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輪廻の風  作者: 夢氷 城
第1章
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国家転覆と卑劣漢再来

「うわあ!なんだこれ!?」

エンディが窓から樹海と化した城下町を覗き、お茶を零した。


「ちょっと!何よこれ!?」


「どうなってるの…?」


ジェシカとラーミアが口を覆い、呆然とした。


「間違いねえ、アズバールの仕業だな。」

カインは動乱の中でも冷静だった。


「うおっ、なんだよこれ!すげえぇ!!」

クマシスが目を輝かせ、密林へ飛び出した。


「あ!ずるいです〜クマシスさん!ボクも〜!」

アルファがトコトコ追いかけ、楽しげに森へ消えた。


「ちょっとアルファ君!危ないよ!」

ラーミアが窓から身を乗り出し、叫んだ。


「あいつら…この国最後の馬鹿だな…。」

サイゾーが呆れ果て、呟いた。


ロゼは兵を率いて王宮へ戻ろうとしたが、密林に迷い込み、方向を見失った。


「くそっ!どこへ進めばいいんだ!?」

苛立ちを滲ませるロゼに、エスタとモエーネが気遣う視線を向けた。


演習場から甲高い声が響き渡った。


「聞こえるかあ?ナカタムのクソども!」

インドラの拡声器を通したギルドの声だった。


「この声…ギルド総帥だわ!」


「ええ、間違いないわね。」


ラーミアとジェシカが即座に反応した。


「城下町を覆い尽くしている木は見えるか?こっちがその気になれば王族も兵士も、避難している国民も、容易く虐殺できるぜ?てめえらの命はすでに俺たちが握っているんだ!」

ギルドの声が不気味に響く。



「命を握っている…そうか、アズバールは木を操ると聞いたことがある。この無数の木でいつでも俺たちを殺せると脅しかけているんだな…!」

サイゾーが悔しげに歯を食いしばった。


「死にたくねえよなぁ?じゃあラーミアをこっちに引き渡せ!そうすりゃ大人しく引き上げてやるし、城下町を覆い尽くしている木も元に戻してやる!期限は今から12時間後だ!それを過ぎたら…皆殺しだぜぇ!?」

ギルドが薄ら笑いを浮かべ、拡声器を切った。


「これでいいんだな?アズバール。」

ギルドが振り返ると、アズバールとジャクソンが立っていた。


「アズバールさん、なぜ半日も猶予を与えるんですか?」ジャクソンが尋ねた。


「時間が長ければ長いほど、精神的動揺は大きくなるもんだぜ?まあ、ラーミアを渡そうが渡さまいが、バレラルクが焼け野原になる事に変わりはねえけどな。」アズバールが冷酷に言い放ち、ギルドの背筋が凍った。


「はっ、まあいい。国民を人質にとってれば目障りな3将帥も手出しはできねえだろ。で?お前はこれからどう動くんだ?」ギルドが問う。


「俺はこれから外に出る。どうしても殺してえ野郎がいるんでな。」アズバールが答えた。


「はぁ!?てめえ馬鹿か!?てめえは絶対に動いちゃダメだろ!将帥の誰かと鉢合わせたらどうする!?てめえが殺されたら俺たちの世界征服の野望はどうなるんだよ!!」ギルドが激昂し、喚いた。


「おい、誰が誰に殺されるって?」

アズバールが血走った目でギルドを睨みつけ、ギルドは尻もちをついた。


ジャクソンも息を呑んだ。


「ククク…心配すんな。隠密行動は得意だからな。」アズバールがインドラのコックピットを後にした。ジャクソンが恐る恐る後を追う。


「アズバールさん…殺したい相手ってまさか…?」


「このオレをコケにしやがったあの金髪だけは絶対に許さねえ。必ず殺す。」

アズバールの目は殺意に燃えていた。


インドラの周囲は巨木に囲まれ、旧ドアル軍の戦闘員が巡回していた。


避難施設には機関銃を持った兵士が潜入し、怯える子供たちのすすり泣きが響く。


ロゼの居城では、ギルドの声明に皆が憤激した。


「何がラーミアを引き渡せだ!ふざけんな!」

エンディが怒りを爆発させた。


「でも、私が言うこと聞けばみんな助かるんでしょ…?」ラーミアが他者を想う優しさで呟いた。


「だめだラーミア!あんな奴らの言いなりになる必要はない!」エンディが叫んだ。


「ラーミアを渡せば引き上げる…か。あのギルドって男がそんな約束を守るとは到底思えねえな。」

カインが冷たく分析した。


「カインの言う通りね。引き上げるフリをして何か仕掛けてくるに違いないわ。」

ジェシカが顎に手を当て、推測した。


サイゾーとクマシスは無言で険しい顔をしていた。


「ボク…ラーミアさんがいなくなるなんて嫌だ…!ラーミアさんがいなくなったら、誰がボクに仕事教えてくれるんですか?みんなでラーミアさんを守って戦いましょうよ!」アルファが涙ながらに訴えた。


「アルファ君…。」

ラーミアがその優しさに心を温めた。


「よく言ったぜアルファ!やっぱお前、男だな?」

ロゼがエスタとモエーネを連れて入室し、感心した。


「若!無事だったんですね!」

ジェシカが安堵した。


「ああ。道に迷うし歩きづれえし大変だったぜ?」ロゼが疲弊した様子で答えた。


「ラーミアの能力はこの国に必要だ。敵に渡すわけにはいかねえ。だがな、それ以前にラーミアはナカタムの大切な国民だ。愛すべき国民を下劣な侵略者になんか絶対に渡さねえ。国民1人守れねえようじゃこの先誰も守れねえし救えねえだろ?だから何がなんでも俺たちで守り抜くぞ!」

ロゼが気迫を漲らせた。


「まっ、当然だよな?」

エスタがすかした態度で言った。


「ラーミアはお友達だもん!絶対私が守るんだから!」


「ちょっとモエーネ?ラーミアは私の友達よ?」


モエーネとジェシカが張り合った。


「ラーミアの為なら俺はいつでも死ぬ覚悟はできてるぞぉ!!」


「クマシス、お前ラーミアのこと好きだったんだな?」


さりげなく心の声を吐露したクマシスに、サイゾーが疑惑の目を向けた。


「絶対守るからな。」エンディがラーミアの手を握り、優しく言った。


「エンディ…みんな…ありがとう…。」

ラーミアが涙を流し、感謝を述べた。


皆の温もりに、部屋に柔らかな風が吹くようだった。


その頃ダルマインは、密林の木の上によじ登り、震えていた。


「ちくしょうギルドの野郎…俺様に殴られたこと絶対に根に持ってるはずだ…見つかったら殺されるぜ…でもどこに逃げれば…」


ダルマインはガタガタ震えながら、今後の自分の身の振り方を真剣に考えていた。


そして、良い考えを思いついてピタリと震えが止まり、卑劣な笑みを浮かべた。


「そうか…もう一回ラーミアを拐ってあいつらに引き渡せばいいんだ…!そうすりゃ流石に許されるはず!!ギルドのことだからラーミアを手に入れたら例の光線をバレラルクにぶっ放すはずた…そして王族と3将帥が死ねば…天下を取ったも当然!!ドアル王国復興!!そしてオレ様は再び高級官僚へと返り咲く!!」

ダルマインの目は、卑怯者特有の狂気の光をギラギラに放っていた。

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