ある莫逆家族の日常
棺から這い出て土を払い着替えると、今度はベッドに潜り込む。すぐにアンジェロは気が付いて、ミナの首のくぼみに腕を差し入れて腕枕をして抱きしめる。
抱きしめ返すと、それに微笑んだアンジェロはまたすぐに寝息を立て始める。微睡んでいただけなのに、ミナを抱きしめて眠る癖はいつまでも抜けないようで、ミナはそれに嬉しくなってアンジェロの胸に顔を寄せた。
しかし、ややもすると淋しくなってくる。自分は起きているのに、アンジェロは寝ている。こうなってくると、起こさずにはいられない。
「アンジェロー」
「・・・・んん」
「起きてー、もう昼だよ」
「んー、まだ昼だろ・・・・・」
吸血鬼にとっては「まだ昼」は「まだ深夜」と同義である。当然アンジェロはまた眠りについてしまった。それではミナはつまらないので、作戦を変えることにした。
アンジェロの服の裾から手を入れて、背筋を撫でながらキスすると、さすがに目を覚ましたようで舌を絡ませてきた。ひとしきりキスをして離れると、アンジェロも目を開けた。
「おはよう、起きた?」
「おきた」
「あっ」
イロイロとおきたらしい。(当然だ)仕返しとばかりに服の中に侵入してきた手が素早くブラを外し、胸を愛撫し始める。
「も、アンジェロ、昼間なのに」
「昼だからだろ」
昼間、屋敷に人間はいない。昼間に起きていられるのはミナ達とクライド達だけで、双子も他のシュヴァリエ達も寝静まっている。アンジェロにしてみれば昼間しかチャンスはないのだ。
―――――んもー、アンジェロってばいくつになっても元気なんだから。
全くである。今年で64だと言うのに、文字通り精力的な旦那である。余談ではあるが、あらゆる年齢層にアンケートをとった結果、仲のいい夫婦は70代くらいまでは夫婦関係がある、という統計が出ている。人間ですらそうなのだから、体が若いままの吸血鬼なら尚更仕方がない。
ミナは呆れ半分、喜んでもいる。俗に、女は母になったら、女として見られなくなると言う。しかしアンジェロは全くそんな事はない。そこは日本とイタリアの文化の差もあるのだろうが、アンジェロはミナを母親としても妻としても女としても見ているし、更に言えば友としても恩人としても見ている。自分の肩書が増えただけで、逆に一層アンジェロの愛が深まったように感じて、ミナは嬉しいのだ。
結婚は、二番目に好きな人とする方が上手くいくと言う。順番を付けるなら、確かにミナの中では一番はクリシュナで、二番はアンジェロなのだろう。二番目に本気で恋をした男には、一番目でできなかったことを全部してあげたかった。一番目の時の反省をして、一番目の時よりは少し、冷静になって。
しかし、ゲーテは言う。初恋こそが唯一の恋なのだと。
「第二の恋は、それが二番目であると言うだけで、既に愛の最高の意味は失われている」
ゲーテに倣うのであれば、アンジェロにとってはその言葉は真理であろう。初恋は叶わないと言うが彼の恋は叶い、失われた経験を持たない初恋として、最高の意味を持ち続けている。
ミナの初恋はもう、子供の頃で思い出せない。子供心の淡い淡い恋は、どんな相手だったかも、どんな感情だったかも。ゲーテの言う愛の最高の意味とは、恐らくその魔力の事なのだろう。あらゆる情熱を凌駕し、付きまとい、恋愛において本領を発揮する悪魔的な感情。人の生涯すらも変えてしまう程の魔力。
アンジェロにとって、ミナは十分すぎるほどにその魔力を持つ。ミナにとってもまた、アンジェロはその魔力を大いに発揮している。いつまでも恋の魔力を忘れてはならないとも、ゲーテは言っている。
―――――じゃぁ私は忘れてないから、これは二番目の初恋だな。
二番目の時点で初恋と言うのはおかしいが、とにかくそう結論付けたようだ。どうしてもミナは自分に都合よく、ロマンチックな方向に持っていきたいようだ。
