、二人ともちゃんと祝ってよぉ」

「それとも余興か? 異種格闘技?」

「違う。悪かったな。おめでとう」

「ハハハハハ、すいません。おめでとうございます」


 先程からケンカばかりで無視される主役の二人。ボニーとクライド。今日は、この二人の結婚式だ。

 山姫の顔を立てて、とは、山姫の屋敷内で純和風且つ古風な披露宴の形式に則っているからである。

 大広間の座敷、膳を並べた席の上座に檜扇の絵羽模様の大振袖を着たボニーと紋付(紋は付いてない)袴のクライド。当然列席者も全員和装だ。

「外人さんの和装姿って、なんかイイですね。クライドさんも似合ってるし、ボニーさんの振袖可愛い」

「マジ? ありがとー」

「ボニーは何着ても可愛いからな」

「やだもう、クライドったらぁ」

 微笑ましい限りである。二人の娘であるミラーカは今日くらいはメリッサで、と両親に熱望されたが、断固として拒否した。

「ボニーとクライドの娘なのが、本当にイヤなのよ・・・!」

 ミラーカにしてみれば屈辱らしい。日本に渡ってきてから、ミラーカは人前でメリッサの姿に戻ったことはない。

 ボニーとクライドは勿論、シュヴァリエ達もその事は非常に残念に思っているようだ。

「メリッサの成長を、もっと見ていたかった・・・」

「少女が大人の階段を上る、その一瞬の輝きが一番美しいのに!」

 男どもの夢を奪ってしまったらしい。しかし、ミラーカには関わりのないことである。


「クライドさん、どうぞご一献」

「お、サンキュー」

 クライドに酌(血)を勧めると、嬉しそうに盃を寄せてくる。ボニーとクライドの嬉しそうな表情に悦に浸っていると、ボニーがふと表情を変えた。

「なんかミナの和服の袖短くない?」

 ミナが着ているのは臙脂色の橘の絵羽模様の色留袖だ。

「既婚女性は振袖着ないんですよ」

「へぇ、そうなんだぁ」

「ほら、リュイさんは未婚だから振袖でしょ?」

「本当だ。けどミラーカ様は色留袖だね?」

「私は生前結婚していたもの」

「今結婚してないじゃん! まだ10歳のくせに!」

「うるさいわよ」

 10歳児が既婚を主張するのもおかしな話だが、前世の記憶を全て引き継いでいるので仕方がない。


 大賑わいの宴の席は、アルカードの一族はもとより、山姫の一族も出席する大人数の宴である。山姫側は出席者が幹部たちがほとんどであるが、その数は100人以上だ。当然ミナ達にとって初対面の人物もいて、挨拶回りに大忙しである。

「うーん、ここまで大所帯だとは・・・」

 そう一人ごちたアンジェロに山姫は少々苦笑する。

「私の血族は全員合せたらこんなものではないわよ」

「マジですか」

「マジよ。異次元でちゃんと面倒見てくれるのかしら?」

「あ、それは問題ありません。むしろ助かります」

「えぇ? そうなの? まぁ、それならいいけど」

 アンジェロとしては有能な人材が増えるに越したことはない。市の行政を10人やそこらで掌握するのは並大抵の苦労ではない。なにより、繁栄にはいかなる手を尽くしてでも人口の流入を図るべきである。


 とりあえず、と山姫と秘書二人が主要なメンバーを紹介してくれた。

 まずは、かつてボニーとクライドが所属していた特殊部隊“侘助”わびすけ。この部隊は剣術をメインにした剣客集団である。

 その隊長枸橘木賊からたち・とくさ副隊長秦皮茅とねりこ・ちがや

 そして、隠密行動や諜報活動を主とする部隊“朧月”おぼろづき。甲賀の出身である隊長を筆頭にした忍の集団である。

 隊長は明日葉升麻あしたば・しょうま副隊長はくノ一、金雀枝榧えにしだ・かや

 そして、殺め枕、つまりは女の色気で惑わせて暗殺する手法、古から続く暗殺術の一つを得意とする妓女の集団“細雪”ささめゆき

 隊長は山茱萸菖さんしゅゆ・あやめ副隊長冬青芹そよご・せり

 最後に、山姫の付き人である少女が二人。杜若かきつばた昼顔と夕顔である。

「ひーちゃんって呼んで」

 と、昼顔。

「ゆーちゃんって呼んで」

 と、夕顔。

「ひーちゃんとゆーちゃん、一卵性双生児?」

「「そうだよっ!」」

「へぇ、すごーい。本当にそっくり!」

 年齢は不明だが、見た目は10歳くらいの少女である朝顔と夕顔はそっくりだ。二人ともおかっぱで、髪をハーフアップにして留めているリボンが赤と白で色分けされているから解るものの、リボンを外してしまうとどちらがどちらかわからない。

