第21話 エルフの隠れ里
「本当に二人だけで来たのか? お前たちは勇敢だな」
俺は 事情を話すとグーラたちは驚いた様子だった。
この辺りを歩き回ることは 危険らしく恐ろしいものが潜んでいるらしい。
「アイツは 出てこなかったでやすか?」
「アイツって何かしら?」
「知らないならよかったでやす。 アイツ・・それはハエの姿をした化け物でやす」
俺とリザリアは顔を見合わせた。
グーラが語り出す
「その昔 王族が滅びてから今度はハエの化け物たちが我々を苦しめるようになったのだ。アイツの皮膚はとても硬くて矢が通らん」
「唯一の弱点は 腹部の柔らかい場所だけでやす」
「我々は 長い年月をかけてアイツらを駆除し続けていった。しかし 一匹だけ妙に用心深い奴が残っていてな。オトリを使っても倒せなかったのだ」
ビスポは荷車を止めると立ち上がった
「デスクイーン・・・ そうオレたちは呼んでいる。追いつめてやると最後は向かってくるのがハエの性格なのに コイツだけは必ず逃げるんだ。だから子供でも育ててるんじゃないかって里で騒ぎになったことだってあるんだぜ」
「やめるでやす ハエが繁殖なんてしてたら怖いでやす」
はははは
がははは
俺は荷車を再び押し始めた
「ところで 薬だけどキノコばっかりで 薬草なんて育たないんじゃないか?」
ビスポも荷を引き始めた
「薬草か・・確かに薬草は生えない大地だが もっといい物があるぞ」
もっといい物がなにかはビスポは詳しく知らないようだけど
キノコに生えたカビを加工することで薬草と同じようなものを作ることができるらしい。
グーラが片手を上げた
「着いたぞ」
「今度の里は ここでやしたね 疲れたでやす」
周りを見渡してもキノコの森しかない。
だけど キノコの幹の部分をよく見ると・・・尻?
キノコの幹からエルフの丸みを帯びた柔らかそうなお尻が突き出していた。
「見てショウスケ」
リザリアが指さした先は キノコの幹の周りをグルリと囲むように等間隔にエルフの色々なお尻が突き出している。
体はどこへ行ったのか?
グーラはしなびたキノコを拾い出した
「どうやら早く着きすぎたようだ。オレたちは同朋のために火を起こしておいてやろう」
状況が呑み込めないままに 焚き火の準備を手伝った。
ジャリジャリ・・ ジャリジャリ・・ ジュボ!! ボボボボ
俺はキャンプ用のファイアスターターという何度も使えるマッチで火をつけた。
「火魔法でやすか?初めて見たでやす。ビスポの時代は終わったでやすね ははは」
「うおー! え? 種火を起こさなくてよかったのかよ・・・」
リザリアが胸を張ってツインテールをかき上げた。
「魔法じゃないのよ。ショウスケは すごいでしょ?ふふふ」
スッポ! スッポポ!!
「ぷっはぁ~ 」
「ああ 空気が美味しいわ」
キノコの幹を見ると幹に埋まっていたエルフたちがスマートフォンの充電器スタンドから
外されたかのように 元気な姿で現れて肩を回したりストレッチをして体をほぐしているようだった。
「ショウスケ あれを見て」
リザリアがさっき 指さしたキノコの幹に等間隔に埋まっていたエルフたちを指さした。
エルフたちはバナナの皮をはぐように奇麗に抜け出した。
「蝶の脱皮みたいだな あはは」
しかし キノコはしなび始めてしなびたキノコへと姿を変えてしまった。
グーラがエルフたちに「同胞たちよ。食事は終わったか?さあ 火を起こしてあるから体を温めるといい」といって焚火を指さした。
俺はグーラのところへ行った。
「グーラ 俺たちを紹介してくれ! それと 食事ってどういうことだ?」
「植物が無くなってからエルフの食事がこの形に変わったのだ。むろん 腹のうずきは起こるので食べるという行為自体は続けているのだが、徐々にその腹のうずきは無くなりつつある」
「キノコから養分を吸収しているのか?面白い食事のやり方だな」
リザリアが ショウスケのとなりにやってきた。
「私は食べられた方がいいわ。グーラさん 世の中には美味しい物が沢山あるのよ」
グーラはため息をつく
「その通りだ。そして あのキノコを見てほしい」
グーラの指さした先には しなびたキノコがあったのだった。




