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輪廻の風  作者: 夢氷 城
第1章
40/180

500年の呪いと若者達の覚悟


エンディとカインは、パニス町の喧騒を抜け、王宮の敷地内にそびえるロゼの居城に足を踏み入れた。


城内はまるで宝石箱をひっくり返したかのよう。

壁には色とりどりの装飾品が並び、きらびやかな光が反射して目を眩ませる。


天井には巨大なシャンデリアが輝き、ロゼの派手好きな性格をそのまま映し出していた。


エンディはまばゆさに目を細めながら、キョロキョロと辺りを見回した。


部屋にはすでにジェシカ、ラーミア、ダルマインが集まっていた。


エンディは地下通路でのノヴァたちとの出会いを、細部まで丁寧に説明した。


ノヴァとラベスタの壮絶な過去、彼らの復讐の決意、そしてエンディ自身の「王宮で受け止める」という言葉まで。


ロゼは腕を組み、眉を上げた。


「なるほどな。俺も今しがた、ダルマインから奴らが地下に潜伏していたことを聞いたところだ。それを聞いたお前が血相変えてパニス町に走って行ったと聞いたからよ、今から軍隊率いてカチコムところだったんだぜ?」


その言葉に、エンディは少し気まずそうに頭をかいた。


ロゼの心配そうな視線が、意外にも温かく感じられた。


ダルマインが偉そうに胸を張った。


「ノヴァファミリーは敗戦国の生き残りが集まった多国籍組織だったってわけか。しかもトップの2人がプロント人とはなあ。」


ラーミアが静かに頷き、深刻な表情を浮かべた。


「確かに、この国にはいまだに"純血至上主義"が根強く残っているわ。昔ほどではないけど…。」


ジェシカが真剣な目で続けた。

「憎しみの連鎖ね…戦争は終わっても、戦勝国であるナカタム人を恨む人たちは旧ドアル軍の他にもいるってことね。」


ロゼの声が部屋に響いた。

「俺は前から世界戦争が全ての諸悪の根源だと思っていた。欲深い権力者達の傲慢なプライドのためにどれだけの人間が犠牲になったか…。世界統一なんて下らねえ大義名分掲げて、国の為だとか戦死した英霊達の無念を晴らす為だなんだの言って国民まで巻き込んでよ…。そんな無意味な戦いを500年も続けやがって!」

ロゼは感情を抑えきれず、拳で机を力強く叩いた。


バンッという音が部屋に響き、シャンデリアの光が揺れた。


その瞬間、誰も気づかなかった小さな影がロゼの横に現れた。

「おいロゼ、感情的になるなよ。一国の王子ならもっとビッとしてろ。」

生意気な口調の幼い男の子だった。


エンディは目を丸くした。


この子、どこから湧いてきたんだ?

