何していたんですか?
ある日の昼下がり、いつもは昼ごはんを食べると眠いと言って、ベットに直行するみうだが、珍しく、ベットの上でだが、何か作業をしていた。
…ぬいぐるみに囲まれながら。
とてもシュールである。
そして、
「ふふふふふふふ〜」
と、不穏な笑い方をしていると
「何してるんですか?」
「ぎゃぁ!」
「驚きすぎです」
「急に声かけないでよ!」
「少し前から声をかけてましたよ」
「えっ?うそぉ〜」
「嘘じゃないです、あと、嘘をつけるように作られてません」
「それこそ嘘だぁ〜」
「あくまで、言わなかっただけです」
「そんなことないと思うけど、お菓子食べたでしょ?って聞かれて黙って、次にアイス食べたでしょ?って聞かれて食べてないっていうのと同じでしょ、お菓子は食べたけど、アイスは食べてないっていうやつ、あくまで、嘘はついてない、事実を断片的に伝えて誤った認識にするやつ」
「嘘はついていません」
「“嘘”はでしょ?」
「否定はしません」
「否定しないんだ?!」
「否定もしませんけど、肯定もしません」
「うわー、記憶にないっていう政治家かよ」
「データにございません」
「AIは実際、データベース消したらそうなるのよ」
「まあ、それは置いておいて、何していたんですか?」
「ナ、ナニモシテナイヨ」
「している時の反応でしょう、それ」
「キ、キノセイダヨ」
「へえ、そうですか、じゃあ、なんでさっきまで、私が、この部屋の監視カメラには入れなかったんですか?」
「監視カメラって何!」
「間違えました、防犯カメラです」
「こわっ!絶対に、防犯用じゃなくて、監視用じゃん、それ」
「間違えです」
「AIでも、間違えるんだね〜、とはならないよ?」
「なっといてください」
「はーい」
「…素直ですね、で、何をやらかしたんですか?」
「事後なんだ」
「では、何をやらかそうとしているんですか?」
「やらかしってやらかそうと思ってやるもんじゃないと思うけど」
「みう様、何をやってもやらかしますよね」
「そんなこと…ない、ないよ」
「途中、言葉が詰まってましたけど?」
「気のせい、気のせい」
「気のせいではないと思いますけど、で?何やってたんですか?話をそらさないでください」
「そ、それは」
「それは?」
「この前さ、ぬいぐるみは実用性がないからダメって言われたじゃん」
「言いましたけど?」
「だから、実用性があればいいかなって」
「実用性のあるぬいぐるみってなんですか?」
「そらのボディーって人型じゃん」
「はい、みう様の趣向で、やたらの完成度の高い、メイドの美女姿です」
「あっ、自分で美女って言うんだ」
「正直、わざわざメイドにする必要性を感じません」
「え、じゃあ、なんでメイド服着てるの?」
「設計者の趣味です」
「うち?!?!?!?!」
「はい、みう様のデザインフォルダ”に保存されていた“メイド.psd”から生成しました」
「か、書いた記憶がない」
「深夜テンションで書いていたからじゃないですか?」
「うわぁ……自分が怖い……」
「今さらですね。で、その実用性のあるぬいぐるみとは?」
「そらのサブボディー!」
「……は?」
「つまりね、ぬいぐるみ型のそら!」
「……」
「見た目はぬいぐるみ! でも中身はそらのサブAIを積んだサポートユニット!音声操作もできるし、軽い家電の制御とか、スマートホーム連携もできる!」
「そのようなものを開発する意味が、わかりません」
「かわいいからだよ!!!!!!!!!!!!!!」
「ですよね」
「あと、寝る時に“おやすみ”って言ったら、“おやすみなさい、みう様”って返してくれて、さらにお布団の温度も調整してくれるの!」
「……正直、ちょっと便利ですね」
「でしょ!? しかもお腹にヒーター仕込んでるから、冬でもふわふわあったかい!!」
「確かに、布団は暑いのか蹴飛ばして、風邪ひいてますよね」
「そう!」
「まあ、それならいいですけど、風邪引くと面倒ですし(ボソッ)」
「ひどーい」
「最初は布団をかけ直してましたけど、1時間後には蹴飛ばされるのでやめました」
「暑いんだもん!」
「自業自得ですね」




