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輪廻の風  作者: 夢氷 城
最終章
115/180

ヒーローは空から降りてくる

ジェイドと交戦中のノヴァとエラルドは、激しい戦闘の中で苦境に立たされていた。


鋼鉄の装甲をまとったエラルドと、獣のごとく俊敏に跳ね回る黒豹化状態のノヴァ。


その二人が同時に攻撃を仕掛けても、ジェイドの動きにはまったく翳りがなかった。


ラベスタは早々に戦線から離脱して地に伏し、ノヴァは横目で彼の無事を確認しながらも、集中を切らさずに戦い続けていた。


「アヒャヒャヒャヒャ!血祭りだぜワッショイ!話にならねえなあてめえら!!」


ジェイドは冥花軍(ノワールアルメ)の漆黒のローブを纏い、まるで踊るように戦場を駆けていた。



衣の表面には、血も傷も埃も見当たらなかった。


しかも彼は、花言葉に紐づいた特殊能力を一切使用していない。


純粋な身体能力と戦闘技術だけで、三人相手に一歩も引かず渡り合っていたのだ。


「ノヴァ!こうなったら仕方ねえ…“あれ”を使うぞ!」


エラルドが声を張り上げると、その額に焦りが浮かんでいた。


「何だよ、“あれ”って?」


ノヴァは眉をひそめて問い返した。


「決まってんだろ…隔世憑依だよ!てめえも会得済みなんだろ??2人で隔世憑依して、一気にこいつを叩くぞ!もうそれしかねぇ!!」


エラルドの叫びには、勝機に賭ける覚悟がにじんでいた。


「そうだな…分かった。一時的にお前と手を組んでやるよ。まあ、残りの魔法族どもは全員俺が片付けるけどな?」


ノヴァは片目を細め、ニヤリと口角を上げて応じた。


その言葉を耳にした瞬間、ジェイドの顔が強張った。


「隔世憑依…だとぉ?おいおいまじかよ!そんなデータは無かったぜ!?この2年の間に、てめぇらも会得しやがったのか!」


ジェイドの目は不気味なほどに見開かれ、驚愕と焦燥が混じった色が宿る。


「おい…データってのは何だ?俺たちのことも色々知ってるみたいだしよ、いつの間に情報収集なんてしたんだ?」


ノヴァが探るように問いかけると、ジェイドは舌打ちしながら視線を逸らした。


「教えるわけねえだろ。んなもんてめぇらで勝手に想像しろや。それよりもよぉ…隔世憑依を匂わす発言なんかされちゃあ…俺もボチボチ本気出さなきゃいけねえなぁ!?遊びはここまでだ…一気に殺るぜえ!ヒャーハー!」


ジェイドは顔を歪ませ、獣のような牙を剥いて宣言した。


その身に宿る狂気と殺意が、一気に戦場を圧した。


その瞬間、彼の双眼が怪しく黒光りし、魔的なエネルギーが迸った。


ノヴァは直感で危険を察知した。


ジェイドの視線から逃れるように、一気に身体を逸らし高速で移動した。


それはまさに、命を繋ぐ閃きだった。


ジェイドの視界に捉えられたその一点から、突如として広範囲にわたる黒炎が噴き出し、大地を焼き尽くしたのだ。


見る間に瓦礫は煤け、王都の一角が焼け野原へと姿を変えていった。


ノヴァとエラルドはその凄まじさに言葉を失った。


「俺の司る花は“ジャーマンアイリス”!花言葉は“炎”だ!俺の視界に入った万物は、闇の力を配合した黒い炎で焼き尽くされる!!」


ジェイドは誇らしげに叫びながら、黒炎の中心で仁王立ちしていた。


ノヴァは即座に行動に移る。


意識を失っていたラベスタの元へと瞬時に駆け、片腕で抱きかかえた。


そしてもう一方の腕で、驚いているエラルドの身体を強引に引き寄せた。


「ノヴァ!てめえなにしやがる!?」


エラルドは混乱と戸惑いを滲ませた表情で叫んだ。


「一旦退くぞ!」


ノヴァは短く告げると、二人を抱えたまま地面を蹴り、弾丸のような速さで戦場を離脱しようとした。


「おいおい逃げてんじゃねえよ!つうか逃げられねぇよ!?遠くへ逃げようとすればする程に…破壊領域は広くなるんだからよぉ!!俺の視界に入ってる時点で、てめぇらもう詰んでるんだよ!」


ジェイドは吼え、さらに巨大な黒炎を叩きつけた。


次の瞬間、王都の一角がさらに壊滅的な光景へと変貌した。


ノヴァたちが灰と化したのか、それとも奇跡的に生還したのか、ジェイドには確認する術がなかった。





そしてその頃。


モスキーノとルキフェル閣下の死闘は、既に決着していた。


勝者は、圧倒的な力を誇るルキフェル閣下。


モスキーノは全身血まみれで白目を剥き、地に伏していた。


その呼吸は、まさに虫の息で、今にも命の灯火が消えようとしていた。


「先程…貴方を要警戒人物の1人に指定した私の判断は正しかったと言いましたが、前言撤回します。どうやら私は、貴方を随分と買い被っていた様です。」


そう冷たく言い捨てるルキフェル閣下の声も、モスキーノにはもはや届いていなかった。


「ヴァンパイアの皆さん、仕上げの時間ですよ。」


その言葉を合図に、空が騒然とした。


コウモリの羽音のような爆音が鳴り響き、牙を剥き出しにして涎を垂らし、黒褐色の肌をした100体のヴァンパイアが空から急降下してきた。


「キィーーッ!!」


甲高い咆哮と共に、彼らは市街地に着地し、そこにいた人間たちへと襲いかかった。


鋭く白い牙が、次々と兵士や市民の肉体に食い込み、命の血潮を啜り始めた。


「うわあぁぁ!!何だこいつら!?」


「やめてくれーー!!」


「痛え!!痛えよぉぉぉ!!」


絶叫が王都に木霊し、血の匂いが夜風に乗って広がっていく。


ヴァンパイアたちは、それはそれは楽しそうに、獲物の血を貪っていた。


「まさか、こんなにもあっさりと制圧出来てしまうとは…。いつの時代も、人間とは本当に愚かで醜く、弱い生き物ですね。」


ルキフェル閣下はふと目を細め、どこか悲しげな表情でそう呟いた。


だがその瞬間、空から轟音が響いた。


ルキフェル閣下が顔を上げると、空を切る一機のジェット機が、低空飛行でこちらへと迫っていた。


30メートル先の地上に、猛スピードで着陸。


爆風と砂煙が巻き起こる中、機体から飛び出した一人の男が、一直線にルキフェル閣下の前へと立ちはだかった。


エンディだった。


「貴方は…エンディさんですね?」


ルキフェル閣下は不敵な微笑を浮かべていた。


エンディは激しい怒りを目に宿しながら、ただ真っすぐに閣下を見据えていた。

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