空の激突 王都を守る謎の豪火
インドラの燃料室は、狭い空間に無数の回線が絡み合う、まるで生き物の心臓のような場所だった。
そんな場所で一人、ボーッと立ち尽くすラベスタを、エンディは不思議そうに見つめた。
「ラベスタ、何してるんだ?」
ラベスタは、タンクや配線をジーッと眺めながら、いつものポーカーフェイスで答えた。
「このUFOみたいな乗り物うざいからぶっ壊そうと思ってこっそり乗り込んだ。そしたらいきなり離陸したからびっくりしたよ。」
その顔、ぜんっぜん驚いてねえじゃん!
エンディは心の中でツッコミつつ、目を丸くした。
するとラベスタは真顔で配線に手を伸ばし、「えいっ」と、徐に剣を振り下ろした。
切断された配線からはバチッと火花が散り、その直後、機体がグラリと、軽い地震ほどの揺れが生じた。
「おいラベスタ!お前何やってんだよ!落ちたらどうすんだ!」
「そんなすぐ落ちないよ。それに落ちたとしても俺たちなら脱出出来るでしょ。」
ラベスタの落ち着きっぷりに、エンディは頭を抱えた。
「バカ!!ここにはラーミアが乗ってるんだぞ!!」
声を荒げるエンディに、ラベスタは一瞬だけ目を細めたが、すぐにいつものぼーっとした表情に戻った。
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一方、地上の森では、ロゼとジャクソンの戦いが火花を散らしていた。
大木が切り倒される音、刃がぶつかる金属音が響き合う。
ロゼは槍を振るうが、ジャクソンの大刀はまるで嵐のような猛攻を見せた。
木を真っ二つにする一撃、軽々と振り回す腕力、そして何より、死線を何度もくぐり抜けた手慣れた動き。
ロゼは少しずつ押されていた。
「さすがに強えな、首狩り。ところで何でインドラは飛んでるんだ?約束の時間はまだだろ?」
ロゼは息を切らしながら、なんとか平常心を保って聞いた。
「それはこっちが聞きてえよ。」
ジャクソンはイラついた声で答えた。
「はっ、お前らギルドに見捨てられたんだな?ところでアズバールはどこにいる?」
「これから死ぬお前にそんなこと教える義理はない。王子のお前の惨殺死体が見つかれば、国中に動揺が走るはずだ。」
「なるほどな、確かにそうだな。その隙をついてアズバールは都落ちを狙ってるってわけか。」
ロゼの言葉に、ジャクソンの目が一瞬鋭くなった。
次の瞬間、激しい攻防が再開された。
ロゼが槍を大振りすると、ジャクソンはそれを軽くかわし、間合いを詰めて首を狙った。
「もらった。」
ジャクソンのニヤリとした笑みに、ロゼの背筋が凍った。
「しまった…!」
絶体絶命の瞬間、エスタが二人の間に飛び込み、剣でジャクソンの大刀を受け止めた。
ガキンッと鋭い音が森に響いた。
エスタはすかさずジャクソンの腹を蹴ろうとしたが、ジャクソンは後ろに跳んでかわした。
エスタ、ジェシカ、モエーネがロゼの前に立ちはだかった。
「ロゼを殺りたいなら、まずは俺たちから殺すことだな?」
エスタが堂々と宣言した。
「主を呼び捨てか、生意気なガキだな。」
ジャクソンは嘲るように言った。
「若、私たちが命に代えてもお守りしますわ。それが王室近衛騎士団の使命!」
「ジェシカ、珍しく意見が合うじゃん?」
ジェシカとモエーネが声を揃えた。
ロゼは無表情で下を向いていた。
「ムカつくガキどもだな、4人まとめて殺してやる。」
ジャクソンが大刀を振り上げ、襲いかかろうとしたその瞬間、ロゼが動いた。
槍が閃き、ジャクソンの大刀ごと彼の体を真っ二つに斬り裂いた。
それは、ほんの一瞬の出来事だった。
ジャクソンは腰から下が切り離され、地面に這う。
「な…にが、起…きた…?」
そう呟き、ジャクソンは息絶えた。
「お見事です!若!」
モエーネが歓声を上げたが、ロゼは鋭い目で三人を睨みつけた。
空気がピリッと張り詰め、誰も動けなかった。
「俺はお前達の事を、自分の命を守るための盾だと思ったことは一度もない。この先、お前らを道具のように利用するつもりも一切無い。だから俺のために命を投げ打つような言動は今後一切許さねえ。いいな?」
