引っ越し先は弟じゃない
ここから新展開(?)です
外伝的な話になるかもです
俺達は木枯らしが吹く道を下校していた。
ここは東京郊外の住宅地。
右隣には蛍、左には鈴。
話題は来週行われる期末試験だ。
「転校してすぐに期末試験は厳しいよなぁ」
俺は愚痴をこぼした。
「護、苦手な科目って?」
「全部でしょ」
「面目ない‥」
蛍は文系、鈴は理系が比較的得意だ。
しかも、それ以外の科目もそつなくこなしている。
俺は最近ずっと二人から勉強を教えてもらいっぱなしだった。
あれこれ話しているうちに、俺達が暮らしているマンションについた。
もちろん、俺達だけでこんな所を借りれる訳は無くて、蛍の叔母さんに手配して貰った。
叔母さんは諸々の事情を承知の上で助けてくれている。
と言うのも叔母さんが日本の神人の頭目であり、内々で政府機関と話をつけてくれたからだ。
もちろんタダと言う訳ではなく、ある条件が有るのだが‥。
蛍が避難している間、世話になったのもこの人だった。
家に入るとリビングのテーブルに座り、とりあえず科目の教科書を眺める‥しかし、一度躓いた勉強はなかなか挽回出来ない。
「護、分からない所、教えるよ〜」
言いながら蛍が肩口後方から覗き込んで来た。
耳元に柔らかい吐息がかかる。
思わず振り向く。
「って、なんでそんな格好‥」
「楽なんだ、もーん」
蛍は帰宅するなり、さっさとロングT“だけ”に着替えていた。
当然その下には下着すら着けていない。
家ではその格好で抱きついたり、キスを求めて来たり‥。
俺だって思春期だから、もう色々と限界ギリギリだった。
「蛍、勉強教える気無いでしょ」
そう言って鈴が反対側の椅子に座る。
鈴は鈴で下着にキャミを着ただけの格好だ。
「す、鈴?」
「わ、私だって色々覚悟して‥」
言いながら身体を寄せてくる。
「ままま、待て。嬉しいけど‥ほら、まだ日も高いし‥」
いや、何を言ってるんだ俺。
「じゃあ、夜に成ったら?」
真剣な表情でたずねる鈴。
「いや、それは‥前向きに検討しない事もなくも無い‥かな」
「やった、これで今夜はカレーライス、だねっ!」
喜ぶ蛍。
「何故にカレーライス?」
「あれ、チャーハンだっけ?」
首をかしげる蛍。
「もしかして赤飯と言いたい?」
「そう、それ!」
「それは意味が違う‥」
さすがに美少女二人の誘惑の中で勉強できるはずもなく、俺は自室に退散したのだった。
数日後、俺達はその叔母さんの屋敷に呼ばれた。
「何度目かだけど‥デカいよな」
俺は門の前で辺りを見回した。
ずっと向こうまで白い壁が続いている。
「昔の庄屋屋敷なんだって」
叔母さんの家は敷地に蔵がいくつもあるほどの屋敷だ。
その、屋敷の中の板張りの広間で叔母さんと正座して対面する。
叔母さんは見た目60歳ほど。
花梨さんの姉にしては歳が高い様に思うが、この人達は見た目と年齢が合わないからなぁ‥。
「やや子作りの最中で申し訳ないけど‥少し仕事をしてもらうよ」
この人は、結婚=子作りだと言う考え。
何でもそれが一族では当たり前らしい。
「叔母様、それが‥まだ」
申し訳無さそうに蛍。
事情は把握しているのか、叔母さんはこちらを睨む。
「なんだって? この、甲斐性なしが」
いきなり叱られてしまった。
「せめて学生の間は‥勉強優先で居たいのですが‥」
「なんだい、その弱腰な考えは! 勉強なんて後からいくらでもさせてやるよ。ウチには優秀なのが幾らでも居るんだからね」
ズバリと本音を言い当てられて、ぐうの音も出ない。
「まぁ、今日はそれより仕事の話だ」
叔母さんは居住まいを正すと、何枚かの写真を見せた。
「この屋敷の後片付けを頼むよ。何か見えるかい?」
俺を見て訊ねる。
「2階の左手‥ですかね‥影がみえます」
写真を見て俺は答えた。
どうも俺には、人には見えない物を見る才能があるらしい。
前から目端が効くほうだと思ってはいたが‥。
この叔母さんにやり方を教えてもらったら、随分とはっきり見えるように成った。
ただ見えるだけで、何も出来ないのだが‥。
「ふぅ‥ん。私にも何も見えないんだがね‥恐らくそれだろ‥蛍?」
「明日、行ってきます」
俺達は顔を見合わせた。
仕事、が決まったのだ。
「今晩はこっちに泊まって行くといい。明日、家の者に送らせるよ」
「はい」
「晩ご飯は精の付くもの沢山出すから、頑張るんだよ」
叔母さんはじろり、と俺を睨んで言う。
これは明日の事か? それとも今晩の?
「部屋ははなれだから、少しくらい声出しても遠慮要らないよ」
どうも後者のようだ。
「‥あはは」
笑って応えるしか無かった。
新展開はいかがでしょうか。
お楽しみ頂ければ幸いです




