勇者の剣がくっころとか言い出したら
寝起き20分で書きました。
私は剣。この世で唯一無二の、硬く、長く、折れず、考え、話すことができる、世にいう勇者の剣である。
「話の邪魔をするってね」
「! な、なんだと! まだ言うか小娘! 貴様、ここに至るまで、いったいどれだけ私の名言に助けられたか覚えておらんのか!」
「ふーん、知りませーん。迷言で何日も森を彷徨ったり目的地の反対の町に着いたり必要ない善良な魔物を狩ってしまったり王様に気味悪がられて追放されたりしたこと、忘れたとは言わせないわよ」
「――――くっころ」
「あんた死ぬわけないじゃん。物だし」
「モノだと!? 言うに事を欠いてモノ扱いだと!? この世で唯一、能動的に勇者をサポートできるこのウルトラミラクルスペシャルな私を、モノと言うか!
そんなことを言うのはこの口か! この口か!」
「自分をウルトラミラクルスペシャルとか言うのかこの剣は」
「――――くっころ」
「だからあんた死ぬわけないじゃん!」
「当然だ! 私はこの世で唯一の意志持つ剣! 何百年も魔を討ってきたこの私を殺せるわけなどないであろうが! 小娘が勘違いしおって! ふふん。私が言ったのは転がせるものなら転がしてみ」
カラーンコーンピキーンコーンゴキンはぅぁっコーンコーンコーンコロリ。
「ななななな投げろとは言っておらん! 投げると転がすは動きが違うであろーー!!」
「だってむかつくんだもん」
「あ、あああぁぁぁ、、、は、早く、握ってくれ」
「……」
「い、いかん、いかんのだ。主から離れると、く、わ、私の意識が、意識が……」
「静かになって丁度いいわ」
「そ、そんなご無体なっ。……頼む、私を握ってくれ。わ、私の根本を、硬く、長く、折れぬ私のシャフトを握ってくれぇぇ」
「……キモッ……! あんたとも長い付き合いだったけどちょっと今のは引くわ! さよなら!!」
「あああああぁぁぁぁあ行かないでええぇぇぇぇ………………」
こうして、硬く、長く、折れない剣をぶつけられた魔王は倒され、勇者の剣も永い眠りについた。
おかげで世の中は平和になりましたとさ。