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輪廻の風  作者: 夢氷 城
第1章
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自己犠牲の精神

レガーロの登場で、屋上庭園の空気が凍りついた。


一同が慌てて頭を下げ、エンディも空気を読んで頭を下げた。


しかしカインだけは偉そうな態度で足を組み、動かず座っていた。


「俺もいるよー!」

レガーロの背後からモスキーノが笑顔で現れた。


「招かれざる客だったか?それにしても、賊軍にこうも簡単に侵入されるとは情けない。なんだこの有様は?」

レガーロがアズバールの巨木に覆われた城下町を見渡し、吐き捨てた。


「ふん、だったらあんたが戦えよ。部下に命を捨てて戦えと言うなら、まずあんたが命を捨てて戦地に行けよ。」

ロゼがレガーロの胸ぐらを掴み、怒鳴った。

しかし、レガーロは厳格な表情を崩さず、動じていなかった。


「国王たるもの、断じてそのようなことはしない。貴様は何も分かっていないな。」


「今までずっと玉座の間にこもってたんだろ?将帥に命守ってもらいながらよ。戦時中にお母さんが病気になった時も、死んだ時も、ずっとそうだったもんな。何が国王たるものだよ!情けねえなあ!」


ロゼがさらに掴みかかると、モスキーノが仲裁に入った。


「まあまあロゼ王子、国王様はあなたのお父上様でもいるわけですからそのような真似は…。」

半笑いでロゼの腕を掴んだ。


エンディは二人の間に深い溝を感じ、原因を察した。


「お前はまだその事を恨んでいるのか。戦場で死んでいった兵士たちにも家族がいる、帰りを待っていた者達は死に目にもあえない。それなのに国王である私が妻に会うわけにはいかないだろう?」

レガーロが淡々と答えた。

ロゼが再び掴みかかろうとした。


エンディが間に入り、レガーロを真っ直ぐ見つめた。



「あの…その理屈はおかしいと思います。大切な人の最後を看取れない人たちを気遣う気持ちは素晴らしいと思います。でも自分の愛する家族が目の前で苦しんでいるのに何もしないのは、国王とか以前に人としておかしいと思います!」

緊張しながらも、はっきりと言い切った。


サイゾーとクマシスが青ざめ、モエーネとジェシカが息を呑んだ。


モスキーノがエンディを見てクスリと笑った。


「たしかエンディだったな。私に意見をするとは、なかなか見どころがある。だが、王には王たる者の仕来たりがある!お前が口を出すべきではない!」

レガーロの言葉に、エンディは押し黙った。


「ところでよ、あんた何しに来たんだよ?わざわざ嫌味を言いにここまで来たわけじゃねえだろ?」

ロゼが問う。


「お前達があまりにも油断してるから激励に来たのだ。今から1時間後、あのインドラとか言うふざけた飛行物体に総攻撃を仕掛ける。旧ドアル軍は1人残らず徹底的に殲滅する!!」レガーロが気迫を漲らせた。


「ちょっと待てよ!そんなことしたら多くの人間が死ぬぞ!アズバールの能力の恐ろしさはあんたも知ってんだろ!?」ロゼが声を荒らげた。


「ポナパルトとバレンティノが前に出る。だから被害は最小限におさまるはずだ。それに、国を守る為なら多少の犠牲はやむを得ない。ラーミアを奪われるわけにもいかんしな。」レガーロはそう言い残し、去った。


「王宮は俺が死守するから安心してねー!」

モスキーノが笑顔で言い、レガーロを追った。


「くそっ!一体どうすれば!?」

ロゼは頭を抱え、冷静さを失った。


「俺たちも一緒に戦いましょう。」

エンディの言葉に、皆が視線を向けた。


「そもそも、最初からそのつもりだったんじゃないのか?」カインが呆れた表情で言った。


「もちろん戦うつもりだったさ。期限が過ぎる数分前、奴らが油断している隙をついて俺たちでこっそりインドラに潜入し、アズバールを暗殺する。そしてインドラの燃料室を破壊する。そうすりゃ誰も死なずに済むと思ったんだけどな…。総攻撃なんか仕掛けたら、こっちもただじゃ済まないぜ。」


「誰も死なずに済むか。とんだ甘ちゃんだな?そんな保守的な考えじゃ何も守れないぜ?」

カインが嘲笑うように言った。


「たしかにその通りだな。でも俺は、もうこれ以上国のために戦って死ぬ人間を見たくないんだよ。」


ロゼの切なげな表情に、ジェシカとモエーネの胸が締め付けられた。


「もうやるしかない。みんなで力を合わせて戦おう!この国もラーミアも、絶対に守り抜いてみせる!」

エンディが覚悟を決め、拳を握った。


だがその直後、エンディは突然、原因不明の猛烈な眠気に襲われ、パタリと倒れて眠ってしまった。


エンディだけではない。

皆がフラフラと倒れはじめ、椅子や壁にもたれかかったり、床にへたり込んだり、各々眠り始めた。


「サンドイッチに入れた睡眠薬がようやく効いてきたみたいね。」ラーミアが皆の眠りを確認し、呟いた。


「ごめんねみんな。やっぱり私1人のせいで大勢の人が巻き込まれるのは耐えられない。だから行くね。旧ドアル軍のみんなには、みんなに危害を加えたら協力しないって交換条件を出すから安心して。」


ラーミアは仰向けに眠るエンディの前にしゃがみ、頬を優しく撫でた。


「巻き込んじゃってごめんね。私は大丈夫だから、あなたはあなたの人生を生きて欲しい。遭難した時、私を背負って病院まで連れて行ってくれたね。ミルドニアでは私のために、命懸けで戦ってくれたね。いつも私のことを考えてくれて…私はその気持ちが本当に嬉しかったよ。」涙がエンディの顔に落ちた。


そして立ち上がり、涙を拭った。

「記憶を取り戻して幸せになってね。さようなら。」

ラーミアは笑顔でそう言い残し、静かに去った。

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