すっかり日も沈んだ頃、目が覚めた。
―――――私、寝ちゃってたのか。
温かさを感じないベッドに目を開けると、アンジェロの姿はなかった。それに一気にミナは不機嫌になった。服を着て寝室を出ると、部屋のバルコニーで煙草を吸うアンジェロを見つけた。
「んもー!」
「何怒ってんだよ」
と、言いつつアンジェロはわざとやっている。時には甘やかし、時には今日の様にわざと淋しがらせて、ミナの心を落ち着かせてやらないのだ。そうしていないと、ミナは慢心して自分から興味を失くしてしまうのではないか、と危惧しているのだ。
そんな事とはつゆ知らず、ミナはその事を時々シャンティやボニー&クライドに愚痴り、更にボニー&クライドはそれをアンジェロにチクる。
「さっすがアンジェロ、やるねぇ」
「もしかしてバレました?」
「バレました」
ミナの愚痴をチクるとアンジェロは喜んでいるようだ。ボニー&クライドは基本ミナの味方であるがアンジェロの駆け引きを称賛しているようで、実際その方が長続きするだろうと踏んでいるらしく、その方がミナの為になりそうだと考えてか、ミナの愚痴をサラッとスルーしてアンジェロにエールを送っている。
百戦錬磨なアンジェロと違ってド素人なミナはそんな事とも知らず、不満をぶつける。アンジェロはそれを笑って誤魔化して、頭を撫でてご機嫌取りをして、抱きしめながら「ゴメンな」と謝ってキスをする。それでミナは全部許してやりたくなってしまって、やっぱり好きだと思ったり嬉しかったり悔しかったり、複雑な気分になるのだ。
当然アンジェロはそれにも気づいていて、心の中で
「ケケケ、引っかかりやがった。単細胞ミナ、バーカ」
とか思っているのだが、そんなバカな嫁が可愛くて仕方がないので、この男もまた始末に負えないものである。
二人で階段を下りてリビングへ向かおうと廊下を歩いていると、途中ですれ違ったレミが何やらニヤニヤしている。
「おはよ」
「おはようございます」
「リュイさん来てる?」
「はい。でも双子が行方不明らしくて、僕も探してるんです」
「えぇ? あの子たち今度は何してんだろ・・・」
「俺らも探すか」
「うん」
相変わらずニヤニヤするレミを不審には思ったが、それ以上に無邪気な双子の悪魔を放っておくわけにはいかず、レミが屋敷の東側を探すと言うので、西側に向かった。
少しすると、西側の廊下を歩くアンジェロがピタリと足を止める。
「どっか、近くにいるな」
双子の強烈な魔力を感じ取ったようでキョロキョロしだす。そのせいか、注意がおろそかになったアンジェロは気付かなかった。気付かず、足元に張られていたテグスに足を引っ掛けて、その瞬間シルバーが正面から飛んできて、すんでのところでミナがそれを掴んで事なきを得た。
「あっ・・・・ぶね」
「なにこれ、どういうこと!?」
「よりによってシルバーなんて、タチの悪りぃイタズラしやがる」
屋敷には元々シルバーはなかった。アルカードがシルバーを買うことを禁じていたからだ。当然それは暗殺を避けるための予防策としてだったのだが、まんまと誰かが買ってきてしまったようだ。この危険極まりない、イタズラの為に。
当然二人にはその犯人の目星はついている。しかし、いかんせん相手はブービートラップのプロである。警戒しながら歩みを進めると、床に敷き詰められたヘリンボーンの一つをミナが踏みしめた瞬間カチリと音がして、壁沿いにあった石膏像の持つ槍が飛んできた。
咄嗟にアンジェロがミナの腕を引くと、ミナのいた場所の壁に槍が突き刺さる。いい加減、二人ともキレた。
「こらぁぁぁ!」
「コルァ! ルカ! 出てこい!」
そう言いながらどこかで見ているはずだ、と近くの部屋を二人で覗き見ていると、アンジェロがハッと向いて突然ミナに覆いかぶさった。その直後、バシャッと何かが飛び散って、アンジェロの髪から滴り落ちる。目を開けて床とアンジェロを見たミナは、思わず絶叫だ。