「ウチの子も双子なんだよ」

「「そうなの?」」

「うん」

 双子を呼んで朝顔と夕顔に紹介すると、兄弟も姉妹もとても喜んで、双子同士でキャッキャと盛り上がり始めた。

「双子、浮かれてんな」

「ホント」

 見た目同年代の双子の姉妹との遭遇に、大はしゃぎの双子の兄弟。ミナとアンジェロはその様子を見てニヤニヤだ。


 その一方、シュヴァリエは妓女集団細雪の女性陣にメロメロである。

「あはは、天女ですって。彼らみたいな男性が一番殺しやすいわ」

 細雪の隊長である菖の言葉に思わず吹き出した。確かに、シュヴァリエの様な男所帯の前に現れた「男を骨抜きにするプロ」はいかにも天女だ。しかし、その天女たちの中にも色留袖を着ている者はちらほら見かける。

「・・・いいんですか?」

「それが仕事だもの」

 仕事は仕事、と割り切っているようだ。誰が旦那かはわからないが、旦那の方はどう思っているのだろうか。思案していると、副隊長の芹がケラケラと笑う。

「いいのよ。どっちみち廃業だもの。私達は、そうね。キャバクラでもやる?」

「あはは、いいわね」

 仕事は仕事。どうせやるなら楽しくやろう、そう言って細雪の女たちは笑っている。強い女性たちである。


 ボニーとクライド、主役の二人に視線を戻すと、二人の元に侘助の隊長と副隊長が酌に来ていた。折角だから、と挨拶をしに行くと、ボニー&クライドが侘助に所属していた時の話を聞かせてくれた。

「某国の総書記を暗殺してくれって言う依頼があってさ」

 どこの誰か察しがついたが、黙って続きを聞いた。

「その時は病死に見せかけてくれと言われてたんだ」

「病死? わざわざ?」

「そう。身内からの依頼だったからだろうな」

 身内の誰かも察しがついたが、黙って続きを聞くことにした。

「とりあえず飲料水に炭疽菌を混ぜて飲ませることにしたんだ。炭疽菌の入ったパックをクライドさんに預けてたんだけど」

「俺失くしちゃったんだよね!」

「えぇー・・・」

 移動中にどこかに落としたらしく、どこを探しても見つからず、仕方がないので夾竹桃を焚いて、その煙で殺したらしい。

「クライドさん、しっかりしてくださいよ」

「本当。毒性の高い植物探すの、苦労したよ」

「ボニーちゃんに至っては依頼内容無視して、普通に殺しちゃおうとか言いだすし」

「ホント自由ですね・・・」

「まーね!」

 褒めたつもりはなかったが、喜ばれた。


 しばらく歓談していると気付く。

「煙い・・・」

 シュヴァリエはレミ以外全員喫煙者。山姫の部下にも喫煙者はいる。締め切った室内は薄雲がかかったようだ。

 ―――――ちょっと外の空気吸おう

 外に出ると、金盞花の匂いが鼻についた。

 ―――――もう、冬がくるんだな。

 独特な甘い香りに、タバコの臭いも薄れていく。

 が、急にまたタバコの香りに包まれた。

「アンジェロ?」

「一人でなにしてんだ」

 アンジェロが後ろから抱き締めて、低い声で耳元で囁いた。

「なんとなく。そういえばアンジェロ、和服も似合うね」

「まーな」

 相変わらず謙遜の二文字は彼の辞書には存在しないようだ。

「私は? 似合う? 可愛い?」

「・・・・・・・・・・・・・・可愛い」

「なんでいつもサラッと言わないの?」

「うるせぇ」

 相変わらず照れ屋である。が、照れつつも素直にそう言う時は、アンジェロの事だ。

(可愛い。超似合ってる。さすが日本人。マジ可愛い。もうミナは本当可愛い。今すぐ部屋に連れ戻りたい)

