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罪人アクアリウム  作者: 空波宥氷
14/16

復讐の果てに

14 復讐の果てに


「被害者の名前は大谷雪乃、17歳。緋梅学園高等部、経済学科に所属する生徒でした。銀行マンの父と、投資家の母を持ち、自身も株取引きのエキスパートを名乗っていました」



清花が、首輪に入ってきた情報を読み上げる。

ここは、事件現場ではない。

取り調べ室の横、マジックミラー越しに清花と友香がその様子を見ていた。

犯人はすでに捕まっていたのである。



『では、あなたが大谷雪乃さんを刺したので間違いありませんね?ーー氷川奏さん』

『はい、間違いありません』



 その犯人とは、氷川奏だった。

 彼女は、赤レンガ倉庫を訪れていた大谷雪乃をその場で刺殺したのだった。


 多くの観光客が訪れる時間と場所。

 血を流し倒れる雪乃と、包丁を手に立ち尽くす奏。


 それを取り囲むようにして、野次馬たちが様子を眺めていた。

 まるで、見世物を見ているような。水族館の魚を見ているような。警察官がかけつけたときには、そんな不気味な雰囲気だったそうだ。



『なぜ、大谷雪乃さんを?』



 足利警部が問いかける。



『彼女は、私の息子を死に追いやったんです……!罪を犯していたとはいえ、大事な、たった一人の家族だった……それをあの女たちは奪った!!それが許せなかった!!』



 奏は怒りをぶちまけた。

 彼女の絶叫が取り調べ室にこだまする。



『なのに、彼女は少年法で守られている……!人殺しがのうのうと生きている……!それが許せなかった……』



 彼女は涙を流し、俯いた。

 足利はなんて言葉をかけるべきか逡巡した。

 そのとき、ガチャリと扉が開いた。そして、白くて紅い、少女が入ってきた。



「ゆ、友香ちゃん……」



 足利が突然のことに驚く。

 それを横目に友香は、奏を真っ直ぐに見つめ、



「あなたの言い分も理解はできる。この世の中には、救いようのない罪を犯した人間もいるわ」











「だからこそ、あなたがその、救いようのない人間になる必要はなかったのよ」



 少女は悲しそうな顔をして、彼女を見つめた。



「……!!」



 奏は目を見開く。

 そして、



「う……あああああああああ!!!!」



 机に顔を伏せ、叫んだ。

 彼女の中には、おそらく悲しみとともに後悔が去来していたのだろう。

 彼女は、許しを乞うがごとく涙を流し叫んだ。


 事件は解決した。

 誰も幸せになれない形で。


 少女はいつも以上に、事件解決後の虚無感を感じていた。


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