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罪人アクアリウム  作者: 空波宥氷
3/16

学園の統治者

主な登場人物


・反町友香(ソリマチ ユウカ

中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。

ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。

茉莉花茶が好き。



・青山清花(アオヤマ サヤカ

神奈川県警の警部補。友香の姉的存在。

英国人と日本人のハーフ。

灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。

愛車はナナマル(JZA-70)。


3 学園の統治者



 ロマンと別れた友香は、学長室の前にいた。

 中学生棟から少し離れたところにある、ビルの12階。そこに友香はいた。



「失礼します」



 ノックをして木目調の扉を開ける。

 室内は広々としており、来客用の紅いソファと黒いローテーブルが置かれていた。奥には、学園長・橘秋音たちばなあきねと書かれた黒いプレートが乗ったデスクがあり、仕事用のホログラムがその上で踊っていた。

 その横で、後ろ手を組み、ガラス窓の外を眺める女性の姿があった。



「来たか、友香」



 友香に声に彼女が振り返る。

 橘秋音。緋梅学園の学園長にして、創設者であった。


 御歳46歳の彼女は、一見、穏やかそうな顔をしていたが、その瞳には鋭い意志を感じさせる煌めきがあった。

 肩まであると思われる髪を、髪留めでとめており、仕事ができそうな雰囲気を醸し出していた。

 まぁ、最も、学園長というトップに君臨する者のオーラの方が勝っていたのだが。



「おはようございます、秋音さん……いえ、橘学園長」

「フッ、そう硬くなるな。昔と同じように秋音さんでいい」

「ふふ、わかったわ。こうしてお話するのは久しぶりかしら?」

「そうだな。まぁ、座ってくれ」



 友香をソファへと促す秋音。

 その後ろでカタカタと給仕ロボットが動き始めた。ロボットが、秋音の元に麦茶の入った2つのグラスを届ける。

 礼を言いつつ彼女が受け取る。



「友香も飲むといい。麦茶だ、暑くなってきたからな。熱中症には気をつけるんだぞ」

「ありがとう。いただくわ」



 彼女が、座った友香の前にグラスを置いた。

 そして秋音もソファに腰掛ける。ちょうど友香と対面する形だ。



「で、私を呼んだのはなぜかしら?」



 彼女が座ったのを見計らってから、友香が尋ねた。



「唐突な話ですまないな。友香は「罪人アクアリウム」を知っているか?」

「「罪人アクアリウム」……?」



 全く聞き覚えのない言葉に、その不吉な語感に友香は眉をひそめる。



「ああ。実はな、昨晩、うちの生徒が襲われたんだ」

「……!」



 その内容に、険しい顔をする友香。



「その生徒は、巨大な水槽に入れられ、危うく窒息するところだったそうだ。その水槽の底にだ、犯行声明とも取れる言葉があったのは」

「それが「罪人アクアリウム」……」



 友香がグラスの底を覗き込む。

 そこには、澄んだ琥珀色の液体があるだけだった。



「ああ、当事者に詳しく話を聞こうにも意識不明でな。その目撃者も、狂乱状態でとてもじゃないが何かを聞ける状況じゃあなかった」



 首を横に降る秋音。



「かけつけた警察官によると、発見されたときには、椅子に縛り付けにされていたそうじゃないか」

「椅子に縛り付け…?何のために」

「さぁ?だが何か目的があったのだろう。でなければ、声明文じみた文字を残すようなマネはしないだろう」

「……ふーん」



 友香は思考しているのか、ゆっくりと頷いていた。

 そして、秋音の目を真っ直ぐに見つめると、



「で、私にその真相を究明してほしいと?」

「察しが良くて助かる」



 秋音は立ち上がって、デスクに向かう。

 その背中に、同じく立ち上がった友香が尋ねた。



「じゃあ、協力者を呼んでいいかしら?」

「もちろんだ。ああ、すでにこちらで心強い助っ人を呼んでおいた。後のことは頼んだぞ、中華街コンビ」



 友香を振り返り、ニヤリと笑う秋音。

 彼女の言いたいことを察した友香が、目を見開き笑みを浮かべた。



「そう……ふふ、ありがとう」



 友香は、バックを手にすると、



「それじゃあ、何かわかったら報告するわ。お茶ご馳走さまでした」

「ああ、気をつけろよ」



 探偵少女が部屋を後にする。

 シンと静まり返った室内で、秋音が真剣な表情をして呟いた。



「楽園に、罪人はいらないからな」


・橘秋音(タチバナ アキネ

緋梅学園の学園長にして、創設者。

肩まであると思われる白髪を、髪留めで留めている。

幼い頃の友香を知る人物。

御歳46歳。

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