ロゼの声は、鬼気迫るほど真剣だった。
ジェシカとモエーネは慌てて頭を下げた。
「はいっ!出過ぎた真似をしてしまい、申し訳ありませんでしたっ!」
「分かればいいんだよ!」
ロゼはパッと笑顔になり、いつもの明るさに戻った。
「ったく、部下にそんなこと言う王子なんて聞いたことねえぜ。」
エスタは鼻で笑ったが、口元には嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
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その頃インドラ内部では、エンディとラベスタがコックピットを目指し、突っ込んでくる旧ドアル軍の兵士たちを蹴散らしていた。
狭い通路で、それも機内では銃が使えず、敵は剣で襲いかかる。
ラベスタの剣が閃き、エンディの素早い動きが敵を翻弄した。
「おい、お前なんでコックピットの場所分かるんだ?」
エンディが走りながら聞いた。
「俺たちはインドラの設計図のコピーを持ってたからね。とりあえずこのふざけた円盤をどこかに着陸させよう。」
「そうだな。こんな上空にいたら、ラーミアを助け出せても脱出ができない。」
二人はコックピットの扉を蹴破り、飛び込んだ。
そこで、思いもよらぬ光景を目の当たりにし、2人は意表を突かれた。
敵軍の首魁ギルドが失神しており、ノヴァが操縦席に座っていたのだ。
「ノヴァ!?何やってんだお前??」
「え?なんでお前が操縦してんの?」
エンディとラベスタは目を丸くした。
「は?お前らこそ何で乗ってるんだ?」
ノヴァも同じくらい驚いていた。
「ノヴァ、お前死ぬ気?」
ラベスタの直球な質問に、ノヴァの肩がピクリと震えた。
ラベスタは畳み掛けた。
「やっぱりね、お前が考えそうなことだ。ここにはラーミアちゃんだって乗ってるし、どこかに着陸しよ?今ならまだ引き返せるよ。」
ノヴァは無言で操縦桿を握りしめたが、ついに重い口を開いた。
「これは俺の選んだ道だ。マフィアのボスとして今まで散々汚え事をしてきた。死者が出てないとは言え、王宮を襲撃したんだ。この先まともに生きていけるわけがねえ。お前達はラーミア連れてさっさと逃げろ。俺は俺のやり方でケジメをつける。」
「そんなのケジメって言わねえよ。死んで罪を償おうなんて…お前はただの臆病者だ。」
エンディの言葉に、ノヴァは嘲笑うように答えた。
「何とでも言えよ。もう今更後戻りは出来ねえ、だったら行く道行ってやるよ。お前ら逃げねえなら、俺と一緒に死ぬことになるぜ?」
その瞬間、気絶していたギルドがムクリと起き上がり、ノヴァを突き飛ばして操縦席を奪った。
「調子乗んなよクソガキども!てめえらの好きにはさせねえからな!」
ギルドは慌ててパネルを操作し、ピッピッピッと音が響いた。
すると、インドラの中心部から巨大な弾頭が現れた。
地上では、ポナパルトやバレンティノたちがその異変に気づき、空を見上げた。
エンディは状況が分からず、焦りで頭が真っ白になった。
ノヴァは舌打ちし、ギルドを睨みつけた。
ラベスタはぼーっと立っていた。
「せめてバレラルクだけでも吹き飛ばしてやる!!」
ギルドが叫び、大きなボタンを殴るように叩いた。
弾頭から深紅の光線が地上へ一直線に放たれた。
地上は眩い光に包まれ、人々は目を覆った。
だが、光線は地面に届く前に、突如出現した炎の渦に飲み込まれ、消滅した。
その炎は、まるでブラックホールの如く、破壊光線を呑み込んだ。
一体何が起きたのか。
それは誰も彼も理解が追いつかない、摩訶不思議で不可解な現象だった。
ドカンと爆発音が響き、凄まじい爆風で木々が揺れ、建物の一部が崩れたが、地上の人々はほぼ無傷だった。
しかし、爆風でインドラの弾頭が破壊され、機体に大きな穴が空いた。
インドラは炎上し、緩やかに地上へと降下し始めた。
遠くの大木の上で、カインがその光景を見ていた。
「インドラか…ふざけた名前だな。雷帝に対する宣戦布告のつもりか?科学の力じゃ神には勝てないのに、滑稽だな。」
カインはニヤリと笑い、意味深な言葉を呟いた。




