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輪廻の風  作者: 夢氷 城
第1章
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ケジメの心中

掃除を終えて、庭園に足を踏み入れたアルファは絶句した。


「あわわわわわ…。」


仲間たちが、まるで魔法にかけられたように眠っていたからだ。


ロゼはベンチに寄りかかり、エンディは地面に横たわり、ジェシカ、モエーネ、エスタも静かに寝息を立てている。


だが、アルファの胸を締め付けたのは、ラーミアの姿がないことだった。


彼女の明るい笑顔が、いつもこの場を温かくしていたのに。


「た、た、大変だぁ〜〜!!」


何かよからぬ事起こっている。

そう確信したアルファは、庭園を飛び出し、森の闇へ突き進んだ。


木の根に足を取られながらも、仲間を救いたい一心で走った。


その刹那、カインが、まるで何事もなかったかのように、幽霊の如く静かに身を起こした。

鋭い瞳が、夜の闇を切り裂くように光った。


「なるほど、睡眠薬か。サンドイッチを一口も食べてない俺が倒れても、一切不審がられなかったな。」


カインは小さく笑うと、エンディの顔を軽く蹴って起こし、森の奥へ消えた。


そのスッとした動きは、まるで森の闇と同化しているようだった。


エンディは顔を押さえ、すぐに目を覚ました。

状況を一瞬で把握し、仲間たちに呼びかけた。


「おいみんな!!起きろよ!!」


エンディの声が庭園に響き、ロゼやジェシカを揺り起こした。


皆、額に汗を浮かべ、微かに震えていた。

普通の眠りではない。


一方、森の奥深く、ラーミアは一人で歩みを進めていた。


インドラへ向かう道は、茨と木の根で覆われていた。

彼女の瞳には、固い決意とほのかな寂しさが宿っていた。


「これで良かったんだよね…。」


その呟きは、風に溶けた。

仲間を守るため、自分を犠牲にする覚悟が、彼女の心を重くしていた。


「エンディ…また会いたいなあ。」


静かな声が森に響いた瞬間、背後から慌ただしい足音が近づいてきた。


「ラーミアさーん!!」


アルファだった。

服は泥だらけ、顔には擦り傷。

幾度も転んだのだろう、息を切らしながら追いついた。


「アルファ君!?」


「何してるんですか!戻りましょうよ!」


アルファがラーミアの腕を掴む。

だが、彼女は静かに首を振った。


「だめだよ。そんなことしたらみんなに迷惑かかっちゃう。」


「エンディさん達は迷惑だなんて思ってないですよ!1人で行くなんて無茶です!」


ラーミアの声が、鋭く響いた。


「こうするしかないの!もう決めたことだから邪魔しないで!」


その強い言葉に、アルファは一瞬たじろいだ。

だが、すぐに目を輝かせた。


「そ、そこまで言うなら…ボクも一緒に行きます!」


ラーミアが言葉に詰まるその時、森の闇から大きな影が現れた。


ダルマインだ。

ニヤリとした笑みが、狡猾な狼のように映った。


「ラーミアちゃ〜?、探したぜえ?」


その声に、ラーミアは息を呑んだ。


「提督さん?何してるの?」


ダルマインは答えず、彼女を乱暴に抱え上げた。


「お前をギルドに引き渡す。悪く思うなよ?」


「ちょっと待って!あなたがそうしなくても、私は今からインドラに向かうつもりだったのよ!?」


「は?どういうことだ??」


ダルマインが怪訝な顔をした瞬間、アルファが彼の服を両手で掴んだ。


「ラ、ラーミアさんを…はなせ…!」


小さな身体に宿る勇気。


だが、ダルマインは下品に笑った。


「はあ?なんだこのガキ!」


一瞬にして、ダルマインの蹴りがアルファの腹に炸裂した。

アルファは地面に倒れ、苦痛の声を上げた。


「アルファ君!!ちょっとあなた、なんてことするの!やめて!」


「うるせえ!早く行くぞ…痛えっ!!」



アルファに腕を噛みつかれたダルマインは、断末魔のような叫び声をあげた。



