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あなたの手に負えないよ

作者: 小雨川蛙
掲載日:2026/05/04

「その子はあなたの手に負えないよ」


 育児に悩む私を救ったのはその一言だった。


「気にすることはない。親と子。血の繋がりがあろうと所詮は他人だ。合う合わないは存在するさ」


 涙が落ちる。

 その一言をずっと待っていたのかも知れない。


 我が子は特別だった。

 特別、手が掛かる子供だった。


 落ち着きがない。

 じっとしていられない。

 他の子供のおもちゃを奪う。

 それで注意をされると怒り出す。


 子供ならありふれたことだ。

 だけど、我が子は叱っても改善しない。

 心を鬼にして叩いても、全くなおらない。


「私が引き取りましょう」

「はい」


 躊躇わず頷いたことに相手は。

 ――悪魔は微笑んだ。



 *



 悪魔は今日も子供を引き取った。


「お前がどうして捨てられたか分かるか?」

「わかんない」


 子供は不思議そうに言う。

 彼は本気で分からないのだ。

 自分と他人が別であることが分からないから。

 自分が楽しいことを優先するあまり、他の人の事を考えられないから。


「そんな気持ちでいるからさ」

「分かんないや」


 重ねた意思を、重ねた言葉で返される。

 悪魔からすればこれほど嬉しいことはない。


「それでいい。自分に素直でいることより大切なことはないだろう? これは君の人生なんだから」

「うん。僕もそう思う」


 悪魔の心は躍る。

 この子の母親はきっと喜ぶだろう。


 なにせ、捨てた子供とは言え、我が子は我が子。

 健やかに生きているに越したことはないだろうから。


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― 新着の感想 ―
そうか、悪魔が子育てしてるのが、現代なんだ。
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