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落語【声劇台本書き起こし】

落語声劇「蔵前駕籠」短縮版

作者: 霧夜シオン
掲載日:2024/07/08


落語声劇「蔵前駕籠(くらまえかご)」短縮版


台本化:霧夜(きりや)シオン@吟囁亭喃咄(ぎんじょうていなんとつ)


所要時間:約15分


必要演者数:4名

      (0:0:4)

      (4:0:0)【性別準拠人数比率】

      (3:1:0)

      (2:2:0)

      (1:3:0)

      (0:4:0)


※当台本は落語を声劇台本として書き起こしたものです。

よって性別は全て不問とさせていただきます。

(創作落語や合作などの落語声劇台本はその限りではありません。)


※忙しい人の為の蔵前駕籠です。


●登場人物


男:吉原(よしわら)目当(めあ)てのお客さん。

  馴染(なじ)みの遊女(ゆうじょ)に逢(あ)いたくて仕方ない。


親方(おやかた):宿駕籠(やどかご)の主人。

   世情(せじょう)が物騒(ぶっそう)であるため、男の吉原(よしわら)行きを止めようとするが、

   結局押し切られる。


駕籠(かご)かき1:宿駕籠(やどかご)の駕籠(かご)かき。

      威勢の良さが売り。


駕籠(かご)かき2:宿駕籠(やどかご)の駕籠(かご)かき。

      相棒と威勢よく駕籠を担ぐ。

      命より祝儀が大事らしい。


追い剥(は)ぎ:幕末に横行(おうこう)した、幕府に味方する為(ため)軍用金(ぐんようきん)を徴収(ちょうしゅう)するという

     名目で夜の闇に乗じて身ぐるみ剥(は)いでいく者達。



●配役

男:

親方・追い剥ぎ・枕:

駕籠かき1:

駕籠かき2:




枕:慶応(けいおう)の四年というのは不審な年で、正月の三日から鳥羽伏見(とばふしみ)の戦(いくさ)が

  ございました。明治維新(めいじいしん)も近い幕末(ばくまつ)の頃になると、

  ずいぶん世間(せけん)は物騒(ぶっそう)になって参ります。

  尊王攘夷(そんのうじょうい)だ、開国佐幕(かいこくさばく)だってんで薩摩(さつま)や長州(ちょうしゅう)が幕府(ばくふ)としのぎを削り

  あっている。

  武士が故郷を無断で抜け出す事を脱藩(だっぱん)て言うんですが、その一部が

  徒党(ととう)を組んで追い剝(は)ぎや押し込み強盗を繰り返す。

  明日はどうなるか分からないってなると、人は不安に囚(とら)われるもん

  です。

  いま持ってる金が使えなくなるかもしれないから使ってしまえ、

  ってんで、吉原(よしわら)などで湯水(ゆみず)のごとく派手(はで)に使ったんだそうです。

  当然そこへ乗せていく駕籠屋(かごや)も繁盛(はんじょう)したわけで、宿駕籠(やどかご)は特に

  蔵前茅町(くらまえかやちょう)の江戸勘(えどかん)、日本橋本町(にほんばしほんちょう)の赤岩(あかいわ)、そして芝(しば)の神明(しんめい)に初音屋(はつねや)

  、いわゆる江戸の三駕籠屋(さんかごや)があり、ここの提灯(ちょうちん)の下がっている駕籠(かご)で

  吉原(よしわら)あたりに乗り込んでいくと、たいそう幅(はば)がきいたとか。

  そういう連中の乗る駕籠(かご)も当然、追い剥(は)ぎ集団の獲物(えもの)になります。

  どこに出没(しゅつぼつ)したかって言いますと、日本橋神田界隈(にほんばしかんだかいわい)から一度は通ら

  なくちゃならない蔵前通(くらまえどお)り。

  そこに覆面(ふくめん)で顔を隠し、刀を引っさげて連日連夜(れんじつれんや)出没(しゅつぼつ)したんだそう

  です。

  辻駕籠(つじかご)はもちろん、宿駕籠(やどかご)も暮(く)れ六(む)つになるとぴたっと吉原(よしわら)方面へ

  の駕籠(かご)は止めてしまう。

  そんなのが続くもんだから、当然客足(とうぜんきゃくあし)は遠(とお)のいて吉原(よしわら)も暇(ひま)になる。

  にも関(かか)わらずそういう所へ行きゃモテるだろうってんで、命の危険

  を顧(かえり)みない輩(やから)がいたりするわけです。


男:おうッ、駕籠一丁(かごいっちょう)頼むよ!

