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私の彼はユーチューバー プロローグ3
彼の職業に問題があるからだ。
「実は、お付き合いしている人がいて」
父と母へ初めて告げた言葉に、
二人はとてもびっくりしていたけれど、
顔は笑っていた。
特に母は楽しみな様子で、
どこに住まれている人? 年齢は?
などと詳細に聞いてきた。
「ユーチューブやってる人」
この言葉で母も父も黙って動きをとめた。
ようやく定年を迎えて、
ようやく国から許された僅かな年金を頼りに暮らす父。
食品会社に勤めていた父が毎月汗水垂らして得ていたお金より、
ツボッチは稼いでいると思う。
でも答えはノーだった。しかも、断固拒絶のノーだ。
だからといってツボッチの仕事を見せたところで
答えは何も変わらないだろう。
それどころか火に油を注ぐ結果になると思う。
彼の仕事はゲームをしながら、
ふざけて大阪弁で喋っているようにしか見えないのだから。
実際は全く違うのに。
彼がいかに真面目で仕事熱心か。
いくら説明したって分かってはくれないだろう。
周りにいる友達にだって分かってもらえないのだから。