私の彼はユーチューバー 4
どの未来もあり得ない気がする。
はじめは一つ一つの文字を細かく追っていくけれど、
どれも同じに見えて雑になる。
次へを押す回数だけが順調に増えていった。
よく分からない、
という頭に浮かんでくる言葉をかき消そうとする。
そう、よく分からないんです。
会社のことも、自分に向いていることも。
何がやりたいのかも。
このパソコンと向き合うたびに痛感させられる。
もう失敗はできないから、そうも言ってられないのに。
唇を舌で濡らし、噛みしめる。
気づいたら、
顎先の上に人差し指がのっている私が、
スクリーンの上で反射していた。
次こそは、次へ、次へ、次。
スライドショーのようにパソコン画面が切り替わっていく。
結局、
オフィスチェアーを少し後ろに下げて
背もたれに背中を付けてしまった。
かわいい服や雑貨や文具を選ぶ時みたいに、
何かピンとくるものがあればいいのに。
あつ、これいい。
あの見た瞬間にときめくスイッチのようなものがあれば、
どんなに楽か。
給料・年間休日・賞与・福利厚生。
そんな付属品としてのアイテムがどうのこうのではなくて、
欲しくて欲しくてたまらないものが欲しい。
たぶん見つからないので早く結婚したい。
考えてみたら、会社よりよっぽど男の方がピンとくるやん。
こんな適当なことを考える私を、
選んでくれる人なんているのだろうか。
カウンターの向こうから、
「大変でしたね」「はい、はい」と
職員の声が聞こえてきて、
私も相談してみよかなと思うけど、
何を相談すればいいかも分からない。
「何一つ、いい求人が見つかりません」という戯言にも、
ここの人達は丁寧に答えてくれるだろう。
それが仕事なんだから。
申し訳なさすぎてそれこそ逃げ出したくなるやん。
「すみません。これはどうやってプリントするんですかね?」
急に左隣に座っている人から声をかけられた。