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輪廻の風  作者: 夢氷 城
最終章
107/180

予兆と出発 選ばれし双翼


エンディたちは宴を中止し、ロゼに玉座の間へと招かれた。



急遽、王宮の最奥で緊急会議が開かれたのである。


玉座の間には、ナカタム王国の軍事機関の中枢を担う者たちが集められていた。


だがそこに軍人でないエンディ、カイン、エラルドまでもが招集を受けていた。


「おいおい、なんで俺まで呼び出されてるんだよ?」

エラルドは、仕事の最中に突然呼び出されたことに不満を露わにし、あくび混じりに文句を漏らした。


「君は軍人じゃないけど、一応天星使オンジュソルダだからね。」

アベルが静かに補足すると、エラルドは頬をかいて黙り込んだ。


そして、玉座の間に重厚な扉が開き、4人の将帥が一斉に入場した。


マルジェラ、モスキーノ、バレンティノ、ポナパルト。

この4人が一堂に会すのは久方ぶりであり、その場の空気は一気に張りつめた。


「よし、役者は揃ったな。まずはお前ら、急な呼び出しに応じてくれてありがとよ。」

ロゼは玉座にふんぞり返りながら、穏やかに周囲を見渡した。


「誰か〜!まずは今回の侵入者についての顛末報告をおねが〜い!」

モスキーノがいつも通りの調子で、気だるげに言葉を投げる。


「俺たちはその場にいなかったからな。エンディ、カイン、侵入者と対峙したのはお前達だろ?まずはお前達の口から、簡潔に説明をしてくれ。」

マルジェラが冷静な口調で、的確に指名した。


「えーっと…。」

エンディは大勢の注目を集めたことで、思考が混乱し、言葉の出口を見失っていた。


「おい!さっさと説明しろや!!」

ポナパルトの怒声が響き渡り、エンディはビクンと肩を震わせて背筋を伸ばした。


「連中は魔法族だ。」

カインが静かに切り出した瞬間、玉座の間の空気は一転して凍りついた。


「初めに俺たちに絡んできた男は、ユドラ人らしい。闇の力を“与えられた”と言っていた。この意味が分かるか?」

カインの目は鋭く光り、誰にも逃げ道を与えぬ問いを放つ。


「“与えられた”って事は…つまり、“与えた奴”がいるって事か。」

ロゼが顎に手を当て、眉間に深い皺を刻みながら呟いた。


「なるほど…闇の力は譲渡が可能で、その力を与えられれば普通の人間も魔法族になれるって事か…厄介だね。」

ラベスタが氷のような無表情で分析を重ねた。


「今回の侵入者共は1人残らず、自爆して消滅した。奴らに力を与え、王宮を襲撃するよう仕向けた連中がいるって事だ。そいつらこそが“生粋の魔法族”って事になるな。」

カインは静かに、だが確実に核心を突いた。


「フフフ…使い捨てのトカゲの尻尾切り要員達に王宮を襲撃させて、最後は自爆ねえ。これって明らかに、俺たちに対する“宣戦布告”だよねえ。」

バレンティノはにやりと笑い、敵の意図を読み解いた。


「あのマルクスって男…“死んでもらうぞ天星使共”って言ってた…。まさか狙いは俺たちなのか…?」

エンディは拳を強く握りながら、低く問いかけた。


「そりゃそうでしょ〜。だって彼らは天星使との戦いの最中に封印されて、500年も封印されてたんだから。その転生者である俺たち“現天星使”は恨まれて当然。つまり彼らにとって俺たちは、早々に消すべき標的って事だよね!」

モスキーノは笑顔の裏に冷ややかな現実を突きつけた。


「封印されているイヴァンカを含めて、天星使は全員バレラルクにいる。いや…アズバールに限っては2年前の戦い以降行方不明だったな…。だが確かな事は1つ…魔法族は近日中に、必ず再び襲撃にくる筈だ。」

