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私の彼はユーチューバー  作者: 八田ガナ
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私の彼はユーチューバー 19

 ふと、あの男はどうなったのだろう?と思い初めていた時だった。


 年が明けてとりあえず一社面接を受けた。

ハローワークから紹介状を発行してもらう際に、

面接希望者が多く倍率が高いですが、若い人に人気の企業ですし、

何より受付の経験もあるので良いかもしれないと後押しされた。

言われた時は希望が持て、面接の時も受けは悪くなかった。

けれど、結局前職と同じに収まるのかと思うと、

日に日にこれでいいものなのかという気持ちが噴出しはじめ、

やっぱり私って面倒くさいやと、私自身を捨ててしまいたい気分に駆られていた。

と同時に合否の結果を待っている間、結局採用通知の電話を受ければ、

その場でありがとうございますと返事するのだろう。

結局、そう結局、私は周りのもの全てに逆らえないのだ。


 携帯が鳴るたびに緊張が走り、見てはいけないものを覗き込むようにそっと画面を見つめた。

母から今日はカレーがいいという電話だった。大きくため息が出る。


 夕飯の支度をするために、いつものショッピングモールへ来ていた。

一応東京都ではあるが、郊外にあるこの街では生活の中心となる唯一活気がある場所だと思う。

地方から訪れた人は、東京にものどかな場所があるんですねと言うに違いない。

現に私がそうであったように。


中学生の時、父の転勤で大阪からここへ引っ越してきた時がっがりしたのだから。

大阪より活気がなく、街の規模も人の多さも何もかもが下だった。

狭い土地に無理やり敷き詰めた高いビルが並ぶイメージとは程遠く、

街の中心を川が流れ、住宅地の間を縫うように田んぼや畑が点在していた。

都会に憧れた人が行き着く先の一歩手前、人を都会へ運ぶための高速道路がある通過点の街。

電車に乗るのも、買い物に行くのも車がないと不便だった。

それこそ、ハローワークへ行くのだって隣町まで行かなければいけない。


 うるさい都会ではなくかといって地方ではない。

こんな中途半端な場所で奴が発するイントネーションは目立つ。

ハローワークで会ったら無視してくださいと言われてから、一度も奴を見かけたことはなかった。


もちろん無視するつもりだった。

けれど、先から聞き覚えのある声が耳に張り付いてくる。

甲高い笑い声と関西弁が響いていた。

この四階まで吹き抜けの巨大なショッピングモール内に。

いや、凄く近くに奴がいる。


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