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残暑  作者: 佐野琴湖
4/6

同族嫌悪

放課後、あかねが以前聞いた約束の時間と場所を頼りに、屋上テラスへと向かう。

今の時代に口約束、しかも私が承諾しなかった場合、待ちぼうけする羽目になるのに、よく二人共約束したもんだと呆れつつも、目的地に到着する。


ーーーギィ。

重い音を立ててドアが開かれる。

真夏の日差しが眩しくて、少し目を細めた。

視界が戻ってくると、目前に一人の男子生徒が映る。


「あなたが、例のあかねに傘を貸してくれた人、ですか?」


背を向けていて顔までは見えないので、こっちから声を掛ける。

「え?」

振り向いた男子生徒は、屋上に吹く風に髪をなびかせて、こちらに振り向いた。刈り上げでショート、少し茶色の髪は、パーマでもかかってるのか柔らかそうに揺らいでいた。

一度目線を逸し、ため息をついた彼が、身を翻し近づいてきた。

彼の瞳が、その爽やかな雰囲気とは反対に、黒く暗く映って見えた。


「センパイの痣、妹のあんた?」


反射的に言葉に詰まった。


「だから、お前の義理の兄貴だよ。わかんだろ?」


今度は、完全に思考が停止する。


「ちょっと前から、一ヶ月とかそこら?センパイの首とか、手首とか、長袖で隠してるみてぇだけど、なんか縛られた跡みたいなのがあんだよね。先週まで手首に痣なんかなかったのにな。土日挟んだこの休み中にできたことを考えたら、妹のお前しかいないよね。

なぁ、なにしてんの、センパイと。」


彼は、なんて、答えてほしい?

冷静に対応しないと、足元を掬われる。


「どうして、お兄ちゃんのことが気になるんですか?

それを聞かないことには、お話できません。」

「あは、冷静で強気。いいね、好きだよ、そういう子。」

相手の感情が、分からない。


「知りたい?」

こくりと頷く。

「あは、かぁーわいい。こんなに、可愛くて、女の子っぽくて、なのに、やることエグいって想像したら、会ってみたくなったんだよ。センパイの妹に♡」


思考が、どこか遠くに飛んだ気がした、

「は、えっ?」

「だから、運動部で主将張ってるような兄貴を、こんな可愛い妹が嬲ってるって思ったら、会いたくなったんだって。

運良くいつも一緒にいる女のコ見かけて、ちょっと会わせてーって言ったら、実現しちゃうんだもん。運命だよね。」


はーっと、深いため息をついたあと、彼は更に距離を詰めてきた。

「あの厳ついセンパイがマゾなのか、それとも妹ちゃんが単にサディスティックなのか、そこはもうどうでもよくてさ。俺、Sっぽい女を泣かせるの、好きなんだよね。」

そう言いながら、彼の指が私の顎を掴む。

「ねぇ、泣かせていい?」

ぞわぞわと、背中に悪寒が走った。

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