騙された側の話
————ひと月後————
ひと月後、私とアルバートはエリオット殿下の招待で、王宮へと参じていた。
名目は二人だけの庭園で行うお茶会。
(でも、きっとそれだけでは終わらないわよね……)
重いため息を内心吐くが、行かないという選択肢は初めからない。
王宮内はとても広く、国内全土の腕利きの職人を集めて作り上げた家具や装飾品はどれをとっても一流品だ。
先導する侍女につれられ庭園に着くと、二ヶ月ぶりに見るエリオット殿下とその腕にしがみつくマリア嬢が席に着いていた。
(やはり、というか何というか…)
肩を寄せ合っている様は、恋人のようだ。
呼び出された私がお邪魔をしている気分になる。
足が止まってしまいそうになるが、無理矢理足を動かした。
王宮内の庭園は小さいものを合わせて、五つぐらいある。
今日私が呼び出されたのは、五つある庭園で一番大きい中央庭園と呼ばれている。
王宮専属の庭師達が季節ごとに花々を入れ替え、見る者の目を楽しませてくれる。
用意されているティーテーブルの周りにはラナンキュラスが咲き誇り、目の前の二人を考えなければ見惚れていただろう。
足を動かし殿下たちに近づくと、最初に私たちに気がついたのはエリオット殿下だった。
今し方、笑顔だったのにも関わらず私を見るなり、あからさまに険しい顔つきに変わる。
殿下につられて、こちらを見たマリア嬢は、私に気づくと途端に怯え始めた。
(…人を化け物だと勘違いされているのかしら)
こうなると多少なりとも傷つくのだが。
嫌われていることは重々承知しているが、数歩前に進み出ると優雅に見えるように、身を屈めてカーテーシーをする。
殿下は座ったままで、私に声をかけた。
「……やあ、ルイーゼ。よく来てくれたね」
「殿下におかれましてはご機嫌麗しく存じます。また本日はこのような素敵なお茶会にご招待頂き、誠にありがとうございます。」
「いや、こちらこそ急にすまなかったね。実は私たちの婚約について相談したいことがあったんだ」
(きたっ‼︎)
そう思いながらも、静かに頭を下げたまま「かしこまりました」と答える。
あと少し完結予定です。




