私の彼はユーチューバー 6
関西弁。
でもこの人苛々しているなと感じたのも束の間、
男は完全にプリントアウトされるのを待たずに、
紙を無理やりプリンターから引っ張った。
静かな左半分の室内に紙とプリンタが擦れる音が響く。
私は体が引き付いたけど、
気をとりなおしてパソコン画面ともう一度向き合おうとした。
男「なんやねん。この求人票、嘘ばっかりやんけ。
もう二度と掲載するなってゆうたやろ。ふざけんなよマジで」
全員が動きを止めて視線が一点に集中する。
右と左に分かれていた空間が大声で決壊した。
さっきの男が中腰でカウンターの上に両手をつき、
職員へ罵声を浴びせたのだ。
対面している職員は座ったまま何も言わなかった。
その態度にさらに腹が立ったのだろう。
男「おい、聞いてんのか。こんな嘘が一つでもあると
何も信用できなくなる。一体どこを見ればいいのか分からんやろ。死ね」
男はボリュームをさらにあげて叫び、カウンターの上を叩いた。
職員を睨んだまま態とらしく「チッ」と舌を鳴らし、
完全に立ち上がって部屋を出て行った。
何があったのかよく分からないけど、
すさがに死ねはないだろう。
周りも不快に思ったのだろう。
男が去っていった自動ドアの方を、
凝視している人が見受けられた。
ここに居ること自体が億劫なのに、怒鳴り声がさらに癇に障った。