  こちとら気分が浮いてんだ、二人ばかり威勢のいいのを頼むぜ!

  祝儀(しゅうぎ)ははずむからよ!


親方:へい、承知しやした。

   それで、どちらまで行きやしょうか?


男:おいおい、どちらも何もねえだろ。

  気分が浮いてるっつってんだろが!

  行くところは吉原(よしわら)って分かりそうなもんだろ!

  北へまっつぐ一本道(いっぽんみち)行ってくれりゃあいいんだよ!


親方:はぁ…吉原(よしわら)でございますか。


男:何が吉原(よしわら)でございますか、だよ。

  おめえどこで取れた大馬鹿野郎め。

  胸(むね)ぇ叩(たた)いて、万事承知(ばんじしょうち)ッ!とやりゃそれでいいんだ、頼むよ!


親方:はぁ…。

   いや…あの、いま、鐘(かね)が暮(く)れ六(む)つ打ちましたよね?


男:そうだよ、暮れると打つし明けると打つんだ。

  明(あ)け六(む)つ暮(く)れ六(む)つっつうんだ、暮れて打ったから来たんだよ。


親方:それがですね…暮(く)れ六(む)つ打つとね、

   近頃は吉原(よしわら)行きの駕籠(かご)は出さねえことになってるんで。

   うちだけじゃねえ、赤岩(あかいわ)でも初音屋(はつねや)でも出さねえんです。


男:なんで?


親方:なんでって…知らねえんですかい?


男:知らねえな。

  なんだよ、何かあんのか?


親方:蔵前通(くらまえどお)りに追い剥(は)ぎが出るんですよ。


男:出る?

  …ウソだろ。


親方:いや、ほんとに出るんですよ。


男:出るったっておめぇ、毎晩は出ねえんだろ?


親方:毎晩出ますよ。


男:ゆんべは?


親方:出ました。


男:じゃあ一昨日(おととい)は?


親方:出ました。伊勢屋の駕籠がやられたんです。


男:ならその前は?


親方:出ましたよ。

   ずーっと出てんです。


男:じゃあ今日は?


親方:出ます。


男:…。

  ……。

  …なに??


親方:出ますよ。


男:やけにはっきり言うじゃねえかよこの野郎。

  さては一緒になってやってんのかい?

  お二人様ご案内、とか、今日は三組ご案内、とか

  分け前もらってやってるんじゃねえのか?


親方:馬鹿を言っちゃいけませんよ、ずーっと出てるんですから。


男:ずっと出てるんだったらよ、追い剥(は)ぎの連中だって懐(ふところ)があったまって

  るだろうさ。

  今日みてえな寒空(さむぞら)の下で人斬り包丁(ぼうちょう)ぶら下げてふらふらしてるよりも

  よ、柳橋(やなぎばし)かなんかの茶屋(ちゃや)の二階に上がって一杯吞(いっぱいの)んで、

  故郷の歌でも歌いながら、どんちゃん騒いで踊ったりしてるに違いね

  えって。その隙(すき)にうかがわねえってのは愚(ぐ)の骨頂(こっちょう)だ。

  だから駕籠一丁(かごいっちょう)出してくれよ。


親方:いやあ、皆さんそんなこと言って行くんですけどね、

   みーんな獲(と)られちまうんですよ。

   悪いこたあ言いません、止(よ)した方がいいですよ。

   襦袢(じゅばん)一枚でくしゃみしながら帰ってくるなんて洒落(しゃれ)になりませんよ

   。それこそ襦袢(じゅばん)にもならねえ。

   別に吉原(よしわら)が今晩で無くなるわけじゃないんですから。


男:なに襦袢(じゅばん)と自慢(じまん)を掛けてやがんだ。

  あたりまえじゃねえか。

  吉原(よしわら)が無くなる時は、日本だって無くなってんだからよ。


親方:でしょう?

