親子の確執と三人の豪傑
ロゼは嵐を切り裂く烈風のような剣幕で早歩きをしていた。
玉座の間へ向かう足音は、まるで戦鼓が地を揺らす響き。
エンディたちはその背を追い、緊張の糸を張り巡らせた。
カインだけは、相変わらず涼しい顔をしていた。
「どうして私たちまで呼ばれたんだろう…?」
ラーミアが言った。
「さあ…私なんだか胃が痛くなってきたわ。」
ジェシカは腹を抑えながら言った。
玉座の間は、シャンデリアの輝きが星屑のように降り注ぐ豪華な聖域だった。
天蓋付きの玉座には、ナカタム王国第83代国王ウィルアート・レガーロが鎮座していた。
その姿は、まるで山脈が動かぬ威厳を宿す巨岩。
眉間には刻まれた様な皺。
いかにも厳格そうで、圧倒的且つ絶対的な貫禄を宿していた。
「なんの用だよ、クソ親父。」
ロゼは鋭い眼光で睨みつけたが、レガーロは冷たく返した。
「放蕩息子よ、貴様には呆れて物も言えん。何ゆえミルドニアまで赴いた?」
「生憎、俺ははアンタみたいに人を顎で使う生き方は性に合わないんでね。」
ロゼは珍しく嫌味口調で言った。
エンディたちは気まずい空気に飲み込まれた。
まるで霧に閉ざされた港の静寂。
カインだけが涼やかな顔で、孤島の岩礁のように動じていなかった。
「貴様のような半端者とは話すだけ時間の無駄のようだな。そんなことよりラーミア、無事で何よりだ。」
レガーロの労いは、厳しくも優しい風のように流れた。
「は、はい!ありがとうございます!」
ラーミアは畏まった様子で慌てて答えた。
次に、レガーロの視線がエンディとカインを捉えた。
「私が向かわせた編成部隊が到着する前に、お前達が助け出したと聞いたぞ。一体何があったのだ?」
その問いの直後、ジェシカがサッと前に出る。
「レガーロ国王、私が説明致しますわ。」
その口調は、剣を抜く騎士の決然。
レガーロは頷いた。
「いいだろう。"その者達"にも聞かせてやってくれ。」
言葉と同時に、玉座の間に3人の豪傑が踏み入ってきた。
その気配は、まるで地平を裂く火山の噴煙。
「おお〜。世界最高戦力、3将帥のおでましか。イカついな?」
ロゼは楽しそうにニヤけた。
3将帥のオーラは、玉座の間の空気を鉄のように圧縮させた。
エンディは圧倒され、尻餅をつきそうになるのをグッと堪えた。
カインはなおも無表情だった。
凍てついた湖面の静けさのように。
「え、何?世界最高?3将帥…?」
身構えるエンディに、ジェシカが囁くように説明した。
「将帥はナカタム軍の中で最も高い階級よ。そして最強の戦士にのみ与えられる称号…。」
「え、じゃあこの3人…めちゃくちゃ強いのか!?」
「ええ…彼らの戦闘能力は人智を超えているわ。」
ジェシカの言葉は、深淵を覗く探針ようにの鋭かった。
「かっけぇ…おれも将帥になりてぇ〜!」
エンディは瞳をキラキラと輝かせながら言った。
その叫びは、星を掴もうとする少年の迸り。
だが、3将帥の一人、ポナパルトが吠える。
「おいコラ、図に乗んなよクソガキ!」
その野太い声は、大地を割る戦鎚の轟音。
2メートルを超える色黒の巨漢、筋骨隆々のポナパルトは、まるで動く要塞。
エンディは嵐に怯える草のように縮こまった。
「まあまあ、落ち着きなよ。玉座の前だよ?」
毒蜜が滴る花の誘惑のようにヘラヘラ笑う男の名はモスキーノ。同じく、3将帥の1人だ。
青髪の長髪、女のような顔は、まるで蜃気楼のよう。
「うるせえよ!ヘラヘラしてんじゃねえ!!」
ポナパルトが腹にまで響く野太い声で吠えた。
同じく3将帥の1人、バレンティノはクスクスと不気味に笑っていた。
派手なドレッドヘア、眼から下を隠す黒いスカーフは首まで覆っていた。
腰に差した剣は、まるで闇を切り裂く死神の刃だった。
「静粛に。それではジェシカ、話を聞かせてもらおうか。」
レガーロの声は、嵐を鎮める巨岩の重みが宿っていた。
玉座の間は、凍てつく緊張に支配された。
ジェシカはスパイとしての日々とミルドニアの戦いを、まるで戦場の地図を広げるように淡々と語った。
エンディもラーミアとの出会い、ミルドニアでの戦いを、まるで焚き火に薪をくべるように話した。
「なるほど、そんな経緯があったとはな…エンディとカインとやら、見直したぞ。礼を言う。」
レガーロは労いの言葉を贈呈した。
エンディは心で呟く。
こんな偉そうにお礼する人、初めて見た…と。
「おめえら中々良い根性してるじゃねえか!俺がバチバチに鍛えてやったら、もっと良い男になりそうだな!!」
ポナパルトの豪笑は、岩を砕く鉄槌。
「ははは…それはありがたいなあ。」
エンディは顔を引き攣らせながら言った。
すると、モスキーノがニコニコとカインに近づいてきた。
「なるほどねー!話は分かったよ!だけどね、1つだけ気になる事があるな〜!」
モスキーノはカインの前に立った。
その笑顔は、まるで毒蛇が舌を振る誘惑。
「ねえねえそこの金髪君…オメエ何モンだよ?」
瞬間、モスキーノの顔が豹変した。
恐ろしい殺気が玉座の間を埋め尽くした。
まるで空間そのものが彼の体内に飲み込まれ、迂闊に呼吸をすれば肺まで凍りそうな深淵の様に。
ポナパルトは、まるで嵐を嫌う巨獣の様に舌打ちをした。
レガーロとロゼは、まるで命綱無しで綱渡りでもしているかのような胸中に駆られ、冷や汗をかいた。
ラーミアとジェシカは子鹿のように怯え、エンディは底知れぬ恐怖に身も心も支配された。
モスキーノとカインは対峙した。
カインは眉一つ動かさず、まるで深海の主が捕食者を無視するかのように、無言で殺気を跳ね返すしていた。




