表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
輪廻の風  作者: 夢氷 城
第1章
53/180

風と氷の交響曲

インドラを脱出した旧ドアル軍の兵士たちが、パラシュートで降下する中、ナカタムの兵士たちに次々と拘束された。


森は混乱の叫びと怒号で揺れていた。


ロゼたちは、インドラが墜落した現場へ急いだ。


炎と煙が立ち上る森の奥へ進む中、上空からパラシュートが舞い降りてきた。


目を凝らして見てみると、ラーミア、ノヴァ、ラベスタ、そしてダルマインの姿が月光に浮かんだ。


「あれ!?お前ら何してんだ!?」


ロゼが驚きの声を上げた。


「ラーミア!無事でよかった!」


モエーネがラーミアに駆け寄り、ぎゅっと抱きしめた。ラーミアの頬に安堵の笑みが広がった。


「何があったの?」


ジェシカがノヴァとラベスタを見据えて尋ねた。


「墜落の原因は分からねえ。ただ、エンディがアズバールに連れて行かれたかもしれねえ。」


ノヴァの言葉に、ロゼたちの表情が凍りついた。

空気はより一層重たくなった。


「みんな、勝手なことしてごめんなさい…。」


ラーミアが申し訳なさそうに呟いたが、ロゼは鋭く手を振った。


「話は後だ!エンディが連れて行かれた方向へ案内してくれ!」


ノヴァとラベスタが頷き、先頭に立って森の奥へ走り出した。


ロゼ、ジェシカ、モエーネが後に続いた。


ダルマインはポツンと取り残され、呆然と立ち尽くしていた。


「ちょっと俺は墜落現場に行ってくる。」


エスタが静かに言い、単独でインドラの残骸へ向かった。

その小さな背中は、地獄にて咎人に審判を下す執行者のような威圧感を放っていた。

---


一方、森の奥でエンディはアズバールと対峙していた。


だが、エンディはアズバールに近づくことすら出来ない。



四方八方から縦横無尽に襲い来る木の枝が、口から鋭い刃を突き出した蛇のように彼を追い詰める。


エンディは苦しげに息をしながらも、驚くほど軽やかに攻撃を回避していた。


まるで風そのものが彼を守っているかのように。


「ククク…俺とお前じゃ力の差が大きすぎる、天と地ほどもな。女1人守る為に、随分と無謀な真似をするんだな?」


アズバールの冷笑が森に響いた。


「無謀じゃねえよ。お前倒してこの戦いを終わらせるんだ!」


エンディの声は、揺るぎない決意で満ちていた。


「ククク…勇猛果敢…聞こえは良いが、お前はただ無駄死にするだけだぜ?」


「そんなのやってみなきゃ分からない。力の差がどれだけあったとしても、勝てる可能性が1%でもあるなら…頑張ってみる価値はあるだろ?」


エンディは誇らしげに笑った。


その笑顔が、アズバールの逆鱗に触れた。

眉間に深いシワが刻まれ、邪悪なオーラが彼から溢れ出した。


森が震え、木々が不気味にうねった。


突然、エンディの背後に三本の細い木が突き出し、獲物を締め殺す蛇のように彼の体を絡め取った。

身動きが封じられ、息さえ苦しくなる。


「おい…死ぬ前に答えろ。金髪のガキはどこにいる?」


「カインのことか?知らねえし、知ってても教えねえよ!」


エンディの強気な言葉に、アズバールの目が残忍に光った。


「ククク…あのイケ好かねえ金髪のガキ、カインっつうのか。それだけ知れりゃ十分だ。もうてめえに用はねえよ、ここで死ね。」


無数の木々が、鋭い槍となって、磁石の様にエンディに殺到した。


死が目前に迫る瞬間、エンディの心は悔しさで燃えていた。


間違いなく死ぬ。

エンディはそう確信した。


悔しくて悔しくてたまらなかった。

無力な自分に激しい怒りを覚えた。


エンディは昔に比べて、生への執着心が強くなっていた。

生きたいという気持ちが、日増しに強くなっていたのだ。


それは、ここまでの旅路でたくさんの仲間に出会い、守りたいものができて、記憶喪失の自分と向き合おうという強い意志ができたからだ。


死にたくない。まだまだ生きたい。

やり残したことはたくさんある。

こんなところで死んでたまるか。


心から、そう思った。


だが、その刹那、エンディの全身から風が迸った。

まるで魂が歌うような、鋭くも美しい突風だった。


絡みつく木を切り裂き、襲い来る枝を木っ端微塵にした。


それはまさに風の刃、カマイタチだった。


これは、無意識に放たれた力だった。


風の刃はアズバールにも迫った。


彼は咄嗟に、地獄の門を彷彿とさせるような大木の盾を生やしたが、それは一瞬で切り裂かれ、アズバールの体に無数の斬り傷を刻んだ。


致命傷には至らなかったが、血が滴り、彼の顔は動揺に歪んだ。


「て…てめえ…異能者だったのか…。」


エンディ自身、何が起きたのか理解できていなかった。


呆然と立ち尽くす彼に、アズバールが血まみれの笑みを向けた。


「ククク…ただのガキだと思って油断したぜ。名を聞いておこうか?」


「エンディだ。」


「ククク…エンディか…覚えておくぜ。」


その瞬間、森の空気が変わった。


モスキーノが、まるで風に舞う葉のように現れたのだ。


「エンディ〜、只者じゃないとは思ってたけど、まさか異能者だったとはねえ!しかも風かぁ!」


ニコニコと無邪気な笑顔で、モスキーノが言った。


「てめえは…将帥のモスキーノだな?」


アズバールが警戒の目を向けた。


「そうだよ!初めましてだね!アズバールさん?」


「モスキーノさん!?どうしてここに?」


「楽しそうな気配がしたから来ちゃった!おかげで面白いものが見れたよ!」


モスキーノの子供のような笑みに、アズバールが哄笑した。


「ククク…運がいいぜ。将帥を1人ここで、殺せるんだからなあ!」



アズバールが狂信的な笑みを浮かべて吠えた瞬間、森が一斉にうねり、膨大な数の木々が波のように動き出した。


まるで、自然に宿る精霊の怒りを買ってしまったように。


幹や枝が、まるで生き物の群れのようにエンディとモスキーノに襲いかかった。





逃げ場のない絶望的な状況。

エンディの顔は青ざめていたが、モスキーノは微動だにしていなかった。


刹那、森が静寂に包まれた。


空気が冷え、息が白く凍る。

襲いかかる木々が一瞬にして氷の彫刻と化した。


城下町を覆う森全体が、まるで冬の王国のように輝いた。


アズバールもまた、氷の檻に閉じ込められ、動けなくなっていた。


エンディは言葉を失った。

凍てつく空気の中、美しくも厳かなで、神秘的な光景が広がっていたからだ。


「え…モ、モスキーノさんも、その…異能者ってやつですか?」


「そうだよ!エンディも俺みたいに、力をコントロールできるようにならないとね!」


モスキーノは、雪遊びをする子供のような無邪気な笑みで言った。

しかしその笑顔の裏には、狂気が見え隠れしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