私の彼はユーチューバー 3
長椅子に腰掛け、天を仰いでしまう。
今日も天井に設置されているスピーカーから
小音のBGMが流れていた。
CDショップなら、
あなたを癒すヒーリングミュージックと書かれた棚に置かれているような
ゆっくりした音楽。
そのジャケットは、森の中にビーチチェアーが置いてあり
音符が飛んでいると思う。
まあ、音楽でも聞いて心を落ちつかませましょう。
誰だっていい時もあれば、悪い時もあります。
人間だもの。
今は慌てずに焦らずにいきましょう。
なんとかなるから。
上から降ってくる音に身を委ねていたら、
そう言われている気がしてくる。
森の中で心を癒したいのではない。
私は迷い込んだ森の中から、一刻も早く出たいのです。
順番が回ってきて
空いたオフィスチェアーに腰をおろす。
目前のスクリーンには、
ハローワークの開館日や休業日、
始業時刻などが掲載されていて、
真面目に読んだことはない。
スクリーンにタッチすると、
あなたの年齢は?と問われる画面へ切り替わる。
2、4と十字キーをタッチすると、
検索する職種を指定できる画面へ移る。
医療系/事務系/営業職系/技術系といった
大まかな分類から、
看護師といった特定の職種まで絞り込むことができる。
私はやりたいことすら定まっていないので
全部の求人をチェックしている。
最新の求人票から、古いもの、
近隣のものから全国各地のものまで検索にひっかかる。
右上に該当何十万件という数字が映し出され
6件の見出しが表示されている。
一件ずつに会社名・職種・仕事内容・就業場所が羅列され、
会社名をタッチすると求人票が拡大される。
右下にある次へボタンをタッチすれば、新たな6件が表示される。
24歳の私に用意されているいくつもの未来。
どの未来もあり得る気がするし、どの未来も、