あなたの手に負えないよ
「その子はあなたの手に負えないよ」
育児に悩む私を救ったのはその一言だった。
「気にすることはない。親と子。血の繋がりがあろうと所詮は他人だ。合う合わないは存在するさ」
涙が落ちる。
その一言をずっと待っていたのかも知れない。
我が子は特別だった。
特別、手が掛かる子供だった。
落ち着きがない。
じっとしていられない。
他の子供のおもちゃを奪う。
それで注意をされると怒り出す。
子供ならありふれたことだ。
だけど、我が子は叱っても改善しない。
心を鬼にして叩いても、全くなおらない。
「私が引き取りましょう」
「はい」
躊躇わず頷いたことに相手は。
――悪魔は微笑んだ。
*
悪魔は今日も子供を引き取った。
「お前がどうして捨てられたか分かるか?」
「わかんない」
子供は不思議そうに言う。
彼は本気で分からないのだ。
自分と他人が別であることが分からないから。
自分が楽しいことを優先するあまり、他の人の事を考えられないから。
「そんな気持ちでいるからさ」
「分かんないや」
重ねた意思を、重ねた言葉で返される。
悪魔からすればこれほど嬉しいことはない。
「それでいい。自分に素直でいることより大切なことはないだろう? これは君の人生なんだから」
「うん。僕もそう思う」
悪魔の心は躍る。
この子の母親はきっと喜ぶだろう。
なにせ、捨てた子供とは言え、我が子は我が子。
健やかに生きているに越したことはないだろうから。