マルジェラの一言に、場の空気がピリッと引き締まる。


それもそのはずだった。


魔法族について判明しているのは“空中浮遊能力”と“死雨”と呼ばれる黒い破壊光線のみ。


勢力も能力も不明、所在も不明。

あまりにも情報が少なすぎる。


そんな得体の知れない敵に対し、備えを固めるのは極めて困難だった。


玉座の間には重い沈黙と緊迫感が漂った。


その空気を断ち切るように、ロゼが静かに立ち上がる。


堂々と歩み出るその背中に、王者の威厳が溢れていた。


「ナカタム王国全軍に通達する!これより戦の準備に取り掛かれ!いつ何時魔法族の奴らが襲撃して来ても迎え撃てるよう、万全の体勢を整えろ!侵入者はアリ1匹残さず、徹底的に殲滅するぞ!」

ロゼの声は玉座の間を揺らし、鼓膜と魂を同時に震わせた。


一瞬で緊張は最高潮に達し、それと同時に全員の士気も確かに上昇した。


2年前に王位を継いだロゼのカリスマ性は、いささかも衰えていなかった。


むしろ今では、王者としての風格がより鮮やかに輝いていた。


その時だった。

玉座の間の扉が再び開く。


「失礼します!」

兵士の一人が駆け込み、片膝をついて報告体勢に入った。


「なんの用だ?」

ノヴァが低い声で問う。


「ご報告が御座います。先程ペルムズ王国から入電がありました。同国某所に潜伏している旧ユドラ帝国の残党達が、今しがた“謎の軍勢”と小競り合いを起こし、現在交戦中との事です!」


ペルムズ王国。

ナカタム王国の軍事同盟国であり、終戦以降、旧ユドラ帝国の元憲兵隊員たちが多く潜伏していた土地でもある。


「だから何だよ!下らねえ事いちいち報告してくんな!」

ポナパルトが一喝し、兵士はびくりと震え上がった。


「待てよ、人の話は最後まで聞こうぜ?その“謎の軍勢”ってのは何だ?」

ノヴァが制止しながら尋ねると、兵士は再び唇を動かした。


「これは私の見解ですが…報告を受けた際に聞かされた、連中の身体的特徴や攻撃形態が、先程王宮を襲撃しに来た連中と酷似している事から…恐らく魔法族ではないかと推測しています…!」


その瞬間、エンディ達の目つきが鋭くなった。


「なるほどお〜!ユドラ人の残党共を手駒にして戦力を増強しようって魂胆だね!」

モスキーノが笑いながらも、完全に敵の策略を見抜いていた。


「…よし!早速で悪いが、エンディとカイン!お前らペルムズ王国へ敵情視察に行ってこい!」

ロゼが即断する。


「えぇ!?俺がですかぁ!?」

エンディは驚きで目を丸くし、狼狽えていた。


カインは一言も発さず、静かに佇んでいる。


「ああ。他の奴らは国を離れるわけにはいかねえからな…そこでだ!どこにも属していないお前ら2人にこそ、今回の任務は適任だと判断した。どうだ?これは王命だぜ?異論があれば遠慮なく言ってくれ。俺は慈悲深い国王だからよ、場合によっちゃ聞き入れてやってもいいぜ?」


「俺、行きます!行かせてください!」

エンディは拳を握りしめ、気合いを込めて声を張った。


だがその隣で、カインは首を振った。


「悪いが俺は行かねえ。」


「どうしてだ?理由を聞かせてくれ。」

ロゼが穏やかに促す。


「そう言うだろうと思ったぜ、カイン。お前は行くべきじゃない。お前は、家族を守るべきだ。」

エンディが静かに言葉を重ねた。

その一言に、カインの目がかすかに揺れた。


カインは国を離れたくなかった。

それは有事の際、自らの手で妻と子を守り抜くという決意の表れだった。


「じゃあ、兄さんの代わりに僕がエンディに同行するよ。ロゼ国王、それでいいでしょ?」

アベルが一歩前へ出て申し出た。


その言葉に、カインは弟の成長と覚悟を感じ取り、胸の奥が熱くなった。


「アベル…お前…。」


「心配しないで。この2年間で、僕も結構強くなったからさ。」

アベルがにこりと笑って胸を張った。


「よし、決まりだ!じゃあエンディとアベル、早速ペルムズ王国へ向かってくれ!」

ロゼの号令に応じ、2人は即座に出国準備へと走り出した。

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