国家転覆と卑劣漢再来
「うわあ!なんだこれ!?」
エンディが窓から樹海と化した城下町を覗き、お茶を零した。
「ちょっと!何よこれ!?」
「どうなってるの…?」
ジェシカとラーミアが口を覆い、呆然とした。
「間違いねえ、アズバールの仕業だな。」
カインは動乱の中でも冷静だった。
「うおっ、なんだよこれ!すげえぇ!!」
クマシスが目を輝かせ、密林へ飛び出した。
「あ!ずるいです〜クマシスさん!ボクも〜!」
アルファがトコトコ追いかけ、楽しげに森へ消えた。
「ちょっとアルファ君!危ないよ!」
ラーミアが窓から身を乗り出し、叫んだ。
「あいつら…この国最後の馬鹿だな…。」
サイゾーが呆れ果て、呟いた。
ロゼは兵を率いて王宮へ戻ろうとしたが、密林に迷い込み、方向を見失った。
「くそっ!どこへ進めばいいんだ!?」
苛立ちを滲ませるロゼに、エスタとモエーネが気遣う視線を向けた。
演習場から甲高い声が響き渡った。
「聞こえるかあ?ナカタムのクソども!」
インドラの拡声器を通したギルドの声だった。
「この声…ギルド総帥だわ!」
「ええ、間違いないわね。」
ラーミアとジェシカが即座に反応した。
「城下町を覆い尽くしている木は見えるか?こっちがその気になれば王族も兵士も、避難している国民も、容易く虐殺できるぜ?てめえらの命はすでに俺たちが握っているんだ!」
ギルドの声が不気味に響く。
「命を握っている…そうか、アズバールは木を操ると聞いたことがある。この無数の木でいつでも俺たちを殺せると脅しかけているんだな…!」
サイゾーが悔しげに歯を食いしばった。
「死にたくねえよなぁ?じゃあラーミアをこっちに引き渡せ!そうすりゃ大人しく引き上げてやるし、城下町を覆い尽くしている木も元に戻してやる!期限は今から12時間後だ!それを過ぎたら…皆殺しだぜぇ!?」
ギルドが薄ら笑いを浮かべ、拡声器を切った。
「これでいいんだな?アズバール。」
ギルドが振り返ると、アズバールとジャクソンが立っていた。
「アズバールさん、なぜ半日も猶予を与えるんですか?」ジャクソンが尋ねた。
「時間が長ければ長いほど、精神的動揺は大きくなるもんだぜ?まあ、ラーミアを渡そうが渡さまいが、バレラルクが焼け野原になる事に変わりはねえけどな。」アズバールが冷酷に言い放ち、ギルドの背筋が凍った。
「はっ、まあいい。国民を人質にとってれば目障りな3将帥も手出しはできねえだろ。で?お前はこれからどう動くんだ?」ギルドが問う。
「俺はこれから外に出る。どうしても殺してえ野郎がいるんでな。」アズバールが答えた。
「はぁ!?てめえ馬鹿か!?てめえは絶対に動いちゃダメだろ!将帥の誰かと鉢合わせたらどうする!?てめえが殺されたら俺たちの世界征服の野望はどうなるんだよ!!」ギルドが激昂し、喚いた。
「おい、誰が誰に殺されるって?」
アズバールが血走った目でギルドを睨みつけ、ギルドは尻もちをついた。
ジャクソンも息を呑んだ。
「ククク…心配すんな。隠密行動は得意だからな。」アズバールがインドラのコックピットを後にした。ジャクソンが恐る恐る後を追う。
「アズバールさん…殺したい相手ってまさか…?」
「このオレをコケにしやがったあの金髪だけは絶対に許さねえ。必ず殺す。」
アズバールの目は殺意に燃えていた。
インドラの周囲は巨木に囲まれ、旧ドアル軍の戦闘員が巡回していた。
避難施設には機関銃を持った兵士が潜入し、怯える子供たちのすすり泣きが響く。
ロゼの居城では、ギルドの声明に皆が憤激した。
「何がラーミアを引き渡せだ!ふざけんな!」
エンディが怒りを爆発させた。
「でも、私が言うこと聞けばみんな助かるんでしょ…?」ラーミアが他者を想う優しさで呟いた。
「だめだラーミア!あんな奴らの言いなりになる必要はない!」エンディが叫んだ。
「ラーミアを渡せば引き上げる…か。あのギルドって男がそんな約束を守るとは到底思えねえな。」
カインが冷たく分析した。
「カインの言う通りね。引き上げるフリをして何か仕掛けてくるに違いないわ。」
ジェシカが顎に手を当て、推測した。
サイゾーとクマシスは無言で険しい顔をしていた。
「ボク…ラーミアさんがいなくなるなんて嫌だ…!ラーミアさんがいなくなったら、誰がボクに仕事教えてくれるんですか?みんなでラーミアさんを守って戦いましょうよ!」アルファが涙ながらに訴えた。
「アルファ君…。」
ラーミアがその優しさに心を温めた。
「よく言ったぜアルファ!やっぱお前、男だな?」
ロゼがエスタとモエーネを連れて入室し、感心した。
「若!無事だったんですね!」
ジェシカが安堵した。
「ああ。道に迷うし歩きづれえし大変だったぜ?」ロゼが疲弊した様子で答えた。
「ラーミアの能力はこの国に必要だ。敵に渡すわけにはいかねえ。だがな、それ以前にラーミアはナカタムの大切な国民だ。愛すべき国民を下劣な侵略者になんか絶対に渡さねえ。国民1人守れねえようじゃこの先誰も守れねえし救えねえだろ?だから何がなんでも俺たちで守り抜くぞ!」
ロゼが気迫を漲らせた。
「まっ、当然だよな?」
エスタがすかした態度で言った。
「ラーミアはお友達だもん!絶対私が守るんだから!」
「ちょっとモエーネ?ラーミアは私の友達よ?」
モエーネとジェシカが張り合った。
「ラーミアの為なら俺はいつでも死ぬ覚悟はできてるぞぉ!!」
「クマシス、お前ラーミアのこと好きだったんだな?」
さりげなく心の声を吐露したクマシスに、サイゾーが疑惑の目を向けた。
「絶対守るからな。」エンディがラーミアの手を握り、優しく言った。
「エンディ…みんな…ありがとう…。」
ラーミアが涙を流し、感謝を述べた。
皆の温もりに、部屋に柔らかな風が吹くようだった。
その頃ダルマインは、密林の木の上によじ登り、震えていた。
「ちくしょうギルドの野郎…俺様に殴られたこと絶対に根に持ってるはずだ…見つかったら殺されるぜ…でもどこに逃げれば…」
ダルマインはガタガタ震えながら、今後の自分の身の振り方を真剣に考えていた。
そして、良い考えを思いついてピタリと震えが止まり、卑劣な笑みを浮かべた。
「そうか…もう一回ラーミアを拐ってあいつらに引き渡せばいいんだ…!そうすりゃ流石に許されるはず!!ギルドのことだからラーミアを手に入れたら例の光線をバレラルクにぶっ放すはずた…そして王族と3将帥が死ねば…天下を取ったも当然!!ドアル王国復興!!そしてオレ様は再び高級官僚へと返り咲く!!」
ダルマインの目は、卑怯者特有の狂気の光をギラギラに放っていた。




