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三題噺もどき3

他責

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくきゅう。

 


 ズキズキと首が痛み出した。


 ソファの肘掛に頭を預けたまま、長時間いたせいだろう。

 気付けばほとんど直角に近い状態になっていた。そりゃ首も痛める。

 もう少しほっておくと、頭痛までしてくるので、さすがに姿勢を戻す。

「……」

 とは言え、寝転がったままなのは変わらず、なんとなくその辺にあったクッションを首の下に持ってきただけだが。最初からこうしておけばよかった。

 ……というか、ここに寝転がっていないで起きて動くのが先なんだが。

「……」

 点けっぱなしになっていたテレビからは、お昼のメイン番組が始まっている。

 未だ働いていた頃から変わらない起床時間に起きるのはいいけれど、そこから何もせずにぼうっとしているばかりの日々が続いているのは、どうにかしたいものである。

 だからと言って、何をするんだと言う感じではあるから、どうにもできていないのが現状だ。自分自身が置かれている現実だ。いくら現実逃避をしようともそこは変わらない。

「……」

 何をするでもなく、眺めているだけのSNSの中では、キラキラとした夏を過ごしている人たちがたくさんいると言うのに。どうしてこんな無為な時間を過ごしているんだろうなぁなんて、思うだけ思って終わり。

 まぁ、夏休みなんて、家で時間をつぶすだけの日々だったし、お盆の時期も祖父母の家に行くこともなくなっていたし、働きだしてからは長期休暇なんてもの自体がなかったから、休みの過ごし方というのは他に比べたら自分の中での蓄積がないのかもしれない。

「……」

 小学生の頃ぐらいまでは、色々と行っていた気がするんだけどなぁ。

 一泊二日ぐらいで、キャンプに行ってバーベキューをしたり、博物館や美術館に行ったりもした。博物館に行くときは、プラネタリウムを見るのもほとんどセットだった気がする。あまり詳しくはないが、星を見るのは好きだった。

 祖父母の家に行けば、あそこは島なので海に行くことが多かったり、もちろんお墓参りに行ったりもした。

「……」

 今なら、一人でそんなことしてしまえばいんだけど。車だってあるし、海ぐらい行ける。プラネタリウムだって、少し遠いが行こうと思えば行ける。

 そもそも親に面倒をみられないと生きていけない年齢でもない。

 周りをみれば、たいていが進学や就職と共に1人暮らしをしているんだから。実家でこうして甘えている自分の方が浮くくらいだ。

「……」

 でも、今更言うのは何だが……大学進学のタイミングで1人暮らしをしようという気持ちはなくはなかったのだ。残念ながら、それを親にあなたは無理だとほぼ笑いながら冗談のように言われたので、その気持ちはなくなった。

「……」

 他責思考で生きて居たくはないが、これに関しては許してほしいと言いたい。

 物心ついた時から、親のいいなりが当たり前で、親の機嫌を取るのが当たり前で、親の発言がすべてだったから、無理だろうと言われたら、無理なんだろうなぐらいの思考でしかないのだ。

 基本的に、人生の起点と言われるものは、全て親の采配で決まってきた。そこに自分の意思なんていつの間にか無くなっていた。

「……」

 ただ一度だけ、それこそ大学進学の時。

 推薦で地元の大学に行くと言うことで話が進んでいた中、他に行きたい大学が見つかり言ってみたことがあった。県外だったが、地元の大学よりそっちに行きたいと強く思った。

 だが、1人暮らしも無理だろうし今更という感じで、教師にも親にも一蹴された。冗談めかして。三者面談の時に2人の大人からそう言われたときはさすがに堪えたなぁ。

 ま、今思えば確かにタイミングが遅かったし、少ない推薦枠で行くのだからそちらを優先すべきだと言うのは分かる。

「……」

 それでも、親にだけは聞いてほしかったなんて思うのは、少しでもいいから応援してほしかった、なんて思うのはただのエゴなんだろうか。

 教師にはそれなりにメンツもあっただろうし、進めていたことを頓挫するほうが何かと支障があったのかもしれない。分からないけど。

 でも、もう少しこっちを見ていて欲しかったなんて、思うのはおかしいんだろうか。

「……」

 父は仕事の関係上、幼い頃はほとんど家にいなかったりもしたし、この手の話は避けているような節があったので、しっかりと会話をした記憶がない。したかもしれないが、最終的には母に聞いてみてと言うかんじで終わっていたかもしれない。

「……」

 母は仕事柄、自分の子供より、他人の子供を見ている時間の方が長い。ちょっと言葉がきついかもしれないが……。そういう感覚の方が最近になって強くなってきた。

 それでも、長女ではあるから、それなりに手をかけられては来たんだろう。過保護……とまではいかなくても。それなりに気をかけて、気を配って、その結果が今の状況を招いている。

「……」

 これも、他責でしかないのか。

 いい年なんだから、いい加減自責の念をもって動かないと、動けないといけないんだろう。

 でも、この年になるまでにしっかりと染みついたこの思考は、そう簡単には変わらない。

 どうにかしないといけないんだろうけどなぁ……。

 どうしろって言うんだろう。






 お題:エゴ・プラネタリウム・海

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