表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
罪人アクアリウム  作者: 空波宥氷
1/16

プロローグ

主な登場人物


・反町友香(ソリマチ ユウカ

中華街に暮らす探偵少女。中学2年生。

ピンク味の帯びた白い髪に、赤い瞳を持つ。

茉莉花茶が好き。



・青山清花(アオヤマ サヤカ

神奈川県警の警部補。友香の姉的存在。

英国人と日本人のハーフ。

灰色の髪色に青い瞳という身体的特徴を持つ。

愛車はナナマル(JZA-70)。


1 プロローグ


 彼女が目を覚ますとそこは、薄暗い場所だった。


 赤い絨毯が敷かれたそこは、目が慣れてくるとどこかのホールだということがわかった。ホールの隅には、蜘蛛の巣が張った照明や、椅子が重ねられて置かれていた。


 女性は気がついた。

 自分の身体が、ロープのようなもので椅子に縛り付けられていることに。



「ちょっと……!何よこれ!!」



 彼女が拘束を解こうともがいていると、目の前の緞帳どんちょうにスポットライトが当てられた。



「な、なに……!?」












 古い映画のようなカウントダウン映像が始まり、そして終わると同時に幕が開いた。

 彼女は目の前に飛び込んできたその光景に、その恐ろしさに身を震わせた。


 そこには、水で満たされた巨大な立方体があった。無機質な光に照らされ、ガラスと水が煌めきを帯びている。そしてーー



「がぼっ……!!がぼぼぼぼ!!!!」



 その中ではひとりの少年が、酸素を求め、もがき苦しんでいた。

 少年は窒息寸前なのか、化け物にでも出会ったかのような醜悪な形相をしていた。








「どうかしら?お望み通り、契約内容は履行したわよ?」








 水槽の裏から、一つの人影が現れた。

 体格や声、服装から判別して少女だろうか。彼女は、中世ヨーロッパで着用されていたような真紅のオペラドレスを身に纏っていた。

 頭に乗ったシルクハットカチューシャが、少女の顔に影を落とす。



「なんで、こんなこと……」

「なぜ?あなたが望んだことでしょ?それを私が代行しただけ。批判される筋合いはないわ」



 女性が、水中でもがき苦しむ少年が見えるようにガラスの横に立つ少女。



「やめて……今すぐやめてください!!」

「あら?いいの?このまま黙って見ていれば、息子さんの無念を晴らせるんじゃなかったのかしら?」

「もういいから、やめて!お金も返してもらわなくていいから!!」

「……そう」



 女性は微かに感じた取った。

 少女が微笑みを浮かべたのを。その残酷な行為からは想像もつかないほどの綺麗な微笑みを。

 その瞬間、水槽のガラスが四方に開き、水が音を立てて流れ出した。自由を得た水は、身動きの取れない女性へと一気に向かい、大きな水しぶきを上げた。



「それじゃあ、さようなら」



 水浸しになった女性に背を向け、少女は笑みを浮かべながら舞台から姿を消していった。

 薄れゆく意識の中、女性は、遠くからサイレンの音が聴こえてくるのを感じた。






 一方、空になった水槽の中、水滴に濡れた底にはスペイン語でこう書かれていた。











『Acuario Criminal』






罪人ざいにんアクアリウム』とーー








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