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輪廻の風  作者: 夢氷 城
第1章
33/55

炎と氷、一触即発


「フフフ…」

バレンティノの静かな笑い声は、まるで闇に響く毒蛇の舌。

切れ長の両眼は、獲物を玩ぶ猛獣の様に輝いていた。


モスキーノは半開きの瞳孔でカインを睨み続けていた。


「何が言いたい?」

カインの声は、凍てついた岩壁の反響のよう。


モスキーノが酷薄に切り込んだ。


「エンディの事情は分かった。だがお前の行動には信念が感じられない。無人島でひっそり暮らしてたお前がどうして出会って間もない、恩義もなければ素性も知れないエンディに協力した?何が目的でこの国に近づいた?答えろ。」


その言葉は、心臓を貫く氷の刃の如く鋭かった。


エンディが慌てて割って入った。


「違うんです、カインはその…なんて言うか、俺が無理矢理連れ回しちゃって…。」


その弁護は、嵐に抗う若木ののうに揺れめていた。

だが、モスキーノは更に畳み掛けた。


「塔の上層階も、随分と都合の良いタイミングで炎上したみたいだな。」


その疑念は、暗礁に潜む毒針の刺突。


「知らねえよ。誰かが火でもつけたんだろ?めんどくせえ勘繰りはやめてくれよ。」

カインは強気に返した。


その態度は、波濤を切り裂く鋼の舳先。


見かねたレガーロが一喝した。


「貴様らいい加減にしろ!ここをどこだと思っている!私の前で争うな!」


その声は、山脈が崩れる轟音の如く響いた。


モスキーノはリモコンの切り替えボタンを押された機械のように、瞬時にニコニコと豹変した。


「ごめんなさーい国王様!ついいつもの悪い癖が出ちゃいました〜!てへっ!カイン君も、突然ごめんね?」

モスキーノは軽快な口調で言った。


カインは面白くなさそうにプイッとそっぽを向き、再び無言になった。


「勘弁してくれよモスキーノ。お前本当にイカついぜ?」


「ったく、お前タチ悪すぎるぜ…まじでよ?」


ロゼとポナパルトの呆れ声は、嵐後の潮騒のように響いた。


エンディ、ラーミア、ジェシカは呆然としていた。

まるで霧に閉ざされた船乗りのように。




「フフフ…顔色ひとつ変えないとはねえ。」

バレンティノはボソッと呟いた。


モスキーノに殺気を降り注がれても、物怖じしなかったカインに感心しているようだ。


その感心は、闇に潜む猟師の賞賛。


「みんな、エンディとカインは俺が預かることになったんだ。責任持って面倒見るから心配しないでくれ!こいつらにはさっそく動いてもらう。」

ロゼは気持ちを切り替え、場を仕切るように言った。


「え!もう任務ですか!??」


エンディはワクワクしながら尋ねると、ロゼは頷いた。


「ああ。おそらく、ジェシカの裏切りはノヴァファミリーに既にバレてる。奴らは研ぎ澄まされた警戒心とその用意周到さで、軍や保安隊が総力をあげて調べても全くシッポを掴めない。そこでだ!お前らに連中のことを調べてもらいたい。どこにも属してないお前ら2人なら怪しまれずに動けるだろ?」


その指令は、暗闇に投じる松明の輝き。


エンディが勢いよく手を挙げる。


「はい!お任せください!!」

エンディは張り切って返事をする。





「カイン、エンディが1人で突っ走らねえようにしっかり見てやってくれよな?」

ロゼは念を押した。


「ああ、分かった。」

カインは相変わらず、無粋に答えた。


すると、サイゾーとクマシスがダルマインを連れて、玉座の間に入ってきた。


「国王様、ただいま戻りました!」


サイゾーは緊張した様子で叫んだ。


「ゲッ!さささ、3将帥?!!めんどくせえ奴らに会ったまったなあ!」

クマシスの驚愕のあまり、心の声を盛大に漏らしたが、お咎めなし。



「おお、早かったなお前ら。そいつはダルマインじゃねえかよ。」


ダルマインは手錠に縛られ、まるで生気を吸い尽くされた枯木の様に沈んでいた。




「ほう、その男がダルマインか。たしかラーミア誘拐の主犯格だったな。そんな外道を王宮に連れてくるな!早急に処刑しろ!」

レガーロは冷酷に見下ろしながら言った。


その命令は、刃が首を撫でる鋭さ。




「お任せください国王様!こいつは俺が殺してやりますよ!」

ポナパルトが吠えた。


その気迫は、戦鎚が岩を砕く轟音。


だが、ロゼが割って入る。


「待て待て落ち着け。こいつもこっちの手駒にしちまおう。ゴミだってリサイクルすれば役に立つだろ?」


「何が言いたい、放蕩息子よ。」

レガーロは不機嫌そうに尋ねた。


「うっせえよ、黙ってろクソ親父。なあダルマイン、お前今夜エンディ達とパニス町にいってノヴァファミリーを探ってもらえないか?」




「お待ちください若、この男は信用できません!」

ジェシカが異議を唱えた。


「いくらこいつでも、首の皮一枚でつながってる状況で下手な真似はしねえだろ。マフィアどもに顔が割れてるこいつは逆に利用できる。なあダルマイン、お前が役に立つ男だと証明してくれよ。そうすりゃ俺が免罪符切ってやってもいいぜ?」


その提案は、溺死寸前の者に命綱を投げる号令。




「勝手なことを言うな!」



「飾り物の国王様は黙ってろよ。」


苛立つレガーロを、ロゼは一喝した。


ロゼの反発は、雷霆が岩を割る閃光。

ダルマインの表情には、まるで枯れ木に芽吹く新緑の様に、みるみるうちに生気が蘇っていた。


「ロゼ王子、今ここに永遠の忠誠を誓います。わたくしこの命尽きるその時まで、貴方様の手となり足となり戦う所存でございます。忠義の証として、手始めにお靴をお舐め致しましょうか?」

ダルマインは手慣れた口八丁で場を乗り切ろうと、キリッとしていた。



「はあ〜…こいつは。」

エンディは呆れ返っていた。




「よし!じゃあ今夜19時にパニス町に集合な。あ、サイゾーとクマシス、お前らも来いよ。どうせ暇だろ?」


「しょ、承知致しました!」

唐突に任務を命じられたサイゾーは、吃りそうになるのを堪えながら返事をした。



「暇じゃねえよふざけンモゴゴォ…。」


うっかり本音を漏らしたクマシスの口を、サイゾーが命懸けで塞いだ。



「勝手にしろ。お前達もう下がれ。」

レガーロはうんざり吐き捨てた。


3将帥を先頭に、皆が玉座の間を後にした。


「エンディ、カイン。気をつけてね?」


ラーミアの心配は、船を送る灯台の光。


エンディが拳を握る。


「大丈夫だよ。よ〜し!やってやるぞお!」

エンディの気合いは充分過ぎるほど満ち足りていた。


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