 とか思っていること請け合いだ。

 アンジェロの照れ屋なところはミナも好きなので、クスクス笑いながら腕の中でクルッとアンジェロに反転した。

「ねぇ、アンジェロも行くでしょ?」

「行く」

「ていうか、アンジェロはどこでもテレポートできるから、アンジェロに連れてってもらわなきゃ」

「結局俺移動手段かよ」

「あはは。でも、楽しみ。アメリカ、ヨーロッパ各地を回って、それから、東ヨーロッパ。ベトナムと、最後にインド」

「この第3次元の最後の思い出に、世界一周旅行だな」

 二人の話す世界一周旅行。この旅行を提案しだしたのはアルカードだ。

 当然アルカードの目的は思い出作りなどではない。それも多少はあるが、シュヴァリエ達に棺がないことを問題視したためである。

 棺と出生地の土がなければ、力を持続させることは難しい。覚醒中ならまだ血液を補給すれば済むが、休眠期中が問題なのだ。その間はエネルギーを補給することが出来ない。その為、棺と土はどうしても必要になってくる。

 シュヴァリエ達の出生地は本人たちは覚えていなかったが、アルカードがジョヴァンニに諜報活動をさせた時点で、全員の身元はハッキリしている。

 全員の出生地を回り土をとり、最後に、アルカードの故郷であるルーマニアのトランシルヴァニア、ミラーカの生地であるハンガリー(嫁いだ先がオーストリア)に行くのだ。ミナはそれが楽しみで仕方がない。


 ふと、思い出した。

「そう言えば昔、インドを出る時にね、次の目的地をどうしようかって話し合いしたの。その時トルコがいいって言ったら、アルカードさんにもクリシュナにも却下されちゃって。その時はなんか恨みでもあるのかと思ったんだけど」

「ハハ、あったみてーだな。そういや、なんでイタリアに来ることになったんだ?」

「北都が言いだして、ダーツで決めたんだけど。アレはイカサマだったね」

「イカサマ?」

「私とボニーさんとクライドさんはどこでもいいやって、適当に投げたの。ミラーカさんと北都は行きたい所があって、みんなバラバラに刺さったのに、クリシュナの希望を聞いてアルカードさんもイタリアに投げちゃったの」

「なんだ、クリシュナさんの希望だったのか」

「うん。遺言だからって。それで本人に投げさせるのっておかしいよね」

「ハハ、確かにな」


 足首に刺さったシルバー。クリシュナの文化への好奇心が、ミナ達の運命を大きく違えた。

 人生、なにがどう転ぶかわからないものだ、とつくづく思う。大幅に予定が狂って、150年越しでやっと結婚できたボニーとクライド。100年越しの戦いを経て、時を超えて再会できた吸血鬼たち。永きを経て再び巡り合った魂。

「トランシルヴァニア、どんなとこかな」

「俺モルダヴィアにも行きてぇな」

「なんで?」

「・・・見ておきたいから」

「ふーん?」

「お前も、ハンガリーをよく見ておけよ」

「? うん」

 絡み合い、繋がる運命、魂の系譜。アルカードを中心に、数々の運命が交錯し合い、再び巡り合い、共鳴し、共振する。

 ―――――この運命に導いたのは、神の悪戯か、それとも魂が引きあったのか。

 二人の会話を聞いて、アルカードも息を吐く。

 ―――――腹は立つし、いっそ嫌悪すら感じるが、場合によっては悪戯好きの神に感謝した方がいいかもしれんな。

 気紛れな神の悪戯に、小さく笑った。

 ―――――しかし、やはりあり得ん。よりによって・・・悪い冗談だ。


 人生は、そう思い通りにはいかない。運命は人の人生の半分を支配している。しかし、残りの半分は自分に委ねているのだ。

 この出会いも、この運命も、紡がれてきた歴史と一人一人の思いで建築され、これからも計り知れない未来をもたらすのだろう。

 人間が何百年も留まることが出来ないように、運命もまた、留まることはない。




★行く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず

――――――――――鴨長明「方丈記」より


行く河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず、

よどみに浮かぶ泡沫は、且つ消え、且つ結びて、久しくとどまりたるためしなし、

世の中にある人と住家と、またかくの如し。



※夾竹桃は桃に似た可愛い花が咲く、常緑低木もしくは常緑小高木。公園や学校などでもよく見かける、栽培に優れた植物である。毒性が強くすべての部位、周辺の土壌まで毒性を持つ。青酸カリを上回る強心作用があり、死亡例も多数ある。

 良い子はものすごく悪い子になってから真似するべし。真似をして捕まった際、本作の名を口に出さないでください。



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