離婚した元夫の手紙
仕事帰りの夕方、ポストを開けてみると、少しだけ膨らんだ封筒が入っていた。
何かの請求書かと思ったけれど、封筒の色は薄茶色。どうやら手紙が入っているようだ。
今時珍しい。何か伝えたいことがあるのなら、紙ではなく大抵スマホで済ませる時代だと言うのに。
「…………はぁ」
差出人の名前を見て合点がいく。彼との連絡手段は、全て書面にしてほしいと私が弁護士にお願いしたからだ。
離婚した元夫からの手紙だった。彼が今、どうしているのか私は知らない。
元夫はどこからか、私の住所を手に入れたようだ。正直言って恐ろしい。
彼と離婚したのは、私の身を守るためだった。
付き合っていた頃の元夫は、とても優しく、家庭的だった。しかし結婚した途端、私に暴力を振るった。気に入らないことがあるとすぐ手を出した。
それだけじゃない。彼は私に大事なことを隠していた。
元夫が10代の時、彼は地元でも札付きの悪だったらしい。毎日喧嘩に明け暮れていたのだとか。
彼は喧嘩の末、人を殺めていた。彼は正当防衛だと言っていたが、私には到底信じられなかった。
そんな彼からの手紙は読みたくはない。だけど手紙が私に対する脅迫なのだとしたら、読まない訳にはいかない。
無視して破り捨てた場合、警察に提出する証拠がなくなってしまう。証拠がなければ、警察は動いてくれない。
だから内容を確認する必要がある。もし彼が手紙で私を脅すつもりならば、手紙は証拠として保管しておかないといけない。
――――――。
「ふぅ……」
どうやら私の杞憂だったようだ。彼は私にしたことをとても後悔しているらしい。
手紙の内容は許しを請うものだった。所々書き間違えたのか、黒丸で塗りつぶされていたものの、私が懸念したようなことは書かれていなかった。
よかった……。これで安心して眠れる。
何だかどっと疲れた。これから夕飯を食べる気にもなれない。明日も仕事はあるし、シャワーだけ浴びてすぐに寝よう。
――ガチャ!
あれ? 部屋の鍵が開いてる。なんで? 朝閉めたはずなのに……。
『
どうか●許してほしい。
俺は君●に何てことをしてしまったのだろう。
後悔し●ない日はないよ。
君は今●、元気にしているかい?
傷付け●た俺が言うの●もおかしいけど。
元気でい●てほしい●んだ。
そしていい● ● ●出会いも見つけてほしい。
幸せになることを心から願ってる。
君は信じ●られないかもしれない。
俺は●●●●●君を本当に愛していた。
だけどもう●君と会うことはできない。
あれだけ●のことをしてしまったからね。
この手●●●紙はせめてもの償いをしたいと
思っ●て●書●いたんだ。
で●も、●これ●が最初で最後だ。
最後に言●わせてほしい。
本当にす●まなかった。
』
最後まで読んでいただきありがとうございました。
本当に元夫は反省していたのでしょうか……。