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プロローグ
天を覆うは一面の暗灰一色。空、と形容される空間ではなく、いわゆる“鱗”のような質感のそれは、しかし見渡す限りに広がり、空と言えば確かにそうとしか思えない規模のものであった。
雲ひとつない一面に、ふたつの光が赫赫と浮かんでいる。切れ目のようにも見えるそれは、周囲を舐めるように動くとやがて一点に据わる。
「……こんなデカい蛇が空に浮いてるとは世も末だな」
恐ろしげな双眸を前に、ひとつの影がぽつりとこぼした。
一人の少年であった。
彼は普通ではない。
さりとて英雄の類いでもない。
この世界においては人間ですらない。
とある目的の為に、異なる世界より喚び出された、兵器。
「終わりの始まり……いや、そりゃさすがにクサすぎか。なんでもいいがはよ終わらせて帰らんと」
次第に高密度の力がぶつかり合い始め、大気が揺れ、地が震える。
いま、世界の耐久性が試されていた。