   ですから、そんな剣呑(けんのん)な思いをしていらっしゃらなくたって、

   明日(あす)昼遊(ひるあそ)びてことになすったらいかがです?


男:てやんでぃべらぼうめ、一丁前(いっちょまえ)に説教垂(せっきょうた)れてるんじゃあねえよ!

  昼遊(ひるあそ)びがあるなんてこたぁ百も承知、二百も合点(がってん)なんだよ!

  馴染(なじ)みの女から文(ふみ)が来てんだ。目が開(あ)いてんなら読め!

  その文中(ぶんちゅう)にいわく、「今晩、お前さんのお顔を是非(ぜひ)見せてもらいたい、

  、でないと虫が収まりんせん 。」と。

  だから虫を抑(おさ)えるこの顔を持って行くだろ。

  馴染(なじ)みの前でこの顔をぱっと出すだろ?

  すると女がまぁ嬉(うれ)し、わっちの為に体を張って来てくれたんでありん

  すね、今夜は離(はな)しんせんよ、ってことで俺の首根(くびね)っこに抱きついてな

  。

  二人でもってごろごろごろって転がって、

  夜具(やぐ)の上で重なってまぁず目出度(めでた)やなってぇ事になるんだよ!

  そう思うと俺ァもう、身体がカッカしちまって疼(うず)いてくるね!

  だからよ、人助けだと思って駕籠(かご)出してくれ。


親方:うぅぅん…人助けはいいんですがねえ…うまくいきますかねぇ…。


男:大丈夫だって言ってんだろ!

  祝儀(しゅうぎ)ははずむし、うまく吉原(よしわら)まで着いたらよ、一晩(ひとばん)遊ばしてやるから

  威勢(いせい)のいい若(わけ)ぇの見繕(みつくろ)ってくれよ!


親方:はあ…はあはあはあ、なるほど…。

   しかし…うーん…。


男:ええぃじれってぇなァおい!

  そんなにウジウジしてんなら江戸勘(えどかん)の看板(かんばん)下(お)ろしちまえ馬鹿野郎!!

  田舎侍(いなかざむらい)が怖くて駕籠屋(かごや)がやってられねえだろうがよ、べらぼうめぃ!

  追い剥(は)ぎどもは駕籠屋(かごや)じゃなくて俺が目当(めあ)てなんだろうがよ!

  駕籠(かご)なんざいらねえんだろ!?


親方:うーん、まぁ駕籠(かご)まではいらんでしょうな。


男:いざ追い剥(は)ぎ共が出たら、駕籠(かご)おっぽり出して逃げりゃいいだろうが

  !


親方:でもその、何かあったらうちの看板に傷がーー


駕籠かき1:【↑の語尾に被せて】

      親方、あっしらが行きやしょう。


親方:おいっ、止(よ)しな。


駕籠かき2:いやいや、大丈夫です。行きますよ、えぇ。

      旦那(だんな)のおっしゃる通りだ。

      それで、祝儀(しゅうぎ)をはずむってのは本当でござんすか?


男:おう、本当だ。

  うまく吉原(よしわら)まで着いたら、おめえらにも女抱(おんなだ)かしてやるよ。

  どうでい?


駕籠かき1:うほほ、そいつぁありがてぇ。

      親方、大丈夫ですって。駕籠(かご)はどうってこたねぇんですから。

      こっちは命より祝儀(しゅうぎ)が大事なもんでね。なぁ相棒!


駕籠かき2:おうよ! 

      旦那(だんな)、約束ですからね、くれぐれも頼んますよ!

      ぐずぐず言っちゃあいけませんからね。

      もし出たら、そこまでですぜ!


男:わかってるよ!

  何もおめえらにチャンチャンバラバラ渡(わた)りあってくれたぁ言わねえ!


駕籠かき1:ようし相棒、さっそく支度(したく)にかかるか!