可愛げのない態度に、思わず首をかしげた。


ダルマインが目を吊り上げ、指の関節をポキポキ鳴らした。

「何だあこのガキ?ロゼ王子に向かって無礼だぜ?よし、オレ様がお仕置きしてやろう!」


ジェシカが冷静に口を挟んだ。

「あら団長、いつの間に?」


ロゼがニヤリと笑い、誇らしげに紹介した。


「おう、紹介するぜ。こいつは王室近衛騎士団団長、エスタだ!まだ12歳だけどよ、めちゃくちゃ強えぜ?」


「じゅ、12歳!?」


「こんなガキが団長だとぉ〜!?」


エンディとダルマインが同時に叫び、目と耳を疑った。


そこへ、弾けるような声が響いた。


「そして私が副団長のモエーネよ!」

ピンクに染めたツインテールを揺らし、派手な少女が部屋に飛び込んできた。


彼女の華やかな雰囲気は、まるで部屋のギラギラ感に負けない輝きを放っていた。


ジェシカはモエーネを見るなり、露骨に嫌そうな顔をした。


モエーネはジェシカに鋭い視線を投げ、嫌味を込めて言った。

「話は聞いたわ。ジェシカ、あんた1年もノヴァファミリーに潜伏してたくせに何も知らなかったのね?」


ジェシカが即座に切り返した。

「あら、何もしていないあなたに言われたくないわ?見た目ばかり気にしてチャラチャラしてる口だけ副団長さん?」


二人の視線が火花を散らし、部屋の空気が一気にピリついた。


ロゼが声を張り上げた。

「よさねえかお前ら。今は内輪揉めしてる場合じゃねえだろ?」


「はーい!」

モエーネがロゼに満面の笑みで返事し、ジェシカは渋々黙った。


ジェシカがエンディに鋭い視線を向けた。


「あなたノヴァ達に"受け止めてやる"って言い放ったらしいけど、どういうつもりなの?」


エンディは迷いなく答えた。

「あいつらの憎しみは話し合いじゃ到底解決できないくらい根深いと思う。だったら、その憎しみ全部ぶちまけて向かってくるあいつらに、こっちも思いっきりぶつかって行けばいいと思った!拳で語り合えば分かり合えるかもしれないだろ!」

彼の目は清々しい光を放っていた。


モエーネが鼻で笑った。

「あんた新入りのくせに気合い入ってるじゃん。でも少し考えが甘いんじゃない?あいつらはクーデターを起こそうとしてるのよ?」


エスタが冷たく続けた。

「これから始まるのは"拳の語り合い"なんかじゃなくて"殺し合い"だぜ?分かり合うなんて不可能だね。」


エンディは言葉に詰まり、返す言葉を見つけられなかった。


すると、ロゼが突然、大きな声で言い放った。

「いいじゃねえかよ。オレはエンディの考え方好きだぜ?よし決めた!今回の戦い、お前が指揮を取れ!」


「え〜〜!?指揮って、俺が!?」

エンディは目を丸くし、完全に動揺していた。


「ラーミアを守る、苦しんでる人達を救う、敵の憎しみを受け止めて分かり合う。全部お前が言った言葉だ。口で言うだけなら誰にでも出来るんだよ。大事なのはどう行動に移すかだぜ?お前の器量を俺に見せてくれよ。」

ロゼの声は珍しく厳しく、鋭い眼光がエンディを貫いた。


ジェシカとモエーネが即座に反発した。

「若、いくらなんでもそれは無茶ですわ?」

「そうですよ!こんな頼りなさそうな男に何が出来るって言うんですか?」


ロゼは一歩も引かず、険しい表情で言い切った。

「これは決定事項だ。異論は認めねえ!」

その言葉に、部屋の空気が一瞬で凍りついた。


エスタがポケットに手を突っ込み、ニヤリと笑った。「ロゼが言うならそれでいいんじゃねえの?もし失敗したらエンディは口だけ男だったって事で、マフィア共々皆殺しにしてやるぜ。」


ダルマインは心の中で毒づいた。

主君を呼び捨てにするなんて…いけすかねえガキだぜ!


その時、ラーミアがエンディの右手を両手でギュッと握った。


「大丈夫、エンディならできるよ?私は信じてる。」彼女の優しい笑顔と真っ直ぐな瞳に、エンディの心が揺れた。


さっきまで不安でいっぱいだったエンディの目が、一瞬で力強く輝いた。

「約束する。あいつらは絶対に俺が止めるし、誰も死なせない。」その声は、部屋中に響き渡った。


ロゼが頷き、指示を飛ばした。

「頼りにしてるぜ?カインとダルマイン、お前らはエンディの援護をしろ。」


「わかった。」カインは短く答えた。


「えぇ!?オレもですかい!?」

ダルマインが情けない声を上げた。


ロゼは続けた。

「これから市民達を避難させろ。軍、保安隊、騎士団は万が一の時の為にいつでも出撃できるよう近くに待機させておけ。」


ジェシカとモエーネは「はい!」と元気よく返事をしたが、エスタは気だるそうに手を上げただけだった。


ラーミアが小さな声で尋ねた。

「あの、私はどうすれば?」


ロゼが軽い口調で答えた。

「危ないからお前はここにいろ。あ、そういえば最近入った新入りの給仕が全然仕事の出来ねえ奴でみんな手を焼いているんだ。今庭で掃除でもしてるだろうから、お前先輩としてビシビシ指導してきてくれねえか?」


ラーミアは頷き、部屋を出る前にエンディをちらりと見た。


彼の顔は凛々しく、頼もしい光を放っていた。

それでも、彼女の心は不安で締め付けられていた。


居城の外に出たラーミアは、誰にも聞こえないよう小さな声で呟いた。

「エンディ…死なないでね。」

その声は、風に溶けて消えた。



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