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私の彼はユーチューバー 2
目の前に置かれた状況を
直視しないわけにはいかなくなるからだ。
室内の右半分は忙しなく人が動いていて
左半分は静まり返っている。
右と左を分けるカウンターで
境界線が引かれている。
半分はスーツを身につけた人が動いていて
電話をしている人
職探しの相談に答える人
何か書類を作っている人
キーボードを打つ音や
オフィスチェアが動く音で騒がしい。
もう半分はパソコンが並べられているのに
キーボードを打つ音はほとんど聞こえてこない。
パソコンの前に座りながら
一様に顎や髪に手を当てている。
よれよれのスウェット、作業着、スカート、ジーパン、
多様な格好をしているのにみんな同じ。
スクリーンを睨んで動こうとしない。
動きを止めて重力に垂れ下がる
顔や、服や、椅子まで
全部しおれて見える。
気を紛らわせるために
視線を逸らせば、
室内を囲う壁が圧迫してくる。
埋め尽くされた張り紙が、
就職支援セミナーや就職合同説明会、
子育て支援講座開催中と謳い
飛び込んでくるのだ。
逃げ出したいな。
結局、