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罪人アクアリウム  作者: 空波宥氷
2/16

緋梅学園

主な登場人物


・反町友香(ソリマチ ユウカ

中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。

ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。

茉莉花茶が好き。



・白妙夢(シロタエ ロマン

友香、優衣の親友。

舞台女優として世界で活躍している少女。

ミディアムショートにした明るい茶髪と綺麗なタレ目が特徴。

2 緋梅学園



 臨港パークから700mほど東の海上に作られた学園群。初等部から大学部までの教育機関に加え、学生寮や数多くの研究施設が創設されていると言えばその規模の大きさが分かるだろう。


 学園群というよりは、テーマパークや要塞都市と形容した方が適切かもしれない。緋梅学園は、シドニーのオペラハウスをモデルに設計されているという話もあるくらいなのだ。


 学園には、至る所に水路が巡らされている。朝は陽の光を反射しキラキラと輝き、夜は今度はその光を天に返すかのようにタワー群が煌々と光を放ち、横浜の海を照らしていた。


 友香は、中等部ビルの一室で講義を受けていた。その隣には白妙ロマンの姿もあった。

 友香はシャーペンを動かし、広げた紙のノートに板書を取っていた。その度に、ストラップがカチャカチャと鳴っていた。



「友香ちゃんは相変わらず、紙のノートを使っているんだね」



 その様子を横でじっと見ていたロマンが口を開いた。



「ええ、なぜか紙に書いた方が勉強した気になるのよね」

「ふーん」



 手を動かしつつ、答える友香。

 このご時世、周りの学生のほぼ全員が電子ノートを使用していた。紙のノートを使う友香は、少数派を通り越して異端だったのである。



「紙のノートは、簡単には無くならないから好ましいのよ」

「水に濡れたらおじゃんじゃない?」

「それは電子ノートも同じでしょ?」

「言われてみれば……」



 ロマンが目から鱗みたいな表情をする。



「それに、簡単には無くならないっていうのは、頭の中から覚えたことが簡単には無くならないっていうことよ」

「さすが友香ちゃん。全部頭で覚えちゃうのかぁ」

「あら、私だって忘れることはあるわよ?だから、そうね……」



 友香は少し考えてから板電話スマートフォン取り出し、パシャりとノートの写真を撮った。



「こうやって、アナログとデジタルの両方で取っておくのが一番かもしれないわね」

「うーん、余計なファイルを増やすだけだと思うけど……」

「一長一短、取捨選択よ」



 板電話を操作しながら、友香が言う。



「それに、欠点があっても、その2つを組み合わせたら絶大な効果を生み出すものもあるんじゃないかしら?」

「今の時代、オリジナリティって既存のアイデアを組み合わせたものだからねぇ」

「女優さんも大変ね、需要っていう席は限られてるものね」

「そうなんだよねぇ」



 ロマンがため息をついたときだった。






『中等部2年宗教学専攻、反町友香さん。至急、学長室までお越しください。繰り返します。反町友香さん、至急ーー」






 教室のアンプから、講義中にも関わらず全校放送が流れた。

 生徒たちの空気がざわざわと騒がしくなる。

 そんな彼らを尻目に、ロマンが尋ねる。



「あら、何かしら?」

「もしかして何かやっちゃったの?」

「さぁ……?」



 ロマンは、少しニヤニヤしていた。

 彼女たち中学生にとって、イレギュラーとは歓迎すべきことなのだ。

 それに対し、友香は心底心当たりがないといった表情をする。



「まぁ、とりあえず呼ばれているのだから行ってくるわ」

「うん、私はこのまま講義受けてるから」

「ええ、なかなか出られない講義、楽しんで」

「ありがとう」



 ロマンが微笑む。

 友香は荷物をまとめ、急いで立ち上がると教室を後にした。



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