表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻の風  作者: 夢氷 城
第2章
58/180

裏切りの水滴

ナカタムの演習場では、突如天を突き刺すように現れた火柱が、多くの視線を奪っていた。


「なんだ!?あれは??」


エンディが絶句する。

その眼差しは、空を切り裂いた炎の柱に釘付けだった。


訓練中の兵士たちもまた、全員が足を止め、口を開けて呆然としていた。


その中で、誰よりも早く反応したのはバレンティノだった。

血相を変え、地を蹴って駆け出す。


続いてポナパルトが声を張り上げた。


「演習は一時中断だ!」


険しい表情でバレンティノの後を追い、全速力で走り出す。


ただならぬ気配。

その場にいた誰もが、事態が只事ではないと直感していた。


「何が起こったんだろう。」


ラベスタが、空を見つめたまま小さくつぶやく。


「分からない…ちょっと俺も行ってみる!」


エンディは決意に満ちた顔で、火柱の立ち上がった方向へと走っていく。


一方、エスタは狼狽した様子で王宮の方角へ駆け出した。

ロゼの無事を案じているのだ。


「おいこらクマシス!どこだ!俺たちも向かうぞ!!」


サイゾーが怒号を響かせながら、どこかにいるクマシスを探していた。


「…俺はどうすればいいんだろう。」


その場に取り残されたラベスタは、まるで魂が抜けたようにボーッとしながら、頭の中でゆっくりと思考を巡らせていた。


 


一方、玉座の間。

そこにはレガーロとモスキーノの姿があった。


「何やら外が騒がしいな。」


「細長い火柱があがってましたよー!」


モスキーノは窓から身を乗り出し、炎が上がった方角を眺めながら、どこか楽しそうに声を弾ませる。


「気になるなら見に行っても構わんぞ。」


レガーロが、内心を見透かすように言うと、モスキーノはぎくりと反応した。


「いやいや〜、国王様を1人残してそんなことできるわけないじゃないですか〜!」


軽い口調で誤魔化すモスキーノ。

そのとき、玉座の間の扉が開き、ロゼが現れた。


「そいつの護衛は俺に任せろ。お前は現場に行ってもいいぜ?」


ロゼの言葉に、モスキーノは表情を固め、ロゼをまじまじと凝視する。


「…若がそうおっしゃるのなら。」


「ああ。“物騒な奴ら”が侵攻してきてるかもしれねえからな。」


「そうですね〜!ご安心を、賊軍は見つけ次第確実に殲滅いたします!」


キリッとした顔に切り替え、モスキーノは玉座の間を出ていった。


 


重々しい沈黙が落ちた玉座の間。

ロゼは以前とは明らかに異なる空気を纏っていた。


「貴様が私の護衛を買って出るとは、どういう風の吹き回しだ?」


レガーロの眼差しは鋭く、声には威圧が込められていた。


しかしロゼは、まるでそれを無視するかのように低く言い放つ。


「誰があんたの護衛なんかするかよ。俺はなあ、あんたに引導を渡しにきたんだ。」


「どういう意味だ?」


「国王の座を俺に譲れって言ってんだよ。本当の意味で第五次世界戦争も終結したことだし、ちょうどいい節目だと思うけどな?」


「何を言い出すかと思えば…。」


レガーロは深いため息をつき、心底呆れた様子で声を漏らす。


「――あの火柱は”例の奴ら”の仕業かもしれねえぜ?

奴らが侵略してきたら、あんたみたいなお飾り国王には何もできねえだろ?そうなりゃ国が滅びちまう。だが、俺が国王になれば上手く渡り合える!だからあんたは隠居しろや。」


「自惚れるな愚息めが。己を知れ。」


レガーロの目が鋭く細まり、その声は雷鳴のように玉座の間に響いた。


だがロゼは一歩も引かない。

鋭い眼光を保ち、口元を歪ませながら言った。


「何も分かってねえな…神々に逆らった時点で、あんたはもう詰んでんだよ…!」


静かに、しかし凍りつくような声音で言い放たれた言葉に、レガーロの顔がさらに険しくなる。


 


そのころ――


ラベスタは1人で演習場を離れ、思案を巡らせながら歩いていた。


「うーん、困った。どうしよう。エンディの後を追うべきか、ノヴァを探すべきか…。」


どちらにも踏み出せないまま、彼は足元の小石を蹴飛ばしながらフラフラとさまよっていた。


「ラベスタさーん!」


その背に、声がかかる。

振り返ると、アルファが必死に駆け寄ってくるのが見えた。

足元がおぼつかず、今にも転びそうな走り方だった。


「あれ?お前はたしか…アルファ?」


「はい!ラベスタさん、何してるんですか?」


「変な花火みたいなのが上がったせいでみんな混乱してるから、副兵長として何をすべきか考えてる。アルファは何をしているの?」


「奇遇ですね!僕も自分のやるべき事をしようと思ってました!」


ニコリと無垢な笑みを浮かべるアルファ。

だが、その笑顔の裏にあるものに、ラベスタはまだ気づいていなかった。


「やるべき事って?」


「うーん、まあ…そろそろ潮時かな?と思いまして。」


「アルファ…さっきから何言ってるの?」


「アルファなんて人間は存在しないよ。」


その瞬間、空気が凍った。


アルファが突如、ラベスタに右手の人差し指を向ける。


そして指先から放たれた一滴の水。


水滴が、弾丸のような速度で空気を裂き、ラベスタの腹部を貫いた。


「くっ…!」


何が起きたのか、理解が追いつかない。

ラベスタの体が、崩れるように地面へと倒れ込んだ。


「僕の本当の名前はアベル。これから愚かな豚どもに天罰を下す。」


アベルは冷酷な笑みをたたえながら、血の匂いに染まった風の中で立ち尽くしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