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罪人アクアリウム  作者: 空波宥氷
11/16

主な登場人物


・反町友香(ソリマチ ユウカ

中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。

ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。

茉莉花茶が好き。



・青山清花(アオヤマ サヤカ

神奈川県警の警部補。友香の姉的存在。

英国人と日本人のハーフ。

灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。

愛車はナナマル(JZA-70)。


11 影


 昼食を済ませた友香と清花は、氷川かなた宅を訪れていた。

 学園から、車で20分ほどの相生あいおい町にそのアパートはあった。


 清花が部屋の扉をノックすると、一人の女性が顔を出した。

 氷川かなたの母親、氷川奏ひかわかなでであった。




ーーそして、罪人アクアリウム事件の目撃者でもあった。




 彼女の顔はかなりやつれていた。

 母子家庭で、生きる希望だった我が子を失ったのだ。その喪失感は、想像を絶するものだろう。






「ごめんなさいね、こんなものしか出せなくて」

「いえ、お構いなく」



 奏がテーブルにお茶の入ったグラスを置いた。

 風を受けてレースのカーテンがふわふわと揺れる。

 窓ガラスから差し込む光は、暖かくもどこか暗く感じた。


 席に着いた2人は、奏が座ったのを確認してから質問を始めた。



「では、いくつかお聞きしたいことがあります」

「はい」

「昨夜、あなたは事件を目撃しましたが、どのような経緯でそれを目撃することになったのでしょうか?」



 少し逡巡してから話し始めた。



「それが、よくわからないんです……」



 俯きながら言葉を続ける彼女。



「買い物から家に帰ってきたら、何か睡眠薬のようなものを嗅がされて……気がついたら椅子に縛り付けられていました……」



 そのときを思い出したのか、苦しそうな顔をする女性。



「そうでしたか、そのとき何か気になることはありませんでしたか?」

「い、いえ……特には……」

「それでは、事件の被害者、つまり水槽で溺れていた青年に心当たりは?」

「……いえ、ごめんなさい」



 彼女は俯き、謝った。

 だが、友香は見逃さなかった。彼女の目が少し泳いだことを。



「あら?ないの?彼、あなたの死んだ息子さんをイジメてた人なんだけど?」



 その挑発的な質問に、清花が思わず少女を見る。

 彼女は、すぐに笑みを消すと真剣な表情をした。



「……知りませんでした」

「ふーん……」



 意味ありげに友香が何度か頷く。



「じゃあ、あなたに犯人と被害者、両者との接点はないのね?」



 少女が確認をする。



「え、ええ……」

「それはよかったわ」



 友香が目を伏せ、頷く。がーー






「それが本当だとしたらね」






 友香が笑みを浮かべ、その紅い瞳で彼女を見つめた。



「え……?」

「事件の3日前、あなたは銀行でかなりの金額を引き出していますね?」

「その総額700万円」



 清花が尋ねた。

 これが、友香が調べて欲しいと言っていたことだった。

 銀行で一度に引き出せる限度額は50万である。カードで何度も金を引き出す彼女の姿がカメラに映っていたのだ。



「ねぇ、700万もの大金、何に使ったの?」

「い、いろいろ入り用で……」



 なんとかはぐらかそうとする奏。

 だが、無駄なことだった。



「そう……てっきり、殺し屋でも雇ったのかと思ったわ」



 友香が不敵な笑みを浮かべ、彼女を見つめた。

 女性は目を見開き、



「ち、違います!!そんなこと!!」

「そうよね、だったら今頃、被害者は生きてないでしょうし、わざわざあなたを縛り付けにする理由もない」



 対照的に、冷静に返す友香。

 氷川奏は荒い呼吸を繰り返していた。まるで、図星を突かれた犯罪者のように。



「もういいですか……?」

「え?」



 息を切らしながら、彼女が声を絞り出した。



「もうお話しすることは全て話しました……これから仕事なんです。出て行ってもらえますか?」



 友香と清花は顔を見合わせた。

 彼女たちは、追い出される形で氷川宅を後にした。


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