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残暑  作者: 佐野琴湖
2/6

貴方は私のもの。


高校生になった頃、兄の様子が変わった。


前から変だったが、最近纏わりつくような、じっとりとした目で見てくる。

決して、兄弟のそれではないような、目で、

自然と会話する中で、家族で食卓を囲む中で、さりげなく混ぜてくるその視線に、動機がする。

イヤな動機、ウソがバレた時、隠し事が露見しそうな時、そんな時と同じく嫌な動機が。

(気持悪い…。)

でも思い上がりだと自分に言い聞かせて、違和感を覚える度に口角を上げて笑ってみせた。

すると兄は少し後ろめたいかのような、そんな表情をする。少し真顔になって、またいつも通り、といった風で話し始める。


ことが起きたのは真夏の暑い夜だった。

いつも通り、両親がいちゃいちゃしながら軽快な声で

「お留守番よろしくねー♪」

と言ってちょっとした記念日の旅行に行ってしまった日のことだった。


家族二人の食卓。テーブルを囲んで何気ない話をする。

今日も兄の視線は纏わりつくようで気持ち悪い。

兄の視線を追うと、寝間着姿の義妹(わたし)の足、腰、胸、そして唇、あ、今、目が合って逸したなって、分かる。

早々に食事を終えて風呂場に向かう。

「っ、先にお風呂貰うね。」

ガタンーーー

椅子が乱暴に倒れたと思ったら、兄の顔が目と鼻の先にあった。

「お、にぃ、ちゃん?」

「名前。」

「は?急に、何。」

「お兄ちゃん呼び、やめろって。昔から言ってんだろ。」

「名前で呼んだらこの壁ドン状態から、離してくれるの?」

「いや?」

(なんで疑問形…。)

「お前、俺になんでこんなことされてるのか、理解してんだろ。」

ギュッて、心臓が掴まれたみたいだった。

それは、言葉にしたら取り返しが付かなくなるみたいで、形容したら駄目だと思った。

「分からない。邪魔だからそこどいて。」

私は、私と兄の関係を変える気はないと、意志の籠もった瞳で見上げる。

「はは、いいね、その顔。泣かせたくなる。」

「泣かない。私はお兄ちゃんから何をされても、泣く気はないよ。」

精一杯の言葉を紡いだ瞬間、鈍い音がして、両手首が頭上で一纏めにされる。

「いっ、た。」

「こんなにか弱くて可愛いのに、どう足掻いたって、女なのに、その目。ゾクゾクする。もっと、歪ませたい。

嫌われたっていい、もう、どうしようもなく、お前に、その()に、惹かれてるんだよ。」


あぁ、気づいてしまった。


うちの兄は、マゾなんだと。


「なぁ、そんな目で、俺を(なぶ)ってくれ。」










            ***



   


























寝室で横になりながら、兄のことを考える。

ベッドの下で、唸り声が聞こえる。

静かなモーター音と、低い唸り声、衣擦れの音。

時々不快に、名前を呼ばれる。

でも、聞き取れないから、夜明けまで放置しよう、そう考えてまた、私は眠りについた。



貴方(あに)は、わたしのもの。》

途中までSっ気出してた兄が、マゾだと気づいた瞬間。

淡々と調教しちゃう妹。

兄と私の関係は変えないとかいいつつ、お兄ちゃんの姿を見てS心に火がついてしまえばいい。

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