駕籠かき2:合点(がってん)だ!


男:【↑の語尾に被せ気味に】

  おぅ待ちな待ちな、後(あと)の喧嘩(けんか)が先ってこともあるからよ。

  駕籠賃(かごちん)と…ほれ、酒手(さかて)の祝儀(しゅうぎ)、二分(にぶ)ずつだ。


親方:へい、ありがとうございやす。


男:おぉいおい、親方が取ってはじくのかい?


親方:えっ?へへ、いや、そんな事は…

   おうおめぇら、行って来い行って来いっ。


駕籠かき1:へっ。

      旦那(だんな)、それじゃああっしら支度(したく)をーー。


男:おう、支度(したく)なら俺もするからちょいと待ってくれ。

  どれ…。


駕籠かき2:えっ、だ、旦那(だんな)?!

      この人着ているもんをふんどし一丁(いっちょう)以外、全部脱いで綺麗(きれい)に

      本畳(ほんだた)みにたたんじまったよ…。


駕籠かき1:しかもそいつを煙草入(たばこい)れや紙入(かみい)れと一緒に、

      駕籠(かご)の座布団(ざぶとん)の下に隠しちまったぞ…。


男:よぅしこれでいい。

  おうっ、支度(したく)はできたぜ!

  やってくんな!


駕籠かき2:だ、旦那(だんな)、やってくんな、とは言いますけどね、裸(はだか)ですぜ?


男:ああ、裸(はだか)だよ、それがどうしたってんだい。


駕籠かき1:旦那(だんな)、風を切っていきますんで冷えますよ?


男:いいんだよ冷えたって。

  向こう行きゃ温(あった)め手(て)がいるんだからよ!

  寒かったでありんしょう、わっちが温めてあげんす…ってよう!

  かーっ、こらぁのろけちまったなあ!


駕籠かき1:いやぁ、こらぁどうも、あっしは感動しちまったね!

      あ、親方、ちょいとご覧(らん)なすって下さいよ!


駕籠かき2:胸(むね)ぇ打たれて涙が出て来ちまうよ!

      旦那(だんな)のこの出(い)で立(た)ちなるものを見ちまうと、ね!


親方:どれどれどれ…

   ! はぁぁいやぁ、これはえらいねぇぇ。

   女郎買(じょろうか)いの決死隊(けっしたい)だ。

   こう行きてぇもんだな!

   よしおめえら、粗末(そまつ)のねえように行ってこい!


駕籠かき1:あいよッ!

      行くぜ相棒ッ!


駕籠かき2:よしきた合点(がってん)だ!!

      えッ! ほい駕籠(かご)ッ! えッ! ほい駕籠(かご)ッ!

      はッ! はッ! はッ! はッ!


男:おう、威勢(いせい)がいいねェ!

  こうでなくっちゃあな!


駕籠かき1:ええそらぁもう! 酒手(さかて)が入ってやすからね!

      鳴きも入ろうってもんですよ!

      えッ! ほい駕籠(かご)ッ! えッ! ほい駕籠(かご)ッ!

      はッ! はッ! はッ! はッ!

      どうだい相棒! うまく行きてえなあ!


駕籠かき2:はッ! はッ! はッ! はッ!

      まったくだ! 

      天子(てんし)様だか将軍様だか知らねえけどよ、

      吉原(よしわら)が繁盛(はんじょう)してなきゃ駄目だってなぁ!

      客が来なくなっちゃア、たまらねえやな!


駕籠かき1:はッ! はッ! はッ! はッ!

      だよなぁ、命がけだ!

      それにしたって、命かけても、女郎買(じょろうか)いに行きたいかねぇ!


駕籠かき2:はッ! はッ! はッ! はッ!

      あぁ、助平(すけべい)だからなぁ!


男:るせぇこの野郎ォ!


駕籠かき1:あああいけねぇ聞こえてた。

      内緒話(ないしょばなし)だな、相棒!


駕籠かき2:ああ、内緒話(ないしょばなし)だぁ!


男:けっ、内緒話(ないしょばなし)もあるかぃ。


駕籠かき1:いやぁははは…旦那(だんな)!

