表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/29

第5話 ウォークの美味しいお酒

「ようこそcabin02へ」

ドアを開くと洗練された室内が広がる。

リザリアにはわからないだろうけど・・・太陽光や・・からエネルギーを取り出せる・・パネル。どうだ すごいだろ?この車は例えるなら地球なんだ。

さあ 驚いてもらおうか?と期待に胸を膨らませたけど、首をかしげて感心そうに車内を眺めているだけで、「クリーナ部分がそんなことに!」とか「え!ウォータろ過機能?すごーい」なんて言ってもらえるはずもなく、彼女が出来たらきっとこんな感じの反応なんだろうと予習をした気分になった。


だけど助手席のシーとは沈み込むようにフカフカなので驚いて「魔獣のベロの上にいるみたいな感触ね。食べられたりしないかしら?」とファンタジックな子供らしいところもあった。

リアルな感じだったけど 魔獣なんているはずないのにな。ははは まさかな。


車を道なりに進ませると馬車はドローンの写真の位置に止まったままだった。 

馬車の車輪のところで 夏なのに毛皮を着込んだ男性が片方の車輪を必死に押し上げようとしている。

そうか 車輪がぬかるみにハマって動けなくなっていたのか。

馬は馭者がいなくて 草をついばんでいるしこれじゃ 引き上げるのも大変だろう。


車を止めて「手伝います」と話しかけようと近寄ると 振り向いた男の顔には・・牙があった。

男と男がお互い見つめ合い戸惑っていけど奇妙さ以外は何の感情も生まれない。 

そんな時にリザリアが後ろから「ウォークね」と声をかけてくれた。

当然の様に教えてくれたけど 「はいそうですか」と言えるような状況じゃない。

ギョロギョロとした瞳は・・リアル。口元は・・ヨダレがリアル。

宇宙人?そうなのか 宇宙人なのか? 対話を試みてみることにした。

「ワレワレハ・・地球人ダ・ヨロシクね」

「ブヒー ブヒー ブヒ?」

わからない。でも 最後の「ブヒ?」だけはおそらく疑問形だったぞ

外国語を初めて習ったような感動を覚えたけど 今はやることは一つだろう。


「うりゃ!」

「ブヒー ブヒー!」

「うりゃ!」

「ブヒー ブヒー」

二人で押してもやっぱり重い。車輪の先に中くらいの石があって持ち上がりそうなところで車輪が石に引っかかってしまう。


「私も 手伝ったほうがいいのかしら?」とリザリアも見かねて声をかけてくれたけど

アイドルに手伝わせるわけにも行かないし

「いいや、リザリアは服が汚れるといけないから・・」と言いかけたけど 

「そうだ もし馬を前に進められるなら俺たちの動きに合わせて進めてくれないか?」と馬の方をお願いしてみた。


「わかったわ。二人とも頑張ってね」

そして 3人は配置に着くと俺たちは力を溜めて呼吸を整えた。


「行くぞ! せ~の! うりゃ!」」

「ブヒー ブヒー」

車輪が動き出す・・が石に引っかかる。

「いい子ね、お馬さ~ん こっちよ こっち。」

馬が前進して車輪が持ち上がるとゴットン!と音を立てた。


三人で力を合わせて車輪を持ち上げることが出来た。

大きく息を吐いてウォークの瞳を見ると向こうもはぁはぁと息を切らせながらこちらの瞳の動きを見ているようだった。

この人はきっと「助かったよ」と感謝の言葉を言いたいんだろうな。

それからウォークは 思い出したかのように馬車に積まれている道具袋から水袋を取り出すと「のどが渇いただろ?」と言わんばかりに「ブヒ?」と袋を手渡してきた。


ゴクゴクと受け取って飲み干すと、これは・・お酒?

薬のような味だけど 少しハッカのようなスッキリした感じのする飲みやすいお酒だった。

「美味しかったです ははは」と感想を述べると通じているようで

「ブヒー ブヒー」と牙をむき出しにして笑っているようだった。


「ねえ 私ものみたいんですけどぉ~」と二人をみて羨ましそうにリザリアはマシュマロのホッペを膨らませてみせた。

ところで 「これからどちらへ向かうのですか?」と聞きたいところだけど言葉がわからないから仕方がないだろう。

ウォークは馬車の用意をして 俺たちもタオルで汗をぬぐってから「俺たちも先へ進もう」と声をかけるとお酒に口をつけようとしたリザリアは お酒に蓋をしてから残念そうに革袋を置いて、手を空に掲げて意識を集中し始めた。

「大丈夫よ。今は大丈夫。神の目でも 天界から私たちを探すのは大変なの! それにあの神様はおおざっぱだし、もし見つかったとしても。私が・・いいえ なんでもないわ」

と神的な力でも使ったかのような顔付きだったけど最後の方は風が吹いてきてよく聞こえなかった。

何か照れているのか?気まずい話もしてなかったはずなのに話題を変えるかのように「だけど ショウスケって、いつ ウォークの言葉を覚えたの?」と聞いてきた。


「わからないけど 最後はうまく収まると思ってたよ」

「あなたって ワイルドなのね」

「自然派と呼んでほしいな。コミュニケーションは苦手だから」

まあ コミュニケーション力は欲しいけど 今回はそれ以前に言葉の壁があった。

それに 道を進んでいけばどこかの村へは続いているだろうと、前向きになろうとすると

リザリアが「このまま真っすぐ行くと 村があるのよ。ウォークのブルクさんから聞いたの」と言い出した。


もしかして話せたのか? ツインテールなのに?


あっけにとられたけど、どうして教えてくれなかったのかと尋ねたら「あら ショウスケには必要なかったわ」とわが子を自然界の厳しさにさらす親鳥のような事を言っていた。

ウォークも馬車の用意が終わると こちらへ来てさっき飲んだお酒の入った革袋を箱に詰め込んで持ってきて「ブヒー ブヒー」と感謝の言葉を述べてくれた。

意味は分かるけど最後の言葉だろうし やっぱり気になるな。。

「なあ 教えてくれよ リザリア」

「そうね じゃぁ ショウスケ 左の手を貸して」と言われたので助手席へ手を伸ばすとリザリアは天女の羽衣だった毛糸の玉から糸を引き出して 「カチ」と八重歯で糸を切ると片方を俺の薬指に結び もう片方を自分の薬指に結んだ。

「いいわよ 手を振ってみて」

言われるままにスパ!と手を振ってみると手品のように糸が消えて見えなくなったし 触ることも出来なくなった。


すると ウォークのブルクさんの声が聞こえるようになった。

「さっきは ありがとう。オレ 行商してる。また どこかで会おう。この先はぬかるみも多いから 気負付けてブヒ。では!よい旅を ブヒ!」

言葉がわかると 顔の表情も人間らしく見えるものだな

「こちらこそ 美味しいお酒をありがとう。でも cabin02ならぬかるみも大丈夫さ」

「すごい馬車を持っているブヒね」


そうか cabin02は馬車にみえるんだ。

こうして俺たちは 村を目指すのだが日も真上をさしているし夕暮れまでに着けるだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