「イヤァァァ! コワッ!」
「折角守ってやった旦那にそりゃねぇんじゃねーの」
アンジェロおよび床は血まみれだ。頭から血を被ったアンジェロはミナの態度に大いに憤慨したが、上から響くクスクスとした笑い声に、すぐに見上げた。
「コルァ! ルカ! クソガキども!」
「ヤベッ! みつかった!」
「お父さんが怒ったー!」
「逃げろー!」
3人は大笑いしながら逃げ出して、アンジェロは血まみれのまま3人を追いかけて行った。レミがニヤニヤしていた理由はこれか、と納得して、既に就業時間を終え帰宅したハウスキーパーを恨めしく思いつつ、かといって血まみれの床の掃除を頼むわけにもいかず、渋々雑巾を持ってきて掃除した。
掃除が終わると、その雑巾はそのままゴミに出して、血まみれの手を洗ってリビングに戻った。するとジョヴァンニが寄ってきた。
「ミナ、足どうしたの?」
見ると先程の血がかかっていたようで、ミナの足も血に濡れていた。それを見て深く溜息を零す。
「双子とルカのイタズラの被害だよ」
そう言うとジョヴァンニも気の毒そうな視線を向けて、「直撃しなくてよかったね」と言ってくれたが、アンジェロに直撃したと話すと、ルカの名を呟いてレクイエムを唱え、十字を切っている。少なくともルカは捕まれば半殺し確定だ。
少しすると双子とルカがリビングに逃げ込んできて、ルカは暖炉の中に隠れ、双子は
「「みんな、シーだよ!」」
と言って、その場にいなかったクリシュナとジャイサルに化けて何事もなかったかのようにテレビを見始めた。すぐにアンジェロがリビングに駆け込んでくると、その場の全員は状況を察したと同時に、血まみれのアンジェロを見て気味悪がった。
「アンジェロ、こえぇ」
「うるせぇ。ルカと双子、どこいった」
アンジェロが尋ねても、アンジェロの形相と様相が恐ろしすぎて誰も口を開けない。するとアンジェロは聞く相手をミナに変えた。ミナはすぐに暖炉を指さして、アンジェロは暖炉の前に行ってかがんだ。が、見える範囲にはいなかったようだ。
「いねぇな」
「そう? でも、確かに暖炉の中に入ったよ。ルカーでておいでー」
ミナが呼びかけると、上からパラパラと煤が落ちてくる。それでいる事は確定したので、ミナはパチンと指を鳴らして火をつけた。
「火をくべて、炙りだしちゃおっか」
その提案にアンジェロは大喜びして
「お前本当いい女だな。俺お前のそう言うとこスゲェ好きだわ」
と絶賛してくれるので、いよいよ本気で火をつけようとしたところで、ルカが上から落ちてきた。
「ミナ、それはやめて、それはやめて」
「ごめんなさいは?」
「ごめんなさい! 許してください!」
煤で真っ黒になった手を組んで必死に謝るルカに一瞥をくれたアンジェロは、すぐにジュノを呼び出した。
「なんでしょう」
「コイツを“イニシエーション”に閉じ込めろ。5分経ったら出してやれ」
「わかりました」
「えっ! やだ! やだ! あそこは嫌だ!」
途端に顔色を変えてその場を逃げ出そうとするも、すぐにジュノに捕まって黒い空間に飲み込まれるルカ。
「いやだぁぁぁ! 謝ったのにぃぃぃ!」
「ゴメンで済めば悪魔はいらねぇんだよ」
微妙に使いまわしも意味も不明だが、そう言ったアンジェロは満足そうだ。“イニシエーション”と呼ばれる精神空間に幽閉されたルカは、空間の中で様々な精神修行をさせられ、洗礼を受ける。
続いて双子を探そうと見渡すと、やはりすぐに気付いたようで偽アヴァリ兄弟で視線を止めた。それにミナも気づいてコクンと頷くと、ミナはアンジェロの前に行って髪を撫でる。
「あぁ、アンジェロ、可哀想に。血で髪の毛が固まってる。ヒドイねぇ」
「だろ? 俺可哀想だよなぁ」
「本当だよ。アンジェロ、一緒にお風呂はいろっか。私が流してあげるから」
「マジ? ありがとう」
そのやり取りを聞いた偽アヴァリ兄弟はすぐに変身を解いて両親の前にやってきた。
「お父さんばっかりズルい!」
「僕達も!」
父親ひいきの母親を不満に思ったのか、やはりまだまだ子供の双子はそう言って必死に抗議する。それに両親はフフンと鼻で笑う。
「悪いことする子はダーメ」
「お前らももう一人で風呂入れんだろ」
それを聞いて更に双子はエキサイト。
「お父さんだって一人で入れるでしょ!」
「お父さんは大人なのに!」
その双子の様子を見て、ミナはアンジェロの腕を組む。
「ダーメ。お父さんは特別なの」
「ミナはお前らのお母さんだけど、俺の嫁なんだよ」
そう言うとアンジェロとミナは連れ立って、アンジェロは双子に「ざまーみろ」と言った風に、ベッと舌を出してリビングを出て行った。あまりにも大人げないアンジェロの様子に双子以外は苦笑したものの、悔しがる双子を宥めることにしたようだ。
「ハッハッハ、お前らイタズラも程々にしねぇと、アンジェロ敵に回したら怖えぇぞ」
そう諭すクリスティアーノに双子はブンブン腕を振って抗議する。
「でも、お父さんいっつもお母さん独り占めするもん!」
「僕達のお母さんなのに! お父さんのお母さんじゃないのに!」
何とも子供らしい抗議だが、確かにアンジェロのお母さんではない。嫁である。その抗議があまりにもおかしく、しかもなんと説明すればいいかわからなかったクリスティアーノは結局笑い出してしまった。双子の抗議を聞いて、ヨハンとオリバーも笑い出す。
「あの影コンビとアンジェロが対立するっつー構図は、相変わらずだな」
「ホント。今度は親子でミナを巡ってケンカとは」
それを聞いて周りの大人たちは全員笑い出したのだが、双子たちには前世の記憶がないため意味不明だったようで、不服そうに首を傾げる。
「「影コンビって、なーに?」」
その質問にはクライドとボニーが答えた。
「あー、お前ら二人はな、ミナとアンジェロの子供に生まれる前、ずーっと昔から俺らの友達だったんだよ」
「「そうなの?」」
「そうだよ。それでね、昔はミナとアンジェロは夫婦じゃなくて、友達だったの。昔はアンジェロがよくミナをイジメてて、その度にアンタ達がミナをイジメるなってアンジェロとケンカしてたの」
それを聞いて双子は顔色を変えた。
「やっぱりお父さんはお母さんをイジメてるんだ!」
「お母さんを助けなきゃ!」
言うが早いか双子はすぐにリビングを飛び出していった。双子の言葉を聞いて、クラウディオが呟く。
「やっぱりって、なんだろうな」
それにみんなで思い悩んだが、すぐに答えは出たようで、ミゲルが回答した。
「ミナちゃんの喘ぎ声を悲鳴か何かと勘違いしてんじゃねーの」
その回答にリビングの大人たちは大爆笑した。概ね正解だと思われる。
一方風呂場でやっと血を洗い流したアンジェロは、ミナと二人バスタブに浸かってイチャイチャしていた。
「本当、ルカったら妙なこと教えて、困るよねぇ」
「アイツはガキの頃からイタズラばっかしてたからなぁ」
愚痴を零しながらも、その場の状況のせいかすぐに熱烈なキスを交わしはじめる。お湯の温度とキスで体が熱くなって、存分に気分が盛り上がってきた頃に双子が風呂場に飛び込んできて、ミナとアンジェロは心底ガッカリして、双子に顔を向けた。
「オイィィ、何入ってきてんだ」
「もう、入るなら声かけなさい」
二人の様子に、一応ミナが虐められているわけではなかったと安心はしたようだったが、双子はそのままの勢いで文句を並べたてる。
「だって! お父さんお母さんイジメてたって!」
「お父さんお母さんイジメちゃダメー!」
根も葉もないことだ、とミナは首を傾げたが、アンジェロは尋ね返す。
「今俺がイジメてたように見えたか?」
そう言われて双子はドアを開けた瞬間の両親の様子を思い出す。
「「ううん、チューしてた」」
「だろ? 俺がイジメてたって、誰が言った?」