      うまくいったら一つ、お願いしますよォ!


男:わかってるよ!


駕籠かき2:頼んますぜェ!

      おうい、うまくいくよう祈ろう!


駕籠かき1:ああ、祈ろう!

      妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)、南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)…


男:【↑の語尾に喰い気味に】

  よせやぃ!

  大丈夫だって言ってんだろぃ!


駕籠かき2:大丈夫だってよ!

      気を付けろー!


駕籠かき1:ああ!

      …!あ、旦那(だんな)、やっぱりいますよ。

      店出(みせだ)してますわ。

      あれ、あのちらちら見えますぜ。

      引き返しましょう。


男:いいよ、そのまま行けよ。


駕籠かき2:いや、だってそこにいますよ。


男:だから、音のしねえようにそっと行って、するりと。


駕籠かき1:するりと、って言ったって…


男:いいから、スーッと! スーッと行けって!

  ほれ、祝儀(しゅうぎ)だ、女だ!


駕籠かき2:~~んんじゃあ相棒、行くか。


駕籠かき1:旦那(だんな)、いざとなったら駕籠(かご)放り出しますからね。


駕籠かき2:なんか喋(しゃべ)っちゃいけませんよ。

      口結(くちむす)んで、舌噛(したか)むといけませんからね。


男:おう、頼んだぜ。


駕籠かき1:よ、ようし…行くぜ、相棒。

      ふッ、ふッ、ふッ、ふッ。


駕籠かき2:あいよ。

      ふッ、ふッ、ふッ、ふッ。


追い剥ぎ:おいッ、待て! 待てェッ!!


駕籠かき1:やべぇおいでなすった!


駕籠かき2:逃げろ、逃げろッ!

      ううぅいぃぃしょぉぉあぁぁーーーッッッ!


駕籠かき1:こんなのにッ、捕まってたまるかいぃッッ!


駕籠かき2:あんな田舎侍(いなかざむらい)にぃぃ!

      ふッ、ふッ、ふッ、ふッ!

      旦那(だんな)、いなくなったみてえですぜ!


駕籠かき1:ふッ、ふッ、ふッ、ふッ!

      このぶんなら、うまく行きますよッ!


追い剥ぎ:そこな駕籠(かご)、停(と)まれィ!


駕籠かき2:やべえ、まだいやがった!


駕籠かき1:見ろッ、あっちからも来やがった!


駕籠かき2:ちきしょう、後ろからもだ!

      旦那(だんな)、すまねえ、ここらが潮時(しおどき)ですわ!


男:おう、命あっての物種(ものだね)だ!

  早く逃げな!

  あとは任しとけ!


駕籠かき1:旦那(だんな)、ご武運(ぶうん)を!


駕籠かき2:相棒、こっちだ!


男:【つぶやく】

  12、3人はいるな…けっ、浪士(ろうし)くずれが…来やがれってんだ。


追い剥ぎ:これッ、駕籠(かご)の中の仁(じん)に物申(ものもう)す。

     我ら由緒(ゆいしょ)あって徳川家に味方いたす浪士(ろうし)の一隊(いったい)。

     されど軍用金(ぐんようきん)に事欠(ことか)いておる。

     身(み)ぐるみ脱(ぬ)いで置いて行け。

     命までは取ろうとは言わぬ。

     なまじ生半(なまなか)に腕立(うでだ)て致(いた)すと、貴様の為にならぬぞ。

     中におるのは武家(ぶけ)か町人(ちょうにん)か、これへ出(で)いッ、…出(で)いッ!

     …近藤(こんどう)、龕灯(がんどう)を駕籠(かご)へ向けろ。

     武士(ぶし)の情(なさ)けだ、襦袢(じゅばん)だけは許してつかわす。

     身(み)ぐるみ脱(ぬ)い…ッ!?


男:へ、へっ、へーーーーーーーーーっくしょい!!!


追い剥ぎ:!おお、もう済んだか。




終劇



参考にした落語口演の噺家演者様(敬称略)


古今亭志ん朝(三代目)

三遊亭圓楽(五代目)

立川談志(七代目)




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