「ラーミアさんに触るな!!」


「このクソガキ…!!」


憤慨したダルマインはアルファを蹴り飛ばし、何度も何度も執拗に踏みつけた。




アルファは呆気なく血に染まり、気を失った。


「お願い!もうやめて!アルファ君が死んじゃう!」


ラーミアの涙声に、ダルマインはようやく足を止めた。


「お願いおろして!アルファ君を治さなきゃ!」


「うるせえ!そんな暇はねえ!」


ダルマインはラーミアを片手で抱えたまま、急いでインドラへと向かって行った。




---


庭園では、仲間たちが次々に目覚めた。


「ちくしょう、睡眠薬か…イカついぜ。」

ロゼが悔しそうに言った。



「ラーミア…やっぱり自分だけ犠牲になろうと…。」

ジェシカは胸を痛めていた。



「カインがいないな…。あいつは一足先にラーミアを追ったのか?」

エスタはまだ少し眠たそうで、目を擦っていた。


エンディは黙り込み、深刻な表情を浮かべた。

次の瞬間、彼は屋上の縁を飛び越え、単身、森の闇へ突進した。


「待てエンディ!俺たちも行くぞ!」


ロゼ、ジェシカ、エスタ、モエーネが後を追った。





「お待ちくださいロゼ王子!今急に動くのは危険です!」

サイゾーの制止の声は届かなかった。



「やばいぞやばいぞ…大変な事態だ…!」

サイゾーは青ざめ、玉座の間へ急いだ。


その頃、森の別の地点では、アズバールとジャクソンが木々の間から様子を窺っていた。


「あの黒髪のガキ、生きてやがったのか。金髪のガキはいなかったな。」


「ええ。しかしラーミアを連れずにインドラの方へ向かうとは…奴ら、奇襲でもする気ですかね?」




「ククク…だろうな、こっちの条件を踏み倒す気だ。良い度胸じゃねえかよ。見せしめに、避難所にいるナカタム人を皆殺しにするか。」

アズバールは冷たく笑った。


彼が手をかざすと、避難所を包囲する巨木がうねり始めた。


アズバールは遠く離れた木も操ることができるようだ。

その場所の様子も、自らが出現させた木を通して目視することができるのだ。


無数の枝が、口から刃を突き出した蛇のように避難所へと突進した。


だが、避難所に到達するわずか直前に、全ての枝が巨木ごと一瞬で炎に包まれ、灰と化した。

まるで、敢えてその直前を狙ったかのようだった。


炎は、アズバールを嘲笑う悪魔のように燃え盛っていた。


「まさか…!」


アズバールは確信した。

憎らしいカインが近くにいることを。


「アズバールさん…どうかしましたか?」


「ジャクソン、俺たちもインドラへ向かうぞ。」


「?…はい。」


二人は、演習場へ急いだ。




一方、インドラのコックピットでは、ギルドが退屈そうに椅子に座っていた。


「もうすぐで12時間経つが、なんの動きもねえな?アズバールは出て行ったまま帰ってこねえし。」


そこへ部下が飛び込んできた。


「ギルド総帥!」


「なんだようるせえな!」


「申し訳ございません…。捕らえていたノヴァファミリーのメンバー14名が、いつのまにか脱走していました!」


「そんなどうでもいい事いちいち報告してくんな!大体、てめえら何でマフィアなんか捕らえてきたんだ?拷問して吐かせたい事もねえし、人質にもならねえじゃねえか!」


ギルドの怒鳴り声に縮こまった瞬間、部下の男は、突然何者かに背後から殴られ、倒れた。


「お、おいどうした!?」


ギルドが叫ぶと、ノヴァが姿を現した。


「あいつらは俺が逃したんだ。かつての部下を巻き込むわけにはいかねえからな。」


「部下?巻き込む?どういう意味だ?てかてめえ誰だよ!」


するとノヴァは、ギルドの顎を正確に打ち抜き、蹴り上げた。


「さあ、これから俺と心中してもらうぜ?旧ドアル軍よ。」

ノヴァはニヤリと笑っていたが、目はどこか虚で、心此処に在らずだった。


まるで何かに取り憑かれているように。


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