「「ボニー姉ちゃん」」
それを聞いてミナもアンジェロも「なるほど」と納得して、溜息を吐きながら双子に言った。
「そんなの、もうずーっと昔のことだよ。今はアンジェロは私をイジメたりしないよ。アンジェロは優しいよ」
「俺が今でもミナをイジメてたら、ミナは一緒に風呂には入ってくれねぇぞ」
「ちゃーんと仲良しだよ。ね?」
「な」
そう言ってアンジェロが後ろからミナを抱きしめて、微笑みあう両親を見て双子は安心したように笑った。すると、何を思ったか双子はその場で服を脱ぎ始めて、二人でバスタブに入って来た。
「あ、こら」
「ちょ、お前ら、狭っ、痛たたたた。踏むな、苦しッ」
「「えへへー」」
普通の規格のサイズよりは大きめのバスタブだが、さすがに4人となると狭い。そこに双子が無理やり押し入って、大量に湯が溢れてしまった。入って来た双子はアンジェロの足を踏みつけつつ、ミナに抱き着いて押し付けて来るので、一番後ろにいるアンジェロは結構圧迫されている。
悪びれた様子もなくいたずらっぽく笑う双子に溜息を吐いて、アンジェロが濡れた髪を左手で掻き上げてそのままバスタブのふちに肘をついて頭を乗せると、ミケランジェロがアンジェロに言った。
「お父さん、指輪、見せて」
それを聞いて翼もミナに言った。
「お母さん、指輪、見せて」
二人で双子の前に左手を差し出すと、双子は指輪を撫でながら珍しそうに見入る。
「「色違い」」
「あぁ、宝石だけ違う」
「「お父さんのはなに?」」
「黒いダイヤ」
「「お母さんのはなに?」」
「青いダイヤだよ」
「「どうしてお父さんとお母さんは指輪をしてるの?」」
「アンジェロがくれたからだよ」
「「どうしてお父さんはお母さんに指輪をあげたの?」」
尋ねられてアンジェロはまた左手でミナの肩を抱いて、ミナは左手でその腕に手を添えて、双子に微笑んだ。
「ミナを、世界で一番大好きだから」
目も当てられない程のラブラブっぷりを見せつけられた双子は、何故か負けず嫌いに火がついたようだった。
「「僕もお母さんが世界で一番好き!」」
そう言いながらアンジェロからミナを引きはがそうとする。ミナはそれに苦笑して、アンジェロも苦笑しながら双子に聞いてみた。
「じゃぁ俺は?」
「「お父さんはまぁまぁ好き」」
「あのなぁ・・・・」
結局アンジェロは溜息を吐かされて、ミナを双子にとられてしまった。子供は小さいうちは、特に男児は父親から母親を奪いたいものだ。それが長年続くと冬彦さん現象でも巻き起こしそうな勢いではあるが、アンジェロはそれなりに厳しく躾けそうなので、一般男性と同等のマザコン程度で済むかもしれない。一応言っておくが、男は大概が潜在的にマザコンだ。
その頃リビングに戻ってきたリュイとレミは、事の顛末を聞いて大笑いさせられた。
「あははは、あの家族本当面白いよね」
「本当だよね。あれが世に言う莫逆家族だよ」
「だねー」
リュイの言葉に納得して笑っていたレミだったが、すぐに閃いた顔をしてニヤリと笑い、リュイに向いた。
「リュイちゃん、僕と莫逆家族しよっか」
「え、えぇ?」
「部屋いこっか」
「え、ちょ、何言ってんの!?」
「大丈夫大丈夫! 僕はアンジェロと違って紳士だから、優しくするよ」
「そう言う問題じゃないよ! ちょっとー!」
レミはリュイの腕を掴んで、リビングから誘拐してしまった。その様子を見てみんなで苦笑い。
「アンジェロと違って? ソックリじゃねーか。あの強引さ」
「レミはあの様か」
「あの双子も将来が怖えェな」
「ミナの手腕に期待」
「ま、しばらくは親子でミナの取り合いだな」
「だな。マジウケるよな、あの莫逆家族」
途中から会話に参戦した、仕事帰りのシャンティが口を挟んできた。
「アタシから見たら、アンタらも含めて莫逆家族だけどね」
それを聞いて、みんなで「そりゃぁよかった」と言って、笑った。




