不良少年の贖罪
サイゾーは息を切らし、ロゼの居城の玉座の間に飛び込んだ。
広間の石柱が威厳を放つ中、国王レガーロが冷静な瞳で彼を見据えた。
「国王様!大変です!」
「騒々しいな。何があった?」
「エンディとロゼ王子が、インドラに向かって攻撃を仕掛けようと動き始めました!」
「なんだと??」
レガーロの眉がピクリと動き、苛立ちが顔に滲んだ。
「わあっ。ポナパルトとバレンティノが暴れてるー!」
モスキーノが窓から外を覗き、まるで祭りでも見るような楽しげな声で叫んだ。
「どいつもこいつも勝手な真似を…。」
レガーロは拳を握り、声を低くした。
「ロゼ王子が戦地へ立たれた!少し早えがオレたちも続くぞお!!」
「フフフ…楽しくなってきたねえ。」
ポナパルトとバレンティノは、兵士たちを率いて森に突入した。
瞬間、木々がうねり、無数の枝が鋭い刃のように襲いかかってきた。
兵士たちは怯え、涙目になっている者もいた。
だが、ポナパルトが拳を振り、バレンティノが剣を一閃。
すると驚くことに、目の前にあった無数の大木が一瞬にして木っ端微塵に大破した。
この2人の拳圧と剣圧は、災害顔負けの、信じられないほど凄まじい破壊力だった。
更にその力は広範囲に及び、森にまっすぐな道が切り開かれた。
兵士たちは大口を開け、眼球を剥き出しにし、呆然と立ち尽くしていた。
「俺たちがついてる!恐れるものは何もないぜ?」
「フフフ…さっさとアズバールとギルドの首をとっちゃおうか。」
ポナパルトの豪快な声とバレンティノの軽やかな笑みに、兵士たちの士気が一気に燃え上がった。
「この2人がいれば向かう所敵なしだ!!」
「誰が相手でも負ける気がしねえぜ!」
兵士たちは、まるで無敵の軍勢のように突き進んだ。
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一方、エンディたちはインドラの目と鼻の先まで迫っていた。
「今すげえ音がしたような…。」
「そうか?気のせいだろ?」
エンディとロゼが話していると、エスタが遠くに倒れている影に気づいた。
「おい、あれ給仕のアルファじゃねえか?」
「アルファ!!?」
エンディが駆け寄ると、アルファは血まみれで地面に倒れていた。
「どうしたんだよアルファ!」
「みんな…ごめんなさい…!ラーミアさん、連れ戻せなかった。ごめんなさい…!」
アルファは涙を流し、悔しそうに呟いた。
沈黙が流れたが、エンディは優しく微笑んだ。
「お前、頑張って戦ったんだな。勝てないと分かってて、立ち向かったんだな。すげえかっこいいじゃん!なかなかいねえよそんなやつ!ラーミアは俺たちが助け出すから、安心しろ!」
エンディの優しさに触れ、アルファの顔にかすかな笑みが浮かんだ。
エンディは再び走り出した。
「アルファ、お前歩けるか?」
「はい…なんとか。」
「王宮に戻って治療してもらってこい。俺たちは先を急ぐぜ?」
ロゼはアルファの傷を確認し、冷静に指示を出した。
アルファはフラフラと王宮へ向かい、ロゼたちはエンディを追った。
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一方その頃ダルマインは、ラーミアを連れてインドラの前に到着していた。
インドラの周囲では、旧ドアル軍の兵士たちが警備に当たっていた。
「あ!てめえダルマイン!」
「ダルマインてめえ生きてやがったか!この裏切り者がぁ!」
「おい待てよ!こいつラーミアを連れてるぞ!?」
兵士たちがざわつき、怒りの視線を向けた。
「ラーミアを連れてきたぜ!これでオレ様の罪はチャラだよな!?」
ダルマインが得意げに言うと、火に油を注がれた兵士たちが激昂した。
「そんなわけねえだろ!」
「お前自分がしたことわかってるのか!?」
怒った兵士たちがダルマインを押さえつけ、縄で縛り上げた。
「ここへ来たのは私の意思よ。ギルド総帥に会わせて!」
ラーミアは力強い声で言った。
兵士たちは彼女を丁重にインドラへ連行した。
大騒ぎをするダルマインは、両手を結束バンドで縛られ、首根っこを掴まれ、インドラ内部の牢屋へ連行された。
その瞬間、突如インドラが「ウィーン」と大きな音を立てて離陸を始めた。
なぜ今?
旧ドアル軍の兵士、演習場に着いたポナパルトとバレンティノ、皆が驚きを隠せなかった。
インドラへ向かっていたアズバールとジャクソンは、自分達を地上に残したまま飛び立つインドラを見上げ、怪訝な顔をした。
「な、なぜこのタイミングで!?」
「ククク…ギルド、あのタヌキ野郎…俺たちもろともバレラルクを焼け野原にするつもりか?まさかな…。」
アズバールは疑惑の目で空を見上げた。
「うおおおおおお!!」
エンディが叫び、地面を蹴った。
そして、地上から50メートル近くは離れているであろう、インドラの機体にしがみついた。
まるで、地上から強大な突風が吹いて、エンディを空へと運んでいるようだった。
なぜ俺にこんな跳躍力が?
エンディ自身も分からなかったが、ラーミアを助けることしか頭にない彼は、何も考えずに機体にしがみついた。
振り落とされないよう、珍しく慎重且つ冷静に、木登りをする猿のように機体をよじ登っていると、やがて小さな穴を見つけた。
身を縮めて穴に入り、モグラのように狭い筒の中を徘徊し、なんとか、インドラ内部へ侵入することに成功した。
そこは燃料室だった。
無数の回線が絡まる狭い空間に、なぜかラベスタがお馴染みのポーカーフェイスでぼけーっと立ち尽くしていた。
「ラベスタ!?なんでここに!?」
「あれ?お前こそ何してんの?」
ラベスタはいつものように、ぼーっとした口調で答えた。
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下界では、ロゼたちが混乱していた。
「どうなってんだよ。インドラは飛び立つしエンディは見当たらないし…。」
ロゼが焦りを隠せなかった。
「ラーミアを奪って即退散とはね…。」
「大人しく退散なんかするわけないでしょ?きっと光線とやらを撃ち込んでくるわ…。」
ジェシカとモエーネは顔を青ざめさせた。
「おい、誰か来るぞ?」
エスタが剣を抜き、身構えた。
そこへジャクソンが現れた。
「突然だがお前達、これから死んでもらうぞ。」
ジャクソンは剣を抜き、恐ろしい表情で迫った。
「ほう、首狩りジャクソンか。」
ロゼはニヤリと笑い、即座に戦闘態勢に入った。
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インドラのコックピットでは、ギルドと数人の部下がノヴァに倒され、伸びていた。
操縦席に座り、機体を動かしていたのはノヴァだった。
「部下にミルドニアへ行かせたとき、インドラの設計図のコピーを取らせておいて良かったぜ。」
ノヴァはニヤリと笑ったが、すぐに遠い目をして呟いた。
「あとはどこか人気のないところに墜落させるだけだな…深海旅行も悪くねえ。これが俺にできるせめてもの贖罪だぜ。」




