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輪廻の風  作者: 夢氷 城
第2章
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破滅の序曲

翌日。

灰色の雲が空を覆い、まるで太陽までもが喪に服しているかのようだった。


バレラルクの片隅にある某広場にて、レガーロ国王の国葬が静かに執り行われた。


時刻は正午を過ぎていたが、空を覆う厚い雲が陽の光を遮り、まるで日中とは思えぬほど辺りは陰鬱に沈んでいた。


真っ白な棺の前には、重々しく遺影が掲げられ、その周囲を彩るように幾重もの花束が供えられていた。


遺影に写るレガーロの顔は、厳格さと威厳に満ち、いまなお民の目に焼き付いていた。


広場に集った人々は皆、深い喪服に身を包み、重苦しい沈黙のなかで、しとしとと心を濡らしていた。


泣き崩れる者も多く、嗚咽が風とともに流れてゆく。


兵士たちの中にも、涙をこぼす者が幾人もいた。

誇り高き者たちの頬を伝う涙は、ひときわ重く感じられた。


サイゾーも、そしてあの無気力なクマシスですら、声もなく嗚咽していた。


三人の将帥は、無言のまま棺の前に立ち尽くしていた。

その背中は黙して語らずとも、王を喪った痛みを物語っていた。


エンディは、その光景を目にして初めて知った。

この王が、いかにしてこの国の礎であったのかを。


ナカタム全土が、ひとつの深い影に覆われたようだった。


厳かに、棺が土中へと降ろされる。

大きな十字の墓標が立ち、静かに雨が落ちてきた。


それは冷たい雨だった。

まるで空までもが、王の死を悼んでいるかのようだった。


「破滅の序曲が始まったな。」


静寂の中、ひときわ不謹慎な声が空気を裂いた。

口にしたのは、ダルマインだった。


彼もまた喪服に身を包み、葬儀に顔を見せていた。


その言葉に、近くにいた旧ドアル軍出身のナカタム兵団の者たちが、いっせいに顔を上げ、鋭くダルマインを睨みつけた。


「国王を失い、王子も行方不明、さらに裏切り者が数人…こんなやべえ事をどれも未然に防げなかった時点で、完全にユドラ人共が一枚も二枚も上手だな?これからは瓦解の一途を辿るだけ、ナカタムももう終わりだぜ?」


そう言い放ちながら、ダルマインはタバコを咥え、火を点けようとした。


しかし、それを見た団員のひとりが素早く手を伸ばし、タバコを取り上げた。


「あんた、そんな言い方はあんまりだろ?本来なら処刑されてもおかしくない俺たちを…レガーロ国王も、ナカタムのみんなも迎え入れてくれたんだぞ?生き直すチャンスをくれたんだぞ?相手がユドラ人だかなんだか知らないが、みんなで一緒に戦おうって気持ちにならないのか??」


その言葉に、周囲の者たちも無言のままダルマインに鋭い視線を向けた。


「なんだぁてめえら…上等じゃねえかよ?」


怒気を孕んだ声とともに、ダルマインは拳を振り上げた——そのとき、遠くから強烈な殺気が飛来した。


エスタだ。


その殺気を感じたダルマインは、拳を下ろし、舌打ち一つ。黙りこくって視線を逸らした。


モエーネとジェシカは、呆れたようにその様子を見つめていた。

しかし心の底では、国王を奪われた現実に、まだ深い痛みを抱えていた。


国全体が、闇の底に引きずり込まれたかのような、重苦しい沈黙に包まれていた。



葬儀が終わり、空からの雨がようやく止んだ。


王宮内の一室にて、三将帥が静かに集っていた。


モスキーノの様子は荒れていた。

目の奥に火が灯ったような怒気が揺れている。


「おいモスキーノ、少し落ち着けよ。」


「うるせえな、黙れよ!レガーロ国王が殺されたんだぞ!?ロゼ王子も消息不明だし、マルジェラの野郎は久しぶりに顔出したと思ったらユドラ人側に寝返ってるし…これで落ち着けるわけねえだろ!?」


怒声が響いた。モスキーノの激情は、部屋の空気を張り詰めさせた。


「テメェだけじゃねえんだよ!こっちだって腹わた煮えくり返ってるのを必死に我慢してんだよ!これからでけえ戦いが始まるのは確実だ…この国の最強戦力である俺たちが取り乱してどうするんだよ!?頭冷やせ馬鹿野郎!」


ポナパルトの怒鳴り返しに、モスキーノはついに口を閉ざした。

感情はまだ収まり切らぬまま、唇を噛みしめていた。


「フフフ…そうそう、今は内輪揉めしている場合じゃないよねえ。で、お二人さん…これからどう動く?」


バレンティノは落ち着いた口調のまま、鋭く問いかけた。


「決まってるでしょ、ユドラ人は1人残らず皆殺しだよ?」


さっきまで瞳孔を開いて怒鳴っていたモスキーノが、今は静かに笑っている。

その無邪気でさえある笑顔は、むしろ凄みに満ちていた。


その異常なまでの切り替えと狂気に、ポナパルトはわずかに背筋を凍らせた。



その頃、エンディはひとり下宿の狭い部屋にいた。


床にぺたりと座り込み、遠くの記憶をたぐるように、黙って何かを考えていた。


窓の外から差し込む、わずかな光。

曇り空のその隙間を見つめながら、エンディはゆっくりと立ち上がった。


「よし、決めた。」


その声は小さく、だが確かだった。

少年の目には、曇りの空の向こうに、戦うべき運命が映っていた。

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