結婚するのは弟じゃない
敵、が現れました。
ここからお話が変わって行きます
「新郎、神島譲は新婦、蛍を妻として愛し‥」
家のリビングに結婚の誓いの言葉が流れる。
ここで俺と蛍の結婚式が開かれていた。
ただ、居るのは俺と蛍、両親だけだ。
結婚式と言っても真似事で正式な事じゃない。
婚姻届けも出さないし、結婚したからと言って名字を変える訳でも無い。
言ってしまえば、これはままごとに過ぎない。
それでも家族でこんな事をしているのは、蛍の男装を止めて普通の女の子の服装をする理由のためだ。
男装を終えるのは成人を迎える時だが、例外があって、結婚すればそれ以前でも成人と認められる。
だから男装を辞める言い訳として‥形だけでも結婚式をする事にした。
そうする事で花梨さんや蛍の気持ちが少しでも納得できるなら、それでいい。
問題は蛍自身気持ちだが‥それは2つ返事だった。
「それでは指輪の交換を‥」
俺は父親の差し出した指輪を手に取る。
これだけは安いが本物で、花梨さんが俺達2人にプレゼントしてくれた物だ。
蛍の左手薬指を取る。
理由はどうあれ、俺は本気で蛍のことを選んだつもりだ。
「今は単なる飾りだけど‥いつか本物をつけてくれるか?」
「私にはこれだって‥本物‥だよ」
蛍は目尻の涙を指先で拭って微笑んだ。
その時。
「いや、それはマズいですね」
突然、リビングの扉を開け入ってきた女生徒が言った。
‥鈴だった。
後に強面の男2人が控えて居る。
「本当にこの2人が神人‥なのか」
男の1人がたずねる。
「子供の頃からずっと観察してたから、間違いないわ」
「お手柄だな、尊」
「おい、何だ!人の家に勝手に‥」
男に詰め寄った父親が、急にぐったりと力を失い倒れる。
「あなたっ!」
花梨さんが慌てて駆け寄る。
が、同じようにその場に崩れ落ちた。
「鈴! お前!?」
「護、ごめん。 こんな事したく無かったけど‥蛍ちゃんもごめんね」
「なぜこんな事を?」
「後で説明するわ。だから今は従って」
「ふざけるなっ」
思わず鈴に掴みかかろうとした瞬間、チクリとした痛みを腕に感じた。
すると、急速に力が抜け、意識が遠のいてゆく。
「護、私を選んでくれれば全部‥」
悲しげな蛍の表情を最期に、世界が真っ暗になった。
次に目が覚めたのは真っ白な部屋だった。
窓もなく扉は一つだけ。
正面の壁には大きなガラスが嵌められている。
更にその向こうには扉があるようだった。
つまり、動物園で観察されている動物みたいな状態だ。
そしてガラスの向こうには鈴が立っていた。
俺が意識を取り戻すのを待っていたようだ。
「護」
モニタースピーカー越しに鈴が呼んだ。
「‥説明、してくれるか。あと、蛍は?」
俺は怒りを抑えながら言った。
この状況はかなりヤバそうだ。
だからこそ、少しでも情報が欲しい。
「私に言えることは説明する。蛍ちゃんは、行方不明」
「行方不明って‥お前、まさか?!」
「いえ、本当に逃げられたの。私達は神人に危害を加えるのが目的じゃない」
「さっきから言ってる神人って‥花梨さんと蛍の事か?」
「そう」
「他の皆は無事なのか」
「勿論よ。ただ、今の所、隔離はさせてもらってる」
「そうか‥なんであんな事したか教えてくれ」
「神人が人と交わるのを防ぐため」
「交わるって、子供を作るってことか?」
「そう」
「なぜ交わってはいけないんだ?」
「それによって起きる、不幸を防ぐためよ」
「不幸って転校したりしなきゃ成らない事か?」
「まさか! その程度であんな事すると思う?」
「じゃぁ、どんな事が起こるって言うんだ」
「具体的には言えない」
おれは溜息をついた。
何か見えない物と押し合いをしているようだ。
掴み所が無く、反発も上手く出来ない。
少し方向を変えたほうが良いだろう。
「鈴、お前は最初から俺達を狙ってたのか?」
鈴は一瞬苦しそうな顔をした。
「違う‥私が護や蛍ちゃんと会ったのは偶然。でも、蛍ちゃん達はいつかはこうなる運命だった」
「つまり、蛍達を狙う人間は複数居る。その中の1人が鈴って訳だ」
「そう。私はたまたまこの地域に配備されただけ」
「じゃあ、蛍が来なければ、鈴はどうなってたんだ?」
「どうもしない。ただ、ここで暮らして‥歳を取って、いつか死ぬ。普通の人生を過ごしてた‥はず」
「人生をかけて蛍を探してたのか?!」
「違う‥私だって何もなければ良いと思ってた。護と会った時だって、本当に友達に成りたかった。蛍ちゃんが現れなければいつか‥」
「でもそれより手柄を立てたいって事か」
「違う! そんな物どうでも良いの。ただ不幸を止めたいだけ‥信じて」
鈴は辛そうだった。
やはり鈴は基本的に悪人に成れる人間じゃない。
だからこそ、こんな事は止めないといけないはずだ。
実行した鈴でさえ不幸に成るなんて、無意味すぎじゃないか。
俺は内心怒りが湧くのを止められなかった。
プロットは有りながらも連載故、話にするのが難しい。
何とかまとめようと悪戦苦闘してます。




