光と影
主な登場人物
・反町友香(ソリマチ ユウカ
中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。
ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。
茉莉花茶が好き。
・青山清花(アオヤマ サヤカ
神奈川県警の警部補。友香の姉的存在。
英国人と日本人のハーフ。
灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。
愛車はナナマル(JZA-70)。
10 光と影
ガラス張りの食堂。
研究部棟の食堂にて、友香と清花は昼食を取っていた。
注文したものは、2人とも名物の学園カレーだった。
「学食なんて久しぶりですね」
「学生時代を思い出したかしら?」
「ええ、まぁ」
そう言って、窓の外を見やる清花。それにつられて友香も眺める。
窓の外のバスケットコートでは、ユニホームを着た生徒たちがボールを奪い合っていた。
その中には、九重優衣の姿もあった。
彼女がダンクシュートを決め、仲間とハイタッチをしていた。
「しかし、橘学園長はどのような結末を思い描いているのでしょうか?」
視線を戻し、清花が疑問を投げかけた。
「徹底的にやれ、と言われても少年法がある以上、彼らに罰を課すことはできないはずです」
この時代の少年法は酷いものだった。
簡潔に言えば、未成年の保護を過激に推奨した結果、彼らは何をしても許される法律ができあがってしまったのだ。
それだけ、子供というものに希少価値があるということなのだ。
友香は、スプーンを持ちつつ考えるポーズをとって、
「あの人は、決して道理から外れる人じゃないわ。おそらく、ポイントになるのは入学時の契約……」
「契約……?」
清花が怪訝な顔をする。
友香は板電話を操作し、ひとつの画像を呼び出していた。
その一部分を拡大し、清花に渡す。
「……なるほど、そういうことですか」
言わんとしていることを理解した清花が、少女に板電話を返す
「だからまぁ、そっちは心配しなくて大丈夫よ。あの人ならなんとかしちゃうだろうし」
コップの水を飲み、胸元をパタパタと仰ぐ友香。スパイスてんこ盛りのカレーで身体が火照ったのだろう。
一方、清花は表情ひとつ変えず、涼しげな様子だった。
「信頼しているのですね」
「ええ、あれほど狡猾な上に筋を通す人を私は見たことがないわ」
目を細め笑う友香。
「それは……褒めているんですか?」
「ええ、もちろん」
怪訝な声を出す清花に、少女がクスクスと笑う。
「話は戻るけど、清花に調べて欲しいことがあるの」
「ああ、さっき言っていましたね。何ですか?」
スプーンを止め、友香を見る清花。
彼女を真っ直ぐに見つめ、少女が要望する。
「氷川かなたの母親、氷川奏の銀行口座を調べて欲しいの」
「銀行口座ですか……?何のために?」
「それはまた後で。とにかくお願い」
「……わかりました。問い合わせておきます」
「よろしくね」
そう言って、再び友香はカレーを食べ始めた。
それに倣い、清花もスプーンを動かし出した。