蓮視点
「気持ち悪い」「見透かされてるみたいで怖い」「睨まれてる」
今、思えば、確かに、何事にも表情を変えずに、淡々としている俺は不気味だっただろう。
黙ってるだけ、ただ見てるだけ、ただそれだけだけど。
この金色の目は人を怖がらせる。
幼かった俺は、そんな些細なことが気になってしまった。
俺の世界は、ほとんど帰ってこない両親はおらず、使用人や、両親の関係者や、何かを売りに来たものだけだった。
今考えれば、本当に狭い世界で生きてきたことを深く痛感する。
10歳の時だったか、使用人を連れて出かけた時に、逸れてしまった。
いつも、車に乗って移動していたので、土地勘もない俺は、すぐに迷ってしまった。
困り果て、ちょうど見つけた公園のベンチに座っていると、遊んでいた他の子どもや親らしき人たちは、こちらをチラチラみて、子供を呼び、逃げるように公園を去って行った。
子供ながらに、自分の瞳を怖がるのは使用人だけではなかったのだと、そう思った。
すると近くから、
「君、何してるの?」
と声がする。
公園にはもう誰もいないと思っていたので、驚きながら横を見ると、そこには宝石のが嵌め込まれた人形みたいに綺麗な女の子がいた。
銀色の綺麗な髪に、片目がルビーの色で、片目がサファイアのような色の子。
彼女はみうと名乗った。
親の仲は俺の家と同じでよくないと言っていた。
その後、無事、使用人が俺を見つけてくれた。
彼女にまた会えるかと問うと、いつもここにいるよと言われた。
同じ境遇だと思った。
そのせいだろうか、彼女のことが気になって何回も何回も通うようになった。
ある日、自分の瞳がコンプレックスであることを話すと彼女は、
「自由な猫みたいにな色ね好きだけどね〜、それに連って黒髪だから、黒猫みたい」
「黒猫が好きなのか?」
「うん…うん、そうだね、そうなのかも、猫って自由でしょ?…羨ましいよね」
呟くように、消えてしまいそうな声でそういう彼女。
俺からしたら、彼女の方がよっぽど猫みたいだった。
綺麗な銀髪に宝石のようなオッドアイの瞳、自由な姿。
全部、全部が眩しかった。
‘いつもここにいる’その言葉を信じて、ほぼ毎日通っていた。
たとえ話せなくても、姿が見えるだけでよかった。
彼女がそこにいるというだけで、俺の世界はほんの少しだけ明るかった。
だけど。
ある日を境に、彼女は現れなくなった。
時間をずらしてみても、何度も足を運んでも、あのベンチは空っぽのままだった。
銀髪も、宝石の瞳も、どこにもいなかった。
理由もわからない。
あれから、彼女の姿を見たことは、一度もない。
ただ、あのマークだけが、唯一の“繋がり”になった。
黒猫のシルエットと、《Black Cat》の文字。
あの日、彼女が描いて、俺が形にした“ふたりだけの秘密”。
親の伝手で来た会社がハッキングされた。
そこに写っていたマークは、あの日、彼女と作ったものだった。
、、、、、、、、、、
??視点
「くそっ!」
と男が叫びながら思いっきり机をダンッと叩く。
ここはNASAのコントロールルーム、また、どこかからか、Black Catの狙いがここだという情報が入った。
そして、ICCCの捜査官が派遣されてきたわけだが。
「後、少しだったのに!」
彼はICCC――国際サイバー犯罪対策機関の新人捜査官、黒瀬 蓮。
年齢十八。最年少で配属されたエリート。
先ほど、Black Catにシステムに侵入され、捕まえられる後一歩手前で罠に気づかれ、逃げられてしまった。
もちろん、データも盗まれた。
さて、彼はみう様を捕まえられるのでしょうか。