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私の彼はユーチューバー  作者: 八田ガナ
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私の彼はユーチューバー 20

カレーの材料を買い終えた後、無印でキッチン用品を眺めていた。


百円均一のものとは質が違う、細々とした欲しい物がたくさんある。

料理が嫌いな母が中心に使ってきた我が家の台所は料理道具が乏しかった。

小さな頃から母の代わりに夕食を作る時があって、無職の今は毎日作っている。

料理人になりたいという時期もあったけれど母と父に猛反対された。

男社会だからとか、厳しい修行にお前は耐えられないだとかで。

大人になった結果、仕事がつまらないからとすぐに辞めてしまうような私だから、

言われたことは正解だったのだろう。


いつもなら足を止めて念入りに見るのに、

どこかから聞こえてくる関西弁が気になってあまり手につかなかった。


無印良品を出てすぐに声のありかに気づいた。

向かい側にテナントとして入っている電器屋さん。

その店頭で騒ぐ男二人組がいた。


一方が関西弁の男で、もう一方はメガネをかけている男だった。

青字に白で堀江電器と書かれたエプロンを身につけている。

何がそんなに可笑しいのか、時折大声をあげながら二人で笑っていた。

その笑い声のたびに仰け反りながら手を叩くので、周りにとったら迷惑でしかなかった。

中学校の教室の真ん中で、馬鹿な男子がくだらないことで盛り上がっている様子を思い出した。


私はじゃがいもなどが入っている重たい買い物袋を下げながら、

堀江電器の方へゆっくりと歩き出した。

もう一度出会ってしまったのが運命かのように、彼の方へと吸い寄せられたのではない。


自らはっきりとした意識をもって歩き出したのだ。


きっと今までの何かを打ち砕きたかったんだと思う。

周りにある似たような風景とか、この先の同じような未来とか。

とにかく、私も含めて全部。


歩く勢いのまま彼へ話しかけてみようと思ったけれど、

そんな勇気はなく、直前で方向転換し入店した。


話に夢中で周りが見えていない関西弁の男。

その話し相手である男に至っては、店員であるにもかかわらず見向きもしない。

ちゃんと働け。と思ったが、今の私が言えたセリフではない。


冷蔵庫やオーブンレンジなど、とても買えそうにない商品を眺めた。


ようやく二人の会話が終わり関西弁の男が去ろうとしたところで、

慌てて「あのー」と後ろから声をかけた。

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