男装麗人は弟じゃない
主人公にも学友が居ますが‥どんな人間でしょう?
翌朝、完全に睡眠不足の状態で俺は登校していた。
疲労感の強い体に、夏の日差しが辛い。
隣には詰襟制服姿の蛍が、こっちはメチャメチャ上機嫌でひっついている。
スレンダーで見た目幼いせいか、詰襟を着ていれば小柄な男子生徒に見えなくもない。
そう言う意味では制服の時はあまり女子を意識しないで良いので、助かっていた。
「今日から新しい学校だな」
「そうそう」
上機嫌で頷く蛍。
蛍はウチに住むため、今日からこちらの学校に転校する事になった。
“バッチーーン”
突然、背中を豪快に叩かれる。
「いっつーーう?」
後ろを振り替えると、ニヤニヤ顔の穂村亜沙美が立っていた。
小柄でツリ目、ツインテール。
いつもハイテンション。
中学からの腐れ縁だが、いつもちょっかいを掛けてくる、面倒なヤツだった。
「随分と仲良しじゃん?」
どうやら普段と違う俺を見て早速ちょっかいを出してきたようだ。
亜沙美は隣に居る蛍の顔を確認しようと、前に回り込む。
「だっ」
「だ?」
どうも亜沙美の挙動がおかしい。
「誰この、美少年っ! どっから誘拐して来たのっ????」
「ぶぅ」
蛍はいきなりのハイテンション対応に不満げだ。
「人聞きの悪い事言うな。昨日から‥げほんつ!」
妹で許婚者、と言いそうになって慌てて口を閉じた。
この歩く三面記事女に知られたら、瞬時に学校中の好奇の目に晒されてしまう事になる。
「どしたの? 風邪?」
「あ、ああ、昨日ちょっと、池に落ちてな‥」
「ちょ、大丈夫? いくら何とかは風邪引かないって言ってもさ‥」
どうやら俺の顔色が悪いのを風邪のせいだと思ったようだ。
「違うもん。池から私の事助けてくれたんだもん」
蛍が抗弁する。
「え、そうなの?」
「まぁ‥な」
「偉いっ! こんな美少年、無くしたら人類の大損失だよ! 良くやった!」
亜沙美はバンバンと俺の肩を叩く。
いや、痛いって‥。
「そうそう。偉い偉い。大好き」
蛍は背伸びして俺の頭をなでなでする。
「それで、少年、名前教えて?」
「蛍はね、ほたるー」
「蛍くんかぁ。うん、はかなげで‥似合ってる」
「ありありー」
なんだ、亜沙美相当に蛍のこと気に入ってるな。
テンション高め女子二人を連れて、蛍の中学の校門前まで来た。
ちなみに、転校先は俺の高校の隣の中等部だ。
「譲、行ってらっしゃいのチューして。して」
校門前で蛍がこっちを向いてせがむ。
「え、こんな公衆の面前でか?」
「そうそう」
この一日の付き合いだが、意外と蛍が頑固で思い込みが強いのは把握した。
ここで揉めると、より厄介な事に成りそうだ。
「んじゃ、頬にだぞ」
「うん♡」
目を閉じ、頬を向ける蛍。
「き、緊張するな‥」
俺はぎこちなく蛍の頬に唇を近付ける。
と。
『ん‥ちゅっ』
蛍は俺の唇が触れる寸前で振り向き、唇を合わせて来た。
甘く柔らかい感触が唇に重なる。
そのまま俺の頭に腕を回し、まるで乳を吸う様にしてくる。
慌てて離れようとする俺。
だが、蛍はしっかりと俺の頭を抱き込み、離さない。
‥あれ、俺、これがファーストキス‥。
そんな事を考えて居ると、蛍は満足したのか離れた。
「うふっ、元気、元気ー」
蛍は上目遣いにペロッと唇を舐めると校内に走って行った。
俺はそのコケティッシュな表情を見て、
“アイツ、たまに女子の顔をするんだよな”
なんて思った。
「ど、わ‥ぐぇ」
妙な声が聞こえたので見てみると、隣で亜沙美がプルプルと震えている。
「きゃ‥」
「きゃ?」
「きゃぁ~。尊い〜。なにそれなにそれっ! 死ぬっ!死んじゃうっ!」
亜沙美は手足をメチャメチャに振り回し、ぴょんぴょんとジャンプする。
「いや、落ち着けって」
亜沙美をなだめて気が付けば、女生徒が皆こちらを見てヒソヒソ話をしていた。
「あ、いや‥失礼しました〜」
俺は慌ててその場を離れた。
エピソード1、2も少し改訂しました。
ちょっと走りすぎてたと